目次
1 利用額増加により、3年延長された企業版ふるさと納税
税金負担の軽減効果が高いのに、多くの企業がまだ活用していない制度があります。それが 「企業版ふるさと納税(地方創生応援税制)」 です。個人が対象のふるさと納税(個人版ふるさと納税)に比べ、知名度の低い企業版ふるさと納税ですが、年々利用が増えており、その実績を踏まえて、当初2024年度までだった適用期限が、2027年度まで3年延長されています。

企業版ふるさと納税は、自治体が実施する認定事業に対して企業が寄附を行うことで、税金の負担を軽減できる制度で、
- 寄附額の最大90%の節税効果がある(実質負担は約1割)
- 地域貢献を通じて企業の信用力が向上する
- 自治体との関係づくりから、新規事業や販路拡大につながりやすい
という、非常に費用対効果の高い仕組みです。特に、広告宣伝や新規事業開発に大きな予算を割きにくい中小企業にとっては魅力的です。
この記事では、「制度の仕組み・税金がどう軽減されるか」「活用するメリット」「注意点」を分かりやすく解説します。
2 実質、企業負担は1割で済む税制優遇のカラクリ
企業版ふるさと納税が注目を集める理由の1つが、寄附額の最大90%の税額控除等がある点です。損金算入と税額控除という2段階の税制優遇により、税金負担が軽減される仕組みです。

まず、寄附した金額は損金(税務上の費用)算入できるため、その法人税の負担(約30%)が軽減できます。
さらに、残る部分については、法人住民税・事業税(一定の場合は法人税も対象)で税額控除(納めるべき税金そのものから寄附額の一部を直接差し引くことができる仕組み)が適用され、最大60%の負担が軽減されます。この2つを合わせると寄附額の最大90%が戻り、企業の実質負担はわずか約1割に抑えられるのです。
3 税制優遇以外にも3つのメリットが!
企業版ふるさと納税は多くの中小企業にとって、単なる寄附制度にとどまらない幅広いメリットをもたらします。
1.社会的信用やブランド価値が向上する
自治体の広報などで紹介される機会が増えるため、CSR(企業の社会的責任)に積極的に取り組む企業としての社会的信用やブランド価値が向上します。
2.新規事業や販路拡大につながる
自治体との関係構築を通じて、新しい市場との接点が生まれやすくなります。例えば地域産業との共同事業、6次産業化のサポート、自治体のDX推進など、連携をきっかけに、新規事業や販路拡大のチャンスが巡ってくるケースは少なくありません。
3.負担を抑えて地域貢献などができる
企業内部の資源を有効に活用できる点も大きな特徴です。企業版ふるさと納税は金銭による寄附だけでなく、
物納や人材派遣型による寄付(人件費相当額の寄附)も認められているので、在庫を寄附として提供したり、専門知識を持つ社員を派遣して地域課題の解決に貢献したりと、直接の現金支出を伴わずに地域貢献ができる
仕組みが整っています。これによって、企業にとって負担の少ない形で活動の幅が広がります。
4 経営者が気を付けるべき「落とし穴」
ただし、制度の優遇が大きい分、遵守すべきルールも明確です。特に、
寄附の見返りとして経済的な利益を受けることは禁止
されています。返礼品はもちろんのこと、寄附を条件とした受注や補助金の取得、商取引の優遇も認められていません。これに違反すると、税制優遇が取り消されるだけでなく、企業の信用を大きく損なうリスクがあります。
また、
本社が所在する自治体には寄附できない
点にも注意が必要です。さらに、寄附後に自治体と共同事業を行う場合でも、寄附がその対価とみなされないよう、手続きや契約内容の透明性を確保しなければなりません。
その他にも、
- 自治体が実施する認定事業に対する寄附のみが対象で、企業側の選択自由度が低い
- 寄附額は最低10万円以上でなければ認められない
といった点に注意が必要です。これらのルールと寄附の目的は地域貢献であるという本質を理解した上で、慎重に検討・活用することが不可欠です。
5 制度活用をおすすめしたい中小企業とは?
この制度との相性が良いのは、次のような企業です。
- 地域での知名度を高めたい企業
- 新規事業の開拓を検討している企業
- IT・マーケティング・財務など、専門性の高い人材を抱える企業
- 過剰在庫を抱える製造業・小売業
ただし、寄附先の選定では「自社との相性」が何より重要です。例えば、IT企業であれば自治体のデジタル化支援、製造業であれば環境や地域産業の振興など、自社の強みが活かせる分野を選ぶことで、寄附が単なる支出ではなく、未来の事業創造につながる投資となり得ます。
以上(2025年12月)
(監修 辻・本郷税理士法人 税理士 安積健)
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