書いてあること

  • 主な読者:自分の得意分野を持ちたい入社3〜5年の社員
  • 課題:得意分野を持つことに半信半疑で、なかなか具体的な行動に移せない
  • 解決策:「社内で相対的に強いではなく、社外でも絶対的に強い」を意識する

1 得意分野があるってうらやましい!

人事部に配属された入社5年目のAさん。これまで営業や調達の仕事をしてきたAさんにとって、人事部は全くの別世界で、日々、戸惑いの連続です。

同じ時期、人事部にはもう1人の新人が配属されました。中途採用のBさんです。Bさんは前職でも人事部で働いており、社会保険労務士の資格も持っています。人事の仕事は慣れたものです。そんなBさんの姿を見たAさんは、「得意分野があるってすごいな。それに比べて俺ときたら……」と、肩を落としてしまいました。

昼休み、落ち込むAさんに課長が声を掛けました。「焦る必要はないぞ。Bさんは人事の経験者で、Aさんとはそもそもスタートが違うのだから」。するとAさんは、「しかし、Bさんは転職してきたばかりですよね。どこに行っても通用する得意分野があるのはうらやましいです」と言いました。それを聞いてニヤッと笑った課長は、「じゃ、Aさんも得意分野を持てばいいよ!」。

2 自分の得意分野を持とう!

「自分の得意分野を持たなければ!」

これは、入社3~5年程度の社員が直面しがちなテーマです。一通りの教育を受けてビジネスパーソンとしての基礎体力がついてくるこのころ、次のステップとして自分の得意分野を意識し始める社員が少なくないためです。

得意分野はそう簡単に持てるものではなく、継続的に努力する必要があります。あえてそれにチャレンジしようとするのは、その社員が次のようなことを認識したのでしょう。

  • 将来、実現したいビジネスや自分が活躍したいフィールドが明確になってきた
  • 目標となるビジネスパーソンを見つけ、それに近づきたいライバルを見つけた
  • 手痛い失敗して、切実に自分の能力向上をしたい

これは、ビジネスパーソンとしての目標が明確になってきているということであり、中堅社員が半歩先に進んだ証しです。

3 なぜ、得意分野を持つとよいのか?

1)深掘りの仕方が身に付く

専門性を高めるためには、1つの分野を深掘りしなければなりません。それも、正しい手順で、適切な場所を掘らなければ、知識は効率的に身に付きません。資格取得などを通じて専門性を高める過程で、課題に取り組む際の正しいアプローチの方法と、これまで気付いていなかった物事の奥深さを知ることができます。

2)成長が加速する

1つの得意分野を持つことは、自分がビジネスパーソンとして成長していくための足掛かりになります。1つの分野を深掘りしたときの成功体験と失敗体験、その際に獲得した知識を整理するために作った“器”(頭の中の引き出し)が、別の分野を深掘りする際に生かされるため、以前よりも効率的に知識を吸収することができます。

3)良質な人脈が広がる

資格取得のために勉強する中で知り合う人々は、皆、同じ目標に向かって努力している仲間です。目標を共有しているということで互いに心を開きやすく、関係が深まっていくことも珍しくありません。そこから広がっていく人脈はとても貴重で、有力な情報源にもなります。

4)経験が糧になる

得意分野を持つためには継続した努力が必要で、時にはプライベートを犠牲にしなければならないこともあります。そうしたつらい経験は、自分の“心”を鍛えてくれます。何らかの試練に遭遇したとき、「あのときに克服できたのだから、今回も大丈夫!」と、自分自身を勇気づけてくれるでしょう。

5)継続的な取り組みになる

得意分野を確立するのは容易ではありませんが、それ以上に、得意分野を維持することのほうが大変です。状況は刻々と変化するため、常に知識を正確で最新の状態にアップデートしておかなければなりません。これを継続することができれば、知識の幅はますます広がり、その分野に明るいといわれる人よりも有利になります。

4 基準は「社外でも絶対的に強い」こと

人は意外と物事を知りません。そのため、ある事柄についてちょっと勉強しただけで、周囲よりも情報通になれます。しかし、ちょっと勉強した程度の中途半端な知識では得意分野とはいえません。どこまで深掘りしていくかの基準を設けましょう。

分かりやすいのは資格の取得ですが、資格制度が整備されていない分野の場合は、“他流試合”をして、確かめてみましょう。その分野について学んでいる人が集まっている勉強会などを見つけ、積極的に参加してみるのです。そうした場でも、自分の知識が十分に通用するようならば、社外でも絶対的に強いレベルといえます。

以上(2021年9月)

op20271
画像:tiquitaca-Adobe Stock

Leave a comment

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です