書いてあること

  • 主な読者:財産と同時に債務の贈与を検討している人
  • 課題:贈与された資産が何かなどによって、贈与税の計算が異なるなど複雑な仕組みになっている
  • 解決策:負担付贈与の基本的な考え方と主な計算パターンを、事例を交えながら解説

1 負担付贈与とは

負担付贈与とは、受贈者(贈与を受ける人)に一定の債務を負担させることを条件にした財産の贈与をいいます。個人から負担付贈与を受けた場合は贈与財産の価額から負担額を控除した価額に課税されることになります。

この場合の課税価格は、贈与された財産が土地や借地権などである場合および家屋や構築物などである場合には、その贈与の時における通常の取引価額に相当する金額から負担額を控除した価額によることになっています。

また、贈与された財産が上記の財産以外のものである場合は、その財産の相続税評価額から負担額を控除した価額となります。

なお、負担付贈与があった場合において、その負担額が第三者の利益に帰すときは、第三者は負担額に相当する金額を贈与により取得したことになります。

相続税法基本通達には負担付贈与について、次のように定められています。

1)負担付贈与等(相続税法基本通達9-11)

負担付贈与又は負担付遺贈があった場合において当該負担額が第三者の利益に帰すときは、当該第三者が、当該負担額に相当する金額を、贈与又は遺贈によって取得したこととなるのであるから留意する。この場合において、当該負担が停止条件付のものであるときは、当該条件が成就した時に当該負担額相当額を贈与又は遺贈によって取得したことになるのであるから留意する。

2)負担付遺贈があった場合の課税価格の計算(相続税法基本通達11の2-7)

負担付遺贈により取得した財産の価額は、負担がないものとした場合における当該財産の価額から当該負担額(当該遺贈のあった時において確実と認められる金額に限る)を控除した価額によるものとする。

3)負担付贈与の課税価格(相続税法基本通達21の2-4)

負担付贈与に係る贈与財産の価額は、負担がないものとした場合における当該贈与財産の価額から当該負担額を控除した価額によるものとする。

2 贈与税の課税対象金額

繰り返しになりますが、負担付贈与とは、受贈者に第三者に対して一定の給付をすべき債務を負担させることを条件にした財産の贈与をいいます。個人から負担付贈与を受けた場合の課税は贈与財産の価額から負担額を控除した価額に課税されることになります。

例えば、父親から時価2000万円の土地の贈与を受ける代わりに父親の有する借入金1000万円を負担することとした場合の贈与税の課税対象金額は次の通りです。

  • 土地の時価2000万円-借入金1000万円=贈与税の課税対象金額1000万円

3 贈与財産の価額

贈与財産が、「土地等又は建物等」(土地及び土地の上に存する権利並びに家屋及びその附属設備又は構築物)か、「土地等又は建物等以外」の財産であるかで財産の価額の評価方法が異なります。

贈与された財産が「土地等又は建物等」である場合には、その贈与の時における通常の取引価額に相当する金額から負担することとなる債務額を控除した価額によることになっています。「土地等又は建物等」が贈与財産の場合、その価額は相続税評価額ではないのです(相続税関係個別通達(注))。

(注)個別通達、平成元年3月29日(改正平成3年12月18日)「負担付贈与又は対価を伴う取引により取得した土地等及び家屋等に係る評価並びに相続税法第7条及び第9条の規定の適用について」

一方、「土地等又は建物等以外」の財産の場合、その価額は相続税評価額になります。贈与された財産が「土地等又は建物等以外」の財産のものである場合は、その財産の相続税評価額から負担することとなった債務額を控除した価額となります。

国税不服審判所の平成18年12月15日裁決(裁決事例集No.72 218頁)によると、「負担付贈与又は対価を伴う取引により取得した土地等及び建物等に係る評価並びに相続税法第7条及び第9条の規定の適用について」通達でいう「通常の取引価額」は、贈与があったとされる当時の課税の対象となる資産の現況を考慮し、最も合理的かつ適切な評価方法により当時の時価を見いだすべきであり、土地については公示価格に基づいて算出する方法により、また、建物については再建築価格を基準とした価額から、建物の建築時からその経過年数に応じた減価又は償却費の額を控除して算出する方法によるのが合理的かつ最も適切な評価方法であると認めるのが相当であるとされています。

4 第三者の利益

負担付贈与があった場合において、その負担額が第三者の利益に帰すときは、第三者は負担額に相当する金額を贈与により取得したことになります。

例えば、兄に金融機関からの借入金があり、父親の土地がその担保に供されていたとします。その土地が弟に贈与されるに当たり、兄の借入金の返済も弟が引き受ける場合、兄は借入金の分の贈与を受けたことになります。

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5 相続税・贈与税の税率

1)相続税の税率

相続税の税率は次の通りです。

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2)贈与税の税率

贈与税の税率は次の通りです。

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以上(2020年1月)
(監修 税理士法人コレド会計 税理士 石田和也)

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