書いてあること

  • 主な読者:税務申告が間違っていた場合などの税金の取り扱いを知りたい経営者
  • 課題:税務申告が間違っていた場合や、遅れた場合などで加算税の取り扱いは異なる
  • 解決策:加算税の内容と、加算税に係る平成28年度税制改正の内容を解説

1 加算税の概要

法定期限までに正しく申告をしない場合や法定期限までに税金を納付しなかった場合のペナルティーを総称して「附帯税」と呼びます。そして、附帯税は法定期限から納付した日までの遅延したペナルティーである「延滞税・利子税」と、正しく申告・納税をしなかった場合の「加算税」に分類されます。

いわば加算税は、国税の申告納税制度および源泉徴収制度の適正性を担保するための行政制裁です。加えて、延滞税は加算税が課される場合においても納期限から遅延している税金(本税)に対してかかってきますが、加算税に対して延滞税は課されません。これは加算税という行政制裁に対してさらなる負担になることを避けるという趣旨によるものと考えられます。

加算税について、国税通則法で「過少申告加算税(国税通則法第65条)」「無申告加算税(国税通則法第66条)」「不納付加算税(国税通則法第67条)」および「重加算税(国税通則法第68条)」の4つの制度が設けられています。

本稿では、それぞれの加算税の内容と、加算税に係る平成28年度税制改正の内容を紹介します。なお、加算税制度の概要と改正点一覧表は次の通りです。

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2 加算税の内容

ここでは、それぞれの加算税の内容(平成28年度税制改正前)を紹介します。なお、改正点については後述します。

1)過少申告加算税

期限内に提出した申告に基づき納める税金が少ない場合や、還付される税金が多い場合、「過少申告加算税」が課されます。ただし、この場合でも税務調査による更正を予知した修正申告(期限後申告に係るものを除く)に係るものでなければ、過少申告加算税が課されない仕組みになっています。これは、申告納税制度の普及の妨げにならないよう自発的な修正申告の奨励を目的としているからとされています。

過少申告加算税は、新たに納付すべき税額に10%の課税割合を乗じて計算した金額が課されます。

また、期限内の申告税額または50万円のいずれか多い金額を超える額を新たに納付するときは、その超える部分は15%の課税割合を乗じて計算した金額が課されます。

2)無申告加算税

確定申告の提出を怠った場合、「無申告加算税」が課されます。ただし、法定申告期限から1カ月以内に自主的に申告が行われ、かつ、過去5年間に無申告加算税または重加算税が課されたことがない場合は、無申告加算税が課されない仕組みになっています。

無申告加算税は、納付すべき税額に15%の割合を乗じて計算した金額が課されます。また、50万円を超える部分については20%の課税割合を乗じて計算した金額が課されます。ただし、税務調査による更正を予知した期限後申告(その修正申告を含む)に係るものでなければ軽減され、納付すべき税額に5%の課税割合を乗じて計算した金額が課されます。

3)不納付加算税

源泉徴収による国税が期限までに納付されなかった場合に、「不納付加算税」が徴収されます。ただし、滞納がない状況で、過去1年間、期限通りに源泉徴収による国税を納め、かつ、今回の納付も期限から1カ月以内に納付された場合には不納付加算税は徴収されません。

不納付加算税は、新たに納付すべき税額に10%の課税割合を乗じて計算した金額が徴収されます。ただし、税務調査による更正を予知したものでなければ軽減され、納付すべき税額に5%の課税割合を乗じて計算した金額が徴収されます。

4)重加算税

過少申告加算税・無申告加算税・不納付加算税が課される場合に、国税の計算の基礎となる事実を隠蔽または仮装したところに基づき申告した場合、「重加算税」が課されます。重加算税については、不適用・軽減になる要件はありません。

重加算税は、過少申告加算税ないし不納付加算税に代えて課される場合は、その新たに納付すべき税額に35%の課税割合を乗じて計算した金額が課されます。無申告加算税に代えて課される場合は、その新たに納付すべき税額に40%の課税割合を乗じて計算した金額が課されます。

3 2017年1月1日からの改正内容

平成28年度税制改正によって、加算税制度(過少申告加算税・無申告加算税・重加算税)について、次の改正が行われています。それぞれが2017年1月1日以降に法定申告期限・法定納付期限が到来したものから適用されます。

1)調査通知を受けてから修正申告等を行った場合の加算税

「過少申告加算税」については、調査通知を受けてから行った修正申告(期限後申告に係るものを除く)で、更正を予知したものでない場合、その修正申告に係る新たに納付すべき税額に、5%の課税割合を乗じて計算した金額が課されることになりました。なお、期限内申告税額と50万円のいずれか多い額を超える部分は10%と、さらに加重された課税割合になります。

また、「無申告加算税」については、調査通知を受けてから行った期限後申告(その修正申告を含む)で、更正・決定を予知したものでない場合は、期限後申告に係る新たに納付すべき税額に、10%の課税割合を乗じて計算した金額が課されることになりました。なお、納付税額が50万円を超える部分は15%と、さらに加重された課税割合になります。

従来は、調査通知を受けてから修正申告または期限後申告を行うことにより加算税の賦課を回避することが、ある意味可能ともいえる状況でした。本改正により、当初申告のコンプライアンスを高める観点から改正されました。

調査通知を受けてから、修正申告等を行った場合の加算税の改正前後の比較は次の通りです。

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2)過去5年以内に繰り返して無申告または仮装・隠蔽が行われた場合の加算税

無申告加算税または重加算税が課される際に、その対象となる申告等をした日の前日から起算して5年前の日までの間に、同じ税目について無申告加算税または重加算税が課されたことがあるときについて、次の通り改正されました。

  • 無申告加算税は25%の課税割合を乗じて計算します。なお、無申告加算税は納付税額が50万円を超える部分は30%と加重された割合になります。
  • 過少申告加算税や不納付加算税に代えて課される重加算税は45%の課税割合を乗じて計算します。
  • 無申告加算税に代えて課される重加算税は50%の課税割合を乗じて計算します。

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以上(2018年10月)
(監修 税理士法人AKJパートナーズ 税理士 大関香一)

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画像:unsplash

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