食品会社で企画・マーケティングを担当している中堅社員のAさん。現在、大手スーパーなどとタイアップした新商品の企画を担当しています。複数の会社が集まる会議はとても刺激的で、Aさんも積極的に発言するようにしています。

今日も会議に参加しているAさんは、いつも通り積極的に発言しました。

「つまり、消費者のニーズについて『仮説』を立てることが重要ですよね。そもそも私たちが作りたいものは一体何なのでしょうか? そこには明確なストーリーが必要です。それぞれがプロ意識を持ち、できることを一生懸命にやることが大切だと思います!」

一見、Aさんは大いに会議に貢献しているようですが、Aさんがこうした発言をすると、他の参加者は「う~ん……」と腕組みをして考え込んでしまうばかりで、議論が前に進みません。一体、なぜなのでしょうか?

会議の価値は「発言」ではあるものの……

冒頭のAさんが参加していたような企画会議やマーケティング会議では、参加者が知恵を出し合わなければ意味がありません。参加者の発言と議論こそが会議の価値なのです。

Aさんは元気よく発言しており、この点は評価できます。しかし、発言の内容は好ましくありませんでした。Aさんの発言には現状分析に対する具体性や、将来に向けての提案が含まれていませんでした。堂々巡りしている議論を軌道修正するなどの意図があって、わざと発言しているのならよいですが、Aさんにはそうした狙いはないようです。

しかも、企画・マーケティングの担当者がよく使うキーワードである「仮説」などの言葉が板に付いていない印象があり、参加者は少しイラつきながら、「そんなことは分かっているよ……」と腕組みをしてしまいます。

「勇気を持ってとにかく発言」は正しいか?

「会議は発言してなんぼ」というところもあるので、会議に参加する部下のことを、上司が「勇気を持って、とにかく発言してきなさい!」と送り出すことがあります。上司としては、「緊張を乗り越えて、一回り成長してほしい」という狙いがあります。

しかし、これは危険でもあります。複数の会社が参加する“他流試合”の会議では、どんな発言でも許容されるわけではありません。明らかに的を外した発言を繰り返すと、「この参加者は分かっていない」と、他社の参加者から軽く見られ、以後のビジネスがやりにくくなります。自分の考えがズレていると分かって発言がためらわれるのならば、しばらく黙って様子を見るという手もあります。

会議には参加者のレベルがあります。部下に“ワンランク上の世界”を経験させたいのであれば、部下が慣れるまでは上司も同席したほうがよいでしょう。“他流試合”の会議ではなおさらです。

会議の発言で心がけたい重要なポイント

1)発言は周囲に配慮する

ビジネスにはそれぞれの思惑があります。そのため、参加者は自分(自社)の都合のよいように物事を解釈しがちです。

しかし、その姿勢が会議の発言で前面に出過ぎると、「この人は自分(自社)の利益のことしか考えていない……」と他の参加者から嫌悪感を抱かれてしまいます。会議の参加者は、心の中で自分(自社)のベストシナリオを持っているはずですが、それをストレートに出し過ぎるのは控えたほうが無難です。

ただし、会議が間違った方向に進みそうな状況を軌道修正するときや、自分(自社)が圧倒的に不利な立場に追い込まれそうなときには、強く主張しなければなりません。

2)思考停止ワードに気をつける

会議を停滞させるような発言は慎みましょう。Aさんは「仮説」というキーワードを使いましたが、それを補強する説明がありませんでした。

このような、一見、正しいと思えそうなふわっとした発言をするときは、必ず根拠となるデータと、新たな方向性を示す提案をセットにしなければなりません。逆に、データや提案がないのであれば、そのことを最初に断ってから発言するべきです。

「質問」が最大の武器である!

会議では、必ず進行する人やファシリテーターがいます。もし、自分の発言がズレているかもしれないと感じたならば、進行する人などに、「今の私の発言は論点がズレていましたか?」と、素直に質問してみるとよいでしょう。

こうした質問をすることで、他の参加者は「この人は冷静に会議の成り行きを見ており、全体に貢献しようとする意識も高い」と評価してもらえることがあります。

また、発言する際は「伝え方」にも気を配りましょう。例えば、「それはいかがなものでしょうか……」と、否定的な発言をすることもありますが、その場合は、

  • 「これまでの議論を振り返りながら、問題点や課題がないかを再度確認してみませんか?」

と言い方を工夫すれば、他の参加者の印象や会議の雰囲気は大きく違ったものになるでしょう。

Point

  • 会議の価値は「発言」にあるので、積極的に!
  • しかし、ふわっとした「思考停止ワード」を使うと、会議を停滞させてしまう。

以上(2019年8月)

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画像:Eriko Nonaka

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