書いてあること
- 主な読者:請求書の取り扱いに慣れていない経理担当者
- 課題:現場ではイレギュラーなことが起こり、意外と請求書の取り扱いに迷うことがある
- 解決策:請求書の発行は契約上の義務ではないが、トラブル回避のために重要。また、インボイス制度では必須となる
1 なぜ、面倒なのに請求書が発行されるのか?
何かを売ったら請求書を発行するのが当たり前ですが、実は法律上は請求書を発行しなくても契約は成立します。にもかかわらず会社が請求書を発行するのは、請求する側とされる側に次のような理由があるからです。
請求する側の立場では、取りっぱぐれは困ります。もし、請求書を発行しないことで相手の経理部に支払情報が伝わらず、代金の入金が遅れたり、入金がされなかったりする事態を避けるため請求書を発行します。また、請求書を発行しておけば、認識の相違によるトラブルを事前に回避できるでしょう。
支払う側の立場では、社内の支払手続きで不便が生じたり、納税額が増えたりしたら困ります。特に、消費税の仕入税額控除(消費税を計算する上で控除できる項目)を受けるためには、課税仕入れなどに関する帳簿や請求書などを保存しなければなりません。そのため、通常は相手に請求書の発行を要求することになります。
このように、正確な取引代金の入出金やトラブル回避、適正な税金計算を行うために請求書の発行が日々行われているのです。
2 請求書の発行日はいつにするか?
請求書の発行方法には、掛売方式と都度方式があります。
- 掛売方式:月ごとなどの決まった時期に請求。相手の支払締め日に合わせて請求書を発行
- 都度方式:商品の販売やサービスの提供が終了した都度請求。商品の販売やサービスの提供が終了した日を発行日とする
前述した仕入税額控除の関係から、請求書には取引年月日を記載しなければなりません。そのため、通常は取引年月日に合わせて発行日を設定しますが、取引年月日が明示されていれば、取引年月日と請求書発行日を一致させる必要はありません。
3 再発行する場合の注意点は?
取引先が請求書を紛失してしまった場合など、請求書の再発行を依頼されることがあります。この場合、取引先の求めに応じて請求書を再発行することになりますが、
二重請求・二重支払いが起きないよう「再発行」と明記する
必要があります。発行日については、当初の発行日のままとするのが一般的です。
4 期日が来ても入金がない場合はどうする?
請求書を発行したのに、支払期日になっても入金されないことがあります。そういうときには、まず相手に催促の連絡をします。通常は電話やメールで連絡をとり、支払期日が過ぎている事実を伝え入金を依頼することになります。相手先の単純ミスによる支払い漏れであれば、入金してもらうことで問題は解決します。
単純ミスではなく相手先との間で請求内容に認識の相違がある場合は、お互いに話し合うことで問題解決を図る必要があります。相手先の資金繰りが厳しいことで入金が遅れている場合には、資金を回収できなくなるリスクが高いため、担当者レベルでなく会社として対策が必要です。対策は相手先の状況によりますが、新規の取引を制限する、回収のため法的措置(裁判所を通じた督促状の送付や民事調停の申立など)を検討するなどが考えられます。
5 インボイス制度はどんな制度?
2023年10月1日に始まるインボイス制度とは、消費税に関係する制度で、
請求書には、消費税率や消費税額など、法律で決まっている項目をすべて記載し、相手方に適切に知らせないといけない
というものです。
インボイス制度が導入されると、制度で決まっている項目がきちんと記載されている請求書を受け取った場合に限り、仕入税額控除が取れることになります。つまり、請求書を受け取っても記載事項に漏れがあると仕入税額控除が取れなくなるのです。
仕入税額控除が取れないと、会社が納めなければならない税金の額が増えることになります。仕入税額控除が取れるものの中には、材料費や機械の購入などはもちろん、個々の社員の経費精算の対象となるような交通費や消耗品の購入なども関係してきます。経理担当者だけでなく、その他の従業員も、請求書を受け取る際には記載事項に漏れがないか確認することが非常に重要になってきます。
では、最後にインボイス制度の導入後の請求書に必要な記載事項を確認しておきましょう。
1から5までは今までの請求書にも記載されていることが一般的でしたので、請求書を受け取ったら、6から9までの記載事項について注意しましょう。
また、インボイス制度が導入された後の請求書のひな型は次の通りです。
以上(2023年4月)
(監修 税理士法人AKJパートナーズ 公認会計士 仁田順哉)
(監修 税理士法人AKJパートナーズ 税理士 森浩之)
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