書いてあること

  • 主な読者:法改正に対応した会社規程のひな型が欲しい経営者、人事労務担当者
  • 課題:どの情報が正しいか分からない。シンプルで分かりやすい情報が欲しい
  • 解決策:弁護士や社会保険労務士など、専門家が監修したひな型を利用する

1 職務分掌とは

職務分掌とは、次のように各部門や従業員の役割と責任を決めることです。

  • 企業で行われている職務の内容、遂行方法、難易度、重複(1つの職務を複数の従業員が担当しているなど)を把握する
  • 職務の担当部門を決定する
  • 職務を遂行するための職位ごとの権限を決定する
  • 決定した内容を文書化し、それに従って活動する

中小企業では、各部門の職務や職位の権限の境界が曖昧なことが少なくありませんが、職務分掌を定めることで社内に規律が生まれ、部門間のけん制機能も働くようになります。

以降で紹介するひな型は、一般的な事項をまとめたものであり、個々の企業によって定める内容が異なってきます。実際にこうした規程を作成する際は、必要に応じて専門家のアドバイスを受けることをお勧めします。

2 職務分掌規程のひな型

【職務分掌規程のひな型】

第1章 総則
第1条(目的)

本規程は、会社の経営方針を実施するための組織機構、職務分掌、職務権限に関する基準を明確に定め、職務の効率的かつ円滑な遂行と責任体制の明確化を図ることを目的とする。

第2条(用語の定義)
本規程において各用語の定義は、次に定めるところによる。

  • 組織
    経営方針を実施するために系統的に編成された機構をいう。
  • 職位
    組織における職務遂行上の地位をいう。
  • 職務分掌
    各組織に配分された一定範囲の責任業務をいう。
  • 職務権限
    職位にある者に与えられた職務遂行上の権限をいう。

第2章 組織機構
第3条(組織単位)

組織機構の単位は、機能別に編成された部・課とする。この他、必要に応じて横断的なプロジェクトチームを編成することがある。

第4条(組織図)
組織図は別表第1「組織図」の通りとする。

第5条(組織運営の原則)
1)職務の遂行に当たっては、関係部門と十分に協議しなければならない。
2)権限行使に当たっては、認められた範囲を超えてはならない。

第3章 職務分掌
第6条(経営企画部の分掌事項)

経営企画部の分掌事項は次の各号に定める通りとする。

  • 中期経営計画に関する事項。
  • 資本政策に関する企画立案および推進に関する事項。
  • 新規事業の企画に関する事項。
  • 予算編成に関する事項。
  • 経営分析および諸経営資料作成に関する事項。
  • その他の特命業務。

第7条(総務部の分掌事項)
総務部の分掌事項は次の各号に定める通りとする。
<総務課担当業務>

  • 売上債権の回収および与信管理に関する事項。
  • 役員の庶務事項および取締役会開催に関する事項。
  • 諸規程の立案、制定、改廃並びに示達に関する事項。
  • 文書の管理に関する事項。
  • 印鑑、印章の管理に関する事項。
  • 損害保険に関する事項。
  • 広告宣伝に関する事項。
  • 社宅および寮、社有車の管理に関する事項。
  • 社外慶弔、見舞い、贈答に関する事項。
  • 防災体制整備および指導に関する事項。
  • リース資材および消耗品の発注に関する事項。
  • 個人情報の保護に関する事項。
  • 苦情処理に関する事項。
  • その他の特命業務。

<人事課担当業務>

  • 人員計画に関する事項。
  • 人事考課、業績考課に関する事項。
  • 給与、賞与、その他諸手当、退職金、社会・労働保険に関する事項。
  • 従業員の採用、退職、解雇、休職、復職、異動に関する事項。
  • 従業員の勤怠管理に関する事項。
  • 従業員の研修、教育に関する事項。
  • 従業員の福利厚生に関する事項。
  • 従業員の労働安全衛生に関する事項。
  • 労働法令の手続きに関する事項。
  • 人事、労務関係規程の立案、制定、改廃に関する事項。
  • その他の特命業務。

第8条(経理・財務部の分掌事項)
経理・財務部の分掌事項は次の各号に定める通りとする。

  • 小口現金の取り扱いに関する事項。
  • 支払伝票などの管理に関する事項。
  • 請求業務に関する事項。
  • 現金・預金に関する事項。
  • 小切手・手形に関する事項。
  • 有価証券に関する事項。
  • 金融機関との取引に関する事項。
  • 資金計画に関する事項。
  • 決算に関する事項。
  • 税務に関する事項。
  • 経理・会計関係規程の立案、制定、改廃に関する事項。
  • その他の特命業務。

第9条(営業部の分掌事項)
営業部の分掌事項は次の各号に定める通りとする。

  • 新規取引先の開拓に関する事項。
  • 営業展開のための技法開発に関する事項。
  • 営業計画、販売計画および集金計画の作成並びに実施に関する事項。
  • 販売方法の検討および販売価格の設定に関する事項。
  • 取引先の動向把握および市場情報の収集管理に関する事項。
  • 同業他社の動向把握に関する事項。
  • その他の特命業務。

第10条(製造部の分掌事項)
製造部の分掌事項は次の各号に定める通りとする。

  • 製品の製造に関する事項。
  • 製品製造計画の作成および実施に関する事項。
  • 製造設備の管理に関する事項。
  • 資材調達に関する事項。
  • 製造技術の動向把握および市場情報の収集管理に関する事項。
  • 会社同等製品および同業他社の動向把握に関する事項。
  • その他の特命業務。

第4章 職務権限
第11条(職位)

職位は次の各号に定める通りとする。

  • 代表取締役社長
    取締役会の決定に基づき会社業務を統括し、業務遂行の最高責任者として会社業務を執行する者。
  • 取締役
    取締役会の決定に基づき、代表取締役社長から委嘱された会社業務を執行する者。
  • 監査役
    取締役の会社業務の執行を監査する者。
  • 部長
    代表取締役社長などの命に従い、管轄業務を遂行する者。
  • 課長
    部長の命に従い、管轄業務を遂行する者。

第12条(職務権限の行使)
職位にある者は、明確な範囲の責任事項と、職務遂行に必要な権限を有するものとする。職位にある者は、法令、会社の諸規程などに従い、最も適した方法で自己の権限を行使する。

第13条(職務権限事項)
職位にある者に付与される職務権限は、別表第2「職務権限表」の通りとする。

第14条(代位行使)
職位にある者が不在または事故など一定の事由によりその権限を行使し得ない場合は、原則として、直属の上位職位にある者の決定または協議によるものとする。

第15条(相互協力)
職位にある者は、互いの職務権限を尊重し、他の職位の職務権限を侵してはならない。職位間の見解などが一致しない場合は、必要な指導、助言を上位職位に求めた上で協議する。

第16条(報告義務)
職位にある者は、職務遂行の経過および結果について、速やかに直属の上位職位に報告しなければならないが、一定の軽易な事項については省略することができる。

第17条(罰則)
役員および従業員が故意または重大な過失により、本規程に違反した場合、就業規則に照らして処分を決定する。

第18条(改廃)
本規程の改廃は、取締役会において行うものとする。

附則
本規程は、○年○月○日より実施する。

■別表第1「組織図」■

画像1

■別表第2「職務権限表」■

画像2

以上(2021年9月)

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画像:ESB Professional-shutterstock

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