書いてあること
- 主な読者:経理部門の業務効率化を進めたい経営者、経理担当者
- 課題:会計処理(仕訳)の方法や、税務上のリスクを確認したい
- 解決策:不正利用を防ぐために厳格な利用ルールが必要。電子帳簿保存法の適用を受ければ、大幅な業務効率化が可能
1 経費精算の手間は減り、社内の現金も少なくできる
毎月の経費精算が無くなれば…。
会社で働く人であれば、一度は思ったことがあるでしょう。特に外出や出張の多い役員や営業担当者の交通費精算は、多くの手間と時間を要します。また、経理担当者としても、経費精算の提出遅れやミスがあると決算作業が遅れたりして困ります。
そうした中、比較的手ごろに取り組める経費精算の効率化として注目されているのが、
法人クレジットカードを利用
です。主なメリットは次の通りです。
- 経費申請の時間短縮。ウェブサイト上のカード利用明細から直接会計データを取り込み、経費精算システムが連動できるサービスもある
- 経費の請求漏れやミスの防止
- 現金の出し入れ回数の削減
- 支払いが翌月以降に繰り延べられることで資金繰り改善、ポイント還元される
この他、経営者や経理担当者が気になるのは、
法人クレジットカードを利用したときの会計処理(仕訳)はどうなるのか?
でしょう。そこで、この記事では法人クレジットカードを利用した場合の会計処理を分かりやすく解説しますので、経理業務の効率化を進めるためにご活用ください。なお、以降で紹介する勘定科目は一例なので、貴社の実情に合わせて読み替えてください。
2 会計処理(仕訳)
1)法人クレジットカードの利用時
法人クレジットカードで経費を支払った場合、実際の支払日(会社から出金がある日)と、費用の発生日が異なるため、いったん「未払金」勘定で処理します。
2)カード利用額が口座からの引き落とし時
カードの利用額が口座から引き落とされたら、「未払金」勘定を解消します。
3)誤って個人利用をしてしまった場合
誤って法人クレジットカードを個人利用してしまった場合、カード利用時、返金時、引き落とし時にそれぞれ次のように処理します。
3 税務上の留意点
法人クレジットカードを使って支払った経費を損金算入するには、請求書や領収書など(以下「請求書等」)の書類を保存しておかなければなりません。法人クレジットカードの利用明細書だけでは十分な証憑(しょうひょう)書類として認められないケースがある(商品やサービス内容や購入者の氏名など、一定の事項が記載されているものを除く)ので、法人クレジットカード利用時に受領する請求書等を保管します。
これは、消費税の控除(以下「仕入税額控除」)も同様です。インボイス制度が始まる2023年10月1日以降についても、仕入税額控除を受けるためには、法人クレジットカードの利用明細ではなく、支払った先の店舗やサービス業者から受け取るインボイスの保管が必要になります。
また、電子帳簿保存法により2024年1月以降、紙ではなく、データ(PDFやシステム上の請求書ダウンロードなど)で請求書等を受け取る場合には、一定の要件のもと、データでの保存が義務化されます。経理担当者とデータ上でやり取りできる仕組み作りも必要になります。
4 厳格なルールが必要
法人クレジットカードの不正利用を防ぐために、法人クレジットカードの利用ルールや規程(以下「利用ルール」)の整備が必須です。利用ルールを作成したら、その内容と違反した場合の罰則について役員・社員に周知します。
- 部長以上など、利用対象者や利用人数を限定する
- 利用用途を限定する(旅費交通費、交際費の支払いに限定するなど)
- 役職ごとにカードの利用限度額を設定する
- 不正利用した場合の罰則を定めておく(最悪の場合は刑事告訴するなど)
以上(2023年9月更新)
(監修 税理士 石田和也)
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