1 2024年度・2025年度の税務3大ニュース

2024年度は、賃上げ促進税制の拡充や、事業承継を円滑に実行させることを趣旨とした、事業承継税制の特例措置に係る計画提出期限の延長の他、交際費から除外することができる社外飲食費の金額基準の引き上げが行われました。

2025年度は、中小企業の年800万円までの所得に対して適用される軽減税率が2年延長され、所得の大きい中小企業に対する軽減税率が見直されます。また、防衛力の抜本的強化を図るための安定的な財源確保の観点から、従来の法人税の付加税として「防衛特別法人税(仮称)」が創設(適用は2026年4月1日以後に開始する事業年度から)されます。さらに、中小企業の事業承継を円滑に実行させることを趣旨とした事業承継税制が、2024年度に引き続き見直されます。

2024年度・2025年度の税務3大ニュースは次の通りです。

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2 2024年度の総括

2024年度は、「賃上げ促進税制の拡充」など、賃上げや設備投資の促進などを意図した様々な改正がなされたものの、その効果は限定的であったといわれています。特にこの10年における経済環境や、それに応じた企業行動が大きく変化したことも影響し、これまでの法人税改革は意図した効果を上げてこなかった旨が税制改正大綱にも明記されました。

今後は税制も含めた様々な政策手段、中小企業も含めた持続的な経済成長に向けた手当てを期待したいところです。

3 2025年度の主なニュース

1)一定の中小企業に対する法人税率(軽減税率)の延長

一定の中小企業については、年800万円までの所得に対して、通常より低い法人税率(軽減税率:15%)が適用されます。軽減税率の適用期限はもともと2025年3月31日までに開始する事業年度とされていましたが、適用期限が2年延長され、

2027年3月31日までに開始する事業年度

とされました。なお、同じ中小企業でも、

所得が年10億円を超える会社については、軽減税率が15%から17%にアップ

します。

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2)防衛特別法人税(仮称)の創設

防衛力の抜本的強化や防衛費を安定的に確保することを目的として、「防衛特別法人税(仮称)」が創設されます。

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防衛特別法人税とは、基準法人税額から年500万円を差し引いた金額に対して4%の税率で課税するものです。この防衛特別法人税は、2026年4月1日以後に開始する事業年度から適用されます。ただし、

基礎控除として常に年500万円が控除されるため、

所得金額が2400万円以下であれば防衛特別法人税は発生しない

ことになります。

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3)事業承継税制の特例措置に係る役員就任要件の見直し

現行の法人版事業承継税制(特例措置)においては、「後継者が、贈与の日まで3年以上継続して役員等であること」という役員就任要件が設けられています。この要件について、

贈与の直前において役員等であること

というように、役員就任期間が緩和されました。

現行の法人版事業承継税制(特例措置)の適用期限が2027年12月31日であるため、この要件を満たすには、逆算すると2024年12月31日(適用期限の3年以上前)までには、後継者が贈与承継会社の役員等に就任する必要がありました。今回の改正により、適用期限の直前まで事業承継税制の特例措置の適用が検討・実施できるようになります。なお、個人版事業承継税制についても同趣旨の見直しがなされます。この改正は、2025年1月1日以後の贈与より適用されます。

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4 今後の対応について

2025年度においても、今回ご紹介した制度の他、スタートアップへの投資促進や活力ある地域経済の実現を後押しする税制など、多くの税制改正が予定されています。今回ご紹介した「防衛特別法人税」など増税方向の改正については、自社に影響があるかどうか、もしあるならキャッシュフローにどの程度の影響を及ぼすのかを、事前に確認しておくことが重要です。

一方で、税務上の優遇措置には適用するための要件が厳格に定められていたり、所定の書類の保存が必要な場合があったりするため、事前の準備が大切です。必要な書類をそろえていないことなどを税務調査で指摘され、思わぬ税負担を強いられることもあるので、特に改正された規定については早めに準備を進め、適用する上での判断などに迷いがある場合には、税理士などの専門家に相談し、適切に手続きを進めましょう。

以上(2025年3月作成)
(監修 税理士法人AKJパートナーズ 税理士 森浩之)

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画像:Artur Szczybylo-shutterstock