書いてあること

  • 主な読者:法改正に対応した会社規程のひな型が欲しい経営者、人事労務担当者
  • 課題:どの情報が正しいか分からない。シンプルで分かりやすい情報が欲しい
  • 解決策:弁護士や社会保険労務士など、専門家が監修したひな型を利用する

1 災害補償規程とは

企業は、従業員がその生命、身体などの安全を確保しつつ労働することができるよう、必要な配慮をするという「安全配慮義務」を負っています(労働契約法第5条)。具体的な取り組みはさまざまですが、基本的には労働安全衛生法に基づく職場の巡視、安全衛生教育や健康診断の実施、安全衛生管理体制の構築などがあります。

しかし、こうした取り組みを徹底しても労働災害を完全に防ぐことはできないため、労働災害への備えとして、企業は被災した従業員やその遺族のために、労働基準法(以下「労基法」)に基づく災害補償と、労働者災害補償保険法(以下「労災法」)に基づく保険給付(政府管掌)に必要な手続きを行う義務を負っています。

労災法の保険給付を労働災害の「法定内補償」と呼びますが、製造業や建設業など労働災害が発生しやすい業種では、「法定内補償」に上乗せする形で、民間の損害保険会社の保険商品などを活用していることがあります。民間の損害保険会社の保険商品を、労働災害の「付加給付」や「法定外補償」などと呼びます。

以上で紹介した付加給付や法定外補償については、就業規則の相対的必要記載事項(定めるか否かは自由だが、定めをする場合には必ず就業規則に記載しなければならない事項)です。

2 災害補償規程のひな型

以降で紹介するひな型は一般的な事項をまとめたものであり、個々の企業によって定めるべき内容が異なってきます。実際にこうした規程を作成する際は、必要に応じて専門家のアドバイスを受けることをお勧めします。

【災害補償規程のひな型】

第1条(目的)
本規程は、就業規則第○条に基づき、従業員の業務上の災害(以下「業務災害」)および通勤による災害(以下「通勤災害」)による負傷、疾病、障害または死亡に対する補償(以下「災害補償」)について定めるものである。

第2条(労働者災害補償保険法に基づく災害補償)
1)従業員が業務災害または通勤災害により負傷、疾病、障害または死亡した場合、労働者災害補償保険法(以下「労災法」)に基づく次の補償(以下「法定内補償」)が行われる。

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2)第2条第1項の法定内補償が行われた場合、会社は労働基準法(以下「労基法」)に基づく災害補償の責を免れる。ただし、休業補償給付が支給されるまでの3日間(休業開始日から3日間)についてはこの限りではない。

第3条(付加給付)
会社は、従業員が業務災害または通勤災害により負傷、疾病、障害または死亡した場合であって、法定内補償を受ける場合には、法定内補償の他、次の付加給付を独自に行うものとする。なお、第三者行為災害の場合は支給しない。
 1.休業補償の付加給付。
 2.障害補償の付加給付。
 3.遺族補償の付加給付。

第4条(休業補償の付加給付)
会社は、従業員が業務災害により、療養のために休業したことで給与を受けられない場合、休業開始日から3日間については、労基法に基づく休業補償の他、次の通り付加給付を行う。
休業開始日から3日間:休業1日につき平均賃金の○○%

第5条(障害補償の付加給付)
会社は、従業員が業務災害または通勤災害により負傷し、または疾病にかかった場合において、治癒した後に身体に障害を残した場合、その障害の程度に応じて、平均賃金に別途定める「障害補償の付加給付支給日数表」(省略)の日数を乗じて算出した一時金を付加給付として支給する。

第6条(遺族補償の付加給付)
会社は、従業員が業務災害または通勤災害により死亡した場合、従業員の遺族の人数などに応じて、平均賃金に別途定める「遺族補償の付加給付支給日数表」(省略)の日数を乗じて算出した一時金を付加給付として支給する。なお、遺族の範囲と順位は労災法第16条の2によるものとする。

第7条(補償制限)
次の場合、会社は第3条に定める付加給付の全部または一部を行わないことがある。
 1.従業員が故意の犯罪行為もしくは重大な過失により、負傷、疾病、傷害もしくは死亡またはその直接の原因となった事故を生じさせた場合。
 2.傷病を受けた従業員が正当な理由なく療養に関する指示に従わず、負傷、疾病または障害を増進させもしくは回復を妨げた場合。
 3.業務災害または通勤災害が、法令違反や就業規則などの社内規程・規則違反による場合。

第8条(民事上の損害賠償の免責)
会社は、第3条に定める付加給付を行った場合は、同一事由についてはその価額の限度において民事上の損害賠償の責を免れるものとする。

第9条(罰則)
従業員が故意または重大な過失により、本規程に違反した場合、就業規則に照らして処分を決定する。

第10条(改廃)
本規程の改廃は、取締役会において行うものとする。

附則
本規程は、○年○月○日より実施する。

以上(2020年9月)
(監修 税理士法人AKJパートナーズ)

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画像:ESB Professional-shutterstock

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