書いてあること

  • 主な読者:認識共有ができず業務にムダが出ている入社3〜5年の社員
  • 課題:「伝えはずなのに、こちら意図通りに伝わっていない」ことが多い
  • 解決策:業務のゴールを共有する。また、口頭で終わらず、文章にしたり、図示したりする

1 認識の共有が不十分で……

中堅社員のAさんは、指示されていた資料の件で、課長に声をかけられました。「この前、AさんとBさんで作成するように指示しておいた資料だけど、作成は順調に進んでいる?」

表情が曇ったAさんは「……締め切りには間に合いますが、想定よりも時間がかかっています。Bさんにお願いした部分が分かりにくく、必要な○○のデータも記載されていなかったので修正が必要になります……」と答えました。

課長はさらに質問しました。「ふ~ん。○○は必須のデータだと言ったよね。Bさんにはそれを伝えなかったの?」。これに対してAさんは、「伝えたつもりだったのですが……」と沈んだ声で答えました。そんなAさんの様子をみた課長は、「そうか。まずは、期限厳守で資料を仕上げることに集中してくれ。今後は、同じことがないように、事前に認識を共有してから業務を進めるように」と声をかけ、その場を去って行きました。

「確かに、認識の共有ができていなかったな……」。反省しきりのAさんでした。

2 業務管理の難所とは?

中堅社員になると、部下の業務の進捗管理から、特定のプロジェクトの管理など、さまざまな業務を「管理する」という役割が増えてきます。ただし、管理に慣れていないと思わぬところでミスが生じます。指示とは全く違う部下の“理解不能”な仕事に頭を抱えた経験のある人も少なくないでしょう。

業務管理がうまくいかない理由は、「当初の見込みが甘く、スケジュールに大幅な遅れが発生した」などさまざまです。しかし、その根本的な原因は、

管理者と管理される人(以下「部下」)の認識の相違

であることが少なくありません。

例えば、Aさんの場合、Bさんが資料作成に着手する前に最終的な成果物のイメージを共有するように努力していれば、重要なデータが抜け落ちるといった事態にはならなかったはずです。

認識を共有することは、当然のことのようですが、実際には問題が発生するまで、気付かないことは少なくありません。なぜなら、伝える方も、伝えられる方も基本的には自分本位な解釈をしてしまうからです。特に、部下が若い場合は、経験が少ないため、認識の相違が発生してしまいがちです。管理者はそうした点を理解した上で、十分に注意しながら認識の共有を図る必要があります。その際、共有しなければならない主な事項は以下の2点です。

1.業務の目的・意味合いなどを共有する

最初に共有すべきは、業務の目的や意味合いです。例えば、資料作成であれば、当該資料の利用(閲覧)者、利用目的などを部下と共有することは必須です。

業務の目的・意味合いは、業務遂行上の“ガイドライン”となります。そのため、しっかりと共有することで、「期待した成果物と実際の成果物が大きく異なる」といった事態は防ぐことができます。

2.ゴールを共有する

ゴールとは「当該業務を完了させるための条件」です。部下にとっては「業務を完了させるために達成すべきもの」、管理者にとっては「管理すべき事項」です。

具体的なゴールは、個々の業務で異なりますが、「品質(Quality)」「コスト(Cost)」「納期(Delivery)」(QCD)の3つの視点で考えるのが基本です。「求められる品質の製品を、決められたコストで、決められた納期までに製造する」というQCDは、製造業では一般的な考え方ですが、これは製造現場に限らず、管理を行う際には有効な視点です。

また、ゴールは、双方が客観的に把握できるものでなければなりません。そのためには数字で表すことが基本です。例えば、納期は「○日をめどに」ではなく、「○日の17時」といったように日時(数字)で示せば、認識の相違は起こりません。

なお、資料作成など、コストを明確にすることが難しい場合は、「実作業時間=人件費」ととらえて、実作業時間(効率性)を意識するようにしましょう。

3 共有化を効果的に行うには

業務の目的や意味合い、ゴールを共有する上では可視化も効果的です。例えば、口頭で説明するだけではなく、「文章にする」「品質など数字で表しにくいものは類似した成果物をサンプルとして見せる」などの工夫をします。また、ホワイトボードを使用することもおすすめです。「管理者が重要事項を文字や図表などで説明をする」「ときには、部下が分からない点や、確認事項を書きこむ」といったやり取りを、双方が一目で分かるホワイトボード上で繰り返しながら進めていくのです。そうすることで、可視化を図れて、部下の理解を深めさせることができます。

また、こうしたやり取りをすることで、管理者は、部下の理解度を把握することもできます。

4 管理者がゴールを決めかねているときは?

管理者は、ゴールを明確に示さなければなりませんが、初めて取り組む業務など、管理者自身も明確なゴールを描けないことがあります。こうした場合は、「中間報告の場をこまめに設ける」ようにしましょう。中間報告の場で、作成途中でも成果物をみたり、部下の意見を聞いたりすることで、ゴールのイメージが徐々に明確になっていきます。

また、中間報告時に使用する資料のフォーマットはしっかりと決めておきましょう。これにより、双方が確認すべき重要な事項が統一されます。加えて、事前にフォーマットを決めておけば、部下が「時間をかけて中間報告用の資料を作る」ことはなくなり、仕事のための仕事、つまりムダを排除することができます。

以上(2021年9月)

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画像:mapo-Adobe Stock

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