書いてあること
- 主な読者:役職名の変更などを検討している企業の経営者、取引先などの役職で、どのような役割や責任があるのかを知りたいビジネスパーソン
- 課題:他社がどのような考えの下、役職名を決めているのか参考にしたい
- 解決策:役職名はビジネスの潮流や各社の価値観が表れるものであり、その役職名にどのような役割があるのかを考えたり、知ったりすることが重要
1 ビジネスの潮流などを反映する役職名
企業規模、業種、企業風土、経営戦略などさまざまな要素を考慮して、各企業は組織形態とそれに応じた役職名を採用しています。
従来、日本企業の多くは、「社長」「本部長」「部長」「次長」「課長」「係長」「主任」など、上位から下位に向けて命令が伝達される部課制(ライン組織)を採用してきました。しかし、最近では迅速な意思決定や対応を行うことを目的に、役職の階層を減らして組織のフラット化を進める企業もあります。
また、「CEO」といった役職名を目にする機会が増えています。こうした役職名はもともと経営の意思決定・監督機関としての取締役会と、意思決定に基づく業務執行機能を分離した制度(以下「執行役員制」)を採用する外資系企業などで使用されていました。現在では日本企業でも一般的になってきています。執行役員制を導入する企業などで使用されている代表的な役職名は次の通りです。
これらの役職名は社内規定に基づく呼称ですが、会長兼CEOなどといったように使われるケースが増えてきています。また、自社のブランドや価値観などを創造し、社内外に発信・浸透させていくCCO(Chief Culture Officer、最高文化責任者)や、健康経営を推進する企業などがCHO(Chief Health Officer、最高健康責任者)を設けるなど、自社が重視する価値観を表したユニークな役職を設けている企業もあります。
このように企業における組織とそれに応じた役職名の在り方は、その時々のビジネスの潮流を反映していたり、自社の重視する価値観を反映したりするものでもあります。
以降では、企業でよく使用されている役職名について紹介します。役職名の新設や変更を考える際、あるいは自社と異なる役職名を目にしたときに、どのような役割や権限があるのかを確認する際の参考としてください。
2 部課制における役職名
1)中間的な役職名
部課制(ライン組織)は、日本企業の多くで採用されている組織形態です。役職としては、「社長」「本部長」「部長」「課長」「係長」などがあり、そこに中間的な役職が加わって組織が形成されています。
中間的な管理職の代表的な役職名としては、「副本部長」「副部長(部長代理・部長補佐)」「次長・副次長(次長代理・次長補佐)」「副課長(課長代理・課長補佐)」「副係長(係長代理・係長補佐)」などがあります。
2)その他の役職名
中間的な管理職の他にも、「顧問」「相談役」「非常勤取締役」「参事」などという役職があります。また、支社(支店)・営業所・工場においては、部長クラスに代わる役職として「支社長(支店長)」「所長」「工場長」などを置いている場合があります。
本社・営業所を問わず「係長の代わりに主任」としている企業や、その下に「班長」がいる場合もあります。一方、事業部制を採用している企業では、「事業部長」という役職があり、社内的には取締役と同等の立場である場合もあります。
3)執行役員について
経営と業務の執行の分離が重要視されるようになり、さまざまな企業で社内体制として執行役員制が設立されたことから、多くの「執行役員」が選出されました。執行役員制は会社法の規定によるものではありません。そのため、社内体制や権限などについては各企業によって異なります。また、執行役員は現場のトップということもあって、本部長や営業部長を兼ねている場合が多いようです。
3 グループ制における役職名
グループ制とは、従来のピラミッド型の組織から、課や中間的な役職を除いた体制です。組織のフラット化を図り、意思決定や判断の迅速化を進めることを目的としています。
具体的には、「部を部門に変更し、部門の下にグループまたは室を置く」という体制です。役職は、次長クラス、係長クラスを廃止して、部長クラスは「部門長」「グループマネジャー」「主席」などに、課長クラスは「グループリーダー」「室長」「主査」などとなります。また、企業によっては室長や部長クラスがグループリーダーになっているケースもあります。
部課制・部門室制・グループ制の組織(例)は次の通りです。
4 マトリックス組織の概要
部門室制やグループ制などと並行して、業務遂行のためにプロジェクトチーム制を設けている企業もあります。プロジェクトチーム制では、各部門やグループから担当者が集まってチームを構成することによって、何らかの目的を果たすために業務を遂行していきます。スポーツメーカーを例に取ると、ユニフォームチーム、シューズチームなどとなり、各チームは企画・開発・販売・宣伝など各部門やグループから数名ずつ担当者が任命されて構成されています。
その際、各チームにチームリーダーが配置されます。この組織形態は、各スタッフがグループとチームの双方に所属するため、マトリックス組織とも呼ばれます。
例えば、資生堂では、世界の地域ごとに強いブランドを育成するため、5つのブランドカテゴリーと6つの地域を掛け合わせたマトリックス組織を発足させています。
マトリックス組織(例)は次の通りです。
5 専門職について
従来の人事制度では、管理職に就くことで高い賃金やキャリアを得ることが一般的でした。しかし、中には管理職に就くよりも、現場で高い専門性を発揮するほうが、企業にとって高い付加価値を生む人材もいます。また、消極的な理由として、管理職ポストが不足している場合に、専門職ポストを設ける場合もあるようです。
専門職は、部課制(ライン組織)上の役職とは異なり、部下を持たずに(持つ場合も少数)業務を遂行します。
専門職の仕事は、技術や営業・販売に関しては各企業の扱う製品やサービスによって異なるため一概にはいえません。ただし一般的には、研究開発に携わる研究者や技術者、法務・税務などの分野に関連した資格を持つ者、営業・システムエンジニアやコンサルタントなど、高度な専門性が求められる職種が挙げられます。
また、専門職は部課制(ライン組織)やグループ制において新しく課やグループをつくるに至らない(規模が小さい)場合にも有効な手段として導入されています。
この他、最近は高年齢社員の技能を活用するための専門職を設ける企業も増えています。こうした高年齢社員には、「シニアアドバイザー」「シニアマネジャー」などの役職が設けられ、一般の従業員とは別の基準で処遇されています。
以上(2019年4月)
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画像:pixabay