書いてあること
- 主な読者:税金対策を積極的に取り入れていきたい会社の経営者、税務担当者
- 課題:税制は毎年改正されるが、いつ、どのようなフローで行われているのか知りたい
- 解決策:特に12月~翌年4月の税制改正の動向に注視することが大事
1 毎年行われる税制改正
年末が近づくと、ネットニュースや新聞などで税制改正の話題を目にする機会が増えます。税制改正は、制度の抜本的な改正から細かな改正まで毎年行われています。この中には、賃上げ促進税制などの優遇税制や増税に関する項目などが含まれます。内容によっては、
企業経営に大きく影響を与える改正が行われる
こともあります。従って、この税制改正に関するスケジュールや、その過程でどのような議論が行われているかを把握しておくことは、将来の自社の税負担を考える上で重要になります。
2 税制改正の年間スケジュール
税制改正の年間スケジュール(通例)は、おおむね次の通りです。特に12月以降のスケジュールについては、実際に法案化される項目に絞られており、注視する必要があります。
なお、国会運営の都合などで、スケジュールに変動が生じる年もあります。
このように、税制改正は1年間を通して議論され、基本的に年度末の通常国会で法案が可決・成立します。税制改正項目の多くは法案成立直後に施行され、適用されます。ただし、全ての税制改正項目が一斉に適用開始されるわけではなく、制度ごとに適用開始時期が異なるので注意が必要です。
以降では、令和6年度税制改正のうち、2025年1月1日以降に適用が始まる主な項目として、
イノベーションボックス税制の創設(法人税)、
令和6年度税制改正大綱で記された項目のうち、令和7年度税制改正で詳細が決定される主な項目として、
扶養控除等の見直し(所得税)、ひとり親控除の見直し(所得税)、免税制度の見直し(消費税)
を解説します。
3 イノベーションボックス税制の創設(法人税)
イノベーションボックス税制とは、
会社が保有する特許権やAI技術を活用した著作物(日本国内で研究開発されたものに限る。「特定特許権等」という)から生じる一定の利益に対して、所得控除を受けられる
という制度です。この税制は、2025年4月1日以降に開始する事業年度から適用が始まります。
所得控除額は、
特定特許権等から生じる一定の利益(当期の所得金額を限度)×30%
となっています。
実際の所得控除額の詳細な計算には、該当する特定特許権等に要した研究開発費の集計が必要になります。そのため、適用を検討している会社は日々の研究開発費の管理や会計処理を明確に行っておくようにしましょう。
4 扶養控除等の見直し(所得税)
所得税の扶養控除(16歳から18歳までの子供がいる世帯が受けられる控除)について、控除額が減額される予定です。正式な決定は、令和7年度税制改正の項目として決定される見込みです。この減額は、2024年10月1日以降の児童手当について、所得制限の撤廃、第3子以降へ支給額の増額、支給対象を高校生までに拡大されることに伴い行われる改正(予定)となります。
適用時期については、所得税は2026年分から、住民税は2027年度以降分からとなっています。
5 ひとり親控除の見直し(所得税)
所得税のひとり親控除について、23歳未満の扶養親族がいる人を対象に、一般生命保険料控除の控除限度額が増額されます。正式な決定は、令和7年度税制改正の項目として決定される見込みです。
適用時期については、所得税は2026年分から、住民税は2027年度以降分からとなっています。
6 免税制度の見直し(消費税)
免税店における販売時の消費税の取り扱いが見直される予定です。詳細は令和7年度税制改正で決定されるとされています。
見直しの方向性としては、免税店の販売時に消費税を含めた値段で販売(現時点は税抜金額で販売)し、海外旅行者が出国時に返金を受け取る仕組みになる予定です。
以上(2024年10月作成)
(監修 税理士 谷澤佳彦)
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