年末調整では、
- 給与所得者の扶養控除等(異動)申告書
- 給与所得者の基礎控除申告書 兼 給与所得者の配偶者控除等申告書 兼 所得金額調整控除申告書
- 給与所得者の保険料控除申告書
などの書類を使用します。この記事では、2022年末におけるこれらの申告書の書き方を分かりやすく説明します。
なお、年末調整の基本的な仕組みについて確認したい人は、以下のコンテンツをご参照ください。
1 「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書(扶養控除等申告書)」の書き方
1)記載項目
1.氏名・個人番号(マイナンバー)・生年月日等
役員・従業員やパート社員(以下「従業員」)の氏名、個人番号(マイナンバー)、住所又は居所、生年月日、世帯主の氏名と続柄、配偶者の有無を記載します。マイナンバーについては記述を省略する会社もあります(その他の提出書類(申告書)に関しても同様。詳細は後述)。
2.源泉控除対象配偶者
源泉控除対象配偶者の欄には、次の要件を満たした配偶者がいる場合に記載します。
- 従業員(合計所得金額が900万円(給与所得だけの場合は給与等の収入金額が1095万円)以下の人に限る)と生計を一にする配偶者で、2023年中の合計所得金額の見積額が95万円以下であること
- その配偶者が青色事業専従者として給与の支払いを受ける人及び白色事業専従者でないこと
- その配偶者の合計所得金額が95万円(給与所得だけの場合は給与等の収入金額が150万円)以下であること
なお、非居住者である親族(国外に済んでいる親族)の項目が、新たに追加されています(下記「3.控除対象扶養親族(16歳以上)」欄についても同様)。該当する親族がいる場合には、丸印(下記「3.控除対象扶養親族(16歳以上)」欄には該当チェック欄に✓マーク)を記入し、添付書類(パスポートや留学ビザなど)もあわせて提出することになります。
3.控除対象扶養親族(16歳以上)
控除対象扶養親族(16歳以上)の欄には、扶養控除の対象である次の親族がいる場合に記載します。
- 16歳以上(2008年1月1日以前生まれ)の親族
- 上記の親族が従業員と生計を一にしていること
- 上記の親族の年間の合計所得金額が48万円(給与所得だけの場合は給与等の収入金額が103万円)以下であること
なお、19歳以上23歳未満(2001年1月2日から2005年1月1月生まれ)の親族を「特定扶養親族」といい、70歳以上(1954年1月1日以前生まれ)の親族を「老人扶養親族」といいます。これらに該当する親族がいる場合は、チェックマークを付す箇所があるので忘れないようにしましょう。
また、非居住者の同居していない扶養親族がいる場合は、生計を一にする事実として、1年間に実際に送金した金額を記載する欄があります。この欄には見積額ではなく実際の送金額を追加で記載する点に注意しましょう。
4.障害者、寡婦、ひとり親又は勤労学生
障害者、寡婦、ひとり親又は勤労学生の欄には、従業員本人が障害者である場合(生計を一にする配偶者や扶養親族が障害者の場合を含む)や、寡婦、ひとり親である場合、学校に通いながら働いている場合に記載します。
障害者とは、身体障害者手帳に身体上の障害がある者として記載されている人など、一定の障害者をいいます。
寡婦とは、合計所得金額の見積額が500万円以下で、夫と死別または離婚した後に再婚をしていない人などをいいます。
ひとり親とは、合計所得金額の見積額が500万円以下で、現在婚姻しておらず(未婚や配偶者の生死が明らかでない場合で、かつ事実上婚姻関係にあるパートナーなどがいない状況)、生計を一にする子供がいる人をいいます。なお、2019年までの年末調整項目であった「寡夫」はひとり親に含まれます。
勤労学生とは、合計所得金額の見積額が75万円以下(給与所得だけの場合は給与収入金額が130万円以下)で、大学などの学生や一定の要件を備えた専修学校の生徒などをいいます。ただし、給与所得等以外の所得が10万円を超える人を除きます。
5.他の所得者が控除を受ける扶養親族等
他の所得者が控除を受ける扶養親族等の欄には、夫婦が共働きなど、この申告書を提出する人以外の人が、家族を扶養親族としている場合に記載します。例えば、子供(控除対象親族)がいる共働きの夫婦のうち、夫が扶養控除を受ける場合に、その妻はこの欄に夫と子供の氏名等を記載します。
