書いてあること

  • 主な読者:年収が2000万円を超えそうな経営者や社員など
  • 課題:年末調整の対象外となり、自分で確定申告をしなければならない
  • 解決策:自分の所得を確認し、各種の控除が受けられるかを確認する

1 年収が2000万円を超えたら確定申告!

毎年恒例の年末調整。これによって会社で働く多くの人は所得税の申告が不要となり、納税も会社経由で行うことができます。しかし、

給与所得が2000万円を超えたり、副業の収入が20万円を超えたりすると確定申告が必要になる

ことをご存じですか?「あっ、自分は確定申告が必要だ」と思った方は、この記事を読み進めてください。確定申告をする場合、自分が各種の控除の対象になるか否かを確認しなければなりなせん。比較的なじみが深い以下の控除も高収入の人は対象になりません。

  • 基礎控除:2500万円超の所得で対象外
  • 配偶者控除・配偶者特別控除:1000万円超の所得で対象外
  • 住宅ローン控除:2000万円超の所得で対象外(2022年1月以降にマイホームの購入な等した場合)

まずは、自分の「所得」がいくらなのか、国税庁のウェブサイトなどでチェックしてみてください。その上で、自分が対象となる控除を確認することが大切です。以降で、上の3つの控除を受けられる所得の上限と、はじめて確定申告する際の注意点を紹介するので参考にしてください。

2 高額所得者だと受けられない主な控除

1)基礎控除:2500万円超の所得で対象外

基礎控除は、納税者が一律で差し引かれる所得控除の1つです。しかし、

納税者本人の合計所得金額が2400万円を超えたら段階的に控除額が減り、2500万円を超えると控除の対象外

となります。なお、基礎控除額は納税者本人の合計所得金額に応じて、次のようになります。

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2)配偶者控除・配偶者特別控除:1000万円超の所得で対象外

配偶者控除・配偶者特別控除は、いずれも配偶者の収入などによって控除額が変わりますが、前提として、

  • 配偶者控除は配偶者の合計所得金額が48万円以下
  • 配偶者特別控除は配偶者の合計所得金額が48万円超133万円以下

の場合に対象になります。しかし、いずれの控除も

納税者本人の合計所得金額が1000万円を超えると控除の対象外

となります。

3)住宅ローン控除(住宅借入金等特別控除):2000万円超の所得で対象外(2022年1月以降の購入等)

住宅ローン控除は、住宅ローンを組んで、マイホームを購入したり、増改築したりした場合などに受けられる税額控除の1つです。しかし、

  • 2022年1月1日以降にマイホームを購入等した場合、納税者本人の合計所得金額が2000万円を超えると控除の対象外
  • 2021年12月31日以前にマイホームを購入等した場合、納税者本人の合計所得金額が3000万円を超えると控除の対象外

となります。

3 はじめての確定申告。準備するものと申告方法

確定申告作業前に準備するものは、

  • 本人確認書類(マイナンバーカードや免許証など)
  • 所得金額が分かるもの(源泉徴収票など)
  • 各種控除証明書
  • 確定申告書(郵送の場合)

です。確定申告は、国税庁のウェブサイト「確定申告書等作成コーナー」 の流れに沿って上記で準備した資料などを基に作成していきます。なお、作成した確定申告書の提出方法には、「紙で郵送」と「電子申告(e-Tax)」の2つがあります。

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マイナンバーカードを持っている場合は、スマートフォン(マイナンバーカードの読み取り対応のもの)からウェブに接続して、またはパソコンにICカードリーダライタでマイナンバーカードを読み取って、e-Taxを利用します。マイナンバーカードを持っていないけれど電子申告がしたい場合は、事前に税務署からIDとパスワードを取得して準備します。取得するためには顔写真付きの本人確認書類が必要です。

確定申告は、例年2月16日~3月15日までの間に行わなければなりません。ただし、還付申告(納付ではなく還付となる申告)については、年明け1月1日から提出することができます。還付の場合は、通常申告後3週間~1カ月程度で、指定した口座に還付金が振り込まれます。

4 所得税の確定申告Q&A

1)確定申告と納付はいつまで?

納付は、申告期限と同様で3月15日までにしなければなりません。納付が遅れると(口座の残高不足により振替できなかった場合も含む)、延滞税がかかります。延滞税は

納付すべき金額に延滞税率を乗じて、日数換算(延滞日数/365日)

で計算します。延滞税率は、

  • 法定納期限までおよび納付期限翌日から2カ月を経過する日まで:原則、年7.3%
  • 2カ月を経過する日の翌日以降:原則、年14.6%

です。

2)提出した申告書が間違っていたらどうなる?

申告期限内に誤りに気付いた場合、作成し直したものを期限内に提出すればおとがめなしです。しかし、申告期限を過ぎてしまうと次のようなペナルティがあります。

  • すでに提出した申告書の所得税が少なかった:修正申告をし、差額を納税する
  • それ以外の場合(納付すべき税額が過大、純損失の金額が過少、還付される金額が過少など):更正の請求が必要で、「更正の請求書」を税務署長に提出する

なお、更正の請求ができる期間は、申告期限から5年以内です。

3)申告期限を過ぎたら確定申告を受け付けてもらえない?

申告期限を過ぎて行った確定申告は、期限後申告として取り扱われます。期限後申告のペナルティは、納付すべき税額に対して無申告加算税が課されることです。無申告加算税は

原則、50万円までの部分は15パーセント、50万円を超え300万円までの部分は20パーセント、300万円を超える部分は30パーセントの割合を乗じて計算

します。なお、税務署の調査を受ける前に自主的に期限後申告をした場合には、この無申告加算税が5パーセントの割合を乗じて計算した金額に軽減されます。また、確定申告の期限後、1カ月以内に自主的に確定申告をしているなど一定の場合には、無申告加算税が免除されます。

ちなみに、会社員で医療費控除がある人など、もともと確定申告の必要のない人が確定申告をして税金の還付を受ける申告を「還付申告」といいますが、この場合はその年の翌年1月1日から5年間まで提出することができます。

4)税理士に依頼した方がいい?

税理士に確定申告を依頼するメリットの1つは、手間と時間が削減できることです。また、適切な処理により節税に関するアドバイスを受けることで、必要以上に税金を支払うリスクを少なくし、合理的な税金対策が可能になります。

5)自分の所得税で税務調査の連絡がきたらどうする?

顧問税理士がいる場合、税務署から顧問税理士に連絡がきます。

顧問税理士がいない場合、直接納税者に連絡があります。税務調査だけでも対応してくれる税理士もいるので、税務署から連絡がきたら、できるだけ早く税理士に相談しましょう。

税務調査で必ず必要になるのは、税務署に指定された年度の確定申告書、会計帳簿(決算書や元帳)です。また確定申告書を作成する際に必要となる金額の根拠資料や、会計帳簿を作成時に作成した各種計算表や書類なども用意しておきましょう。

以上(2024年2月作成)
(執筆 南青山税理士法人 税理士 窪田博行)

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画像:wooca-Adobe Stock

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