6.16歳未満の扶養親族
16歳未満の扶養親族の欄には、16歳未満(2008年1月2日以後生まれ)の扶養親族がいる場合に記載します。
7.退職手当等を有する配偶者・扶養親族
退職手当等を有する配偶者・扶養親族の欄には、2023年中に退職所得をもらう予定のある配偶者・扶養親族がいる場合に記載します。
2)留意点
扶養控除等申告書は、その年、最初に給与をもらう日の前日(中途採用の場合は、就職後最初の給与の支払いを受ける日の前日)までに提出してもらいます。
実務上、年末調整の際に配布される申告書は翌年分(令和4年の場合は令和5年分)であるのが一般的です。従って、年の中途で扶養親族の状況などに異動があったら、その都度、異動申告をしてもらう必要があります。この場合、年末調整の対象となる年分の扶養控除等申告書に訂正となる部分を二重線で消し、余白に新しい情報を記載し、「異動月日及び事由」の欄にもその旨を記載します。
なお、扶養控除の対象となる親族や障害者に該当するかどうかは、年末調整を行う日の現況で判定されます。判定の要素となる合計所得金額は、年末調整を行う日の現況により見積もった本年1月1日から12月31日までの合計所得金額を、年齢は原則として本年12月31日時点の年齢を申告書に記載してもらいます。
その他、留学などで国外に住んでいる親族を扶養の対象とするような場合は、扶養控除等申告書に親族関係書類と送金関係書類を必ず添付、または提示してもらう必要があります。
2 「給与所得者の基礎控除申告書 兼 給与所得者の配偶者控除等申告書 兼 所得金額調整控除申告書」の書き方
1)記載項目
1.給与所得者の基礎控除申告書
あなたの本年中の合計所得金額の見積額の計算の欄には、給与明細書などを参考にして2022年中の「給与所得の収入金額」に記載します。その金額を申告書の裏面に掲載されている「給与所得の金額の計算方法」に当てはめて所得金額を計算します。なお、国税庁「給与所得控除」の末尾に自動計算できるサービスがあるので、利用すると便利です。給与所得以外に所得がある場合は、2022年中の合計所得金額の見積額を記載します。
そして、判定欄のA・B・Cいずれかを区分Ⅰに転記し(合計所得金額の見積額が1000万円超の人は空欄)、かつ「控除額の計算」を合計所得金額の見積額に当てはめ、表右側の該当する金額を「基礎控除の額」に転記します。
2.給与所得者の配偶者控除等申告書
配偶者に関する事項を記載し、配偶者の本年中の合計所得金額の見積額の計算の欄には、上記1.と同様に配偶者の給与明細書などを参考にして、2022年中の「給与所得の収入金額」に記載します。その金額を申告書の裏面に掲載されている「給与所得の金額の計算方法」に当てはめて所得金額を計算します。給与所得以外に所得がある場合は、2022年中の合計所得金額の見積額を記載します。
そして、判定欄の(1)~(4)のいずれかを区分Ⅱに転記し、かつ区分Ⅰ・Ⅱに記載したアルファベットと数字を基に、配偶者控除の額または配偶者特別控除の額を一覧表の中から該当するものを転記します。
なお、区分Ⅱの欄が(1)または(2)の場合は配偶者控除の額の欄に、(3)または(4)の場合は配偶者特別控除の額の欄に金額を転記します。
3.所得金額調整控除申告書
給与等の収入金額が850万円を超え、かつ扶養親族が特別障害者であること、または23歳未満(2000年1月2日以後生まれ)などに該当する場合(制度の詳細は後述)は、要件欄のいずれか該当する項目にチェックをします。要件欄の指示に沿って「☆扶養親族等」の欄に該当する扶養親族等に関する事項と、「★特別障害者」の欄に障害の状態や交付を受けている手帳の種類などを記載します。
2)留意点
基礎控除は所得金額ごとに控除額が異なります。また、所得金額調整控除(給与等の収入金額が850万円を超える従業員に限る)の欄の記載漏れや、自分自身の所得金額の計算ミスなどが目立ちます。事前に記載ポイントをまとめて従業員に周知するようにしましょう。。
また、配偶者控除および配偶者特別控除についても、一昨年基礎控除額が変更され、基準となる給与収入金額の上限も変わっているため、長年、年末調整をしている人からは今年も問い合わせが来るかもしれません。念のため、過去の変更点も押さえておきましょう。