書いてあること
- 主な読者:若手・中堅社員が上司に対してどのように思っているのか知りたい経営者
- 課題:若手・中堅社員にとっての理想の上司像、絶対に持ちたくない上司像を知る
- 解決策:20代、30代の社員への、戦国武将に例えた理想の上司、絶対に持ちたくない上司に関するアンケート結果を参考にする
1 若手・中堅社員が抱く理想の上司像を知る
「あの社員は上からの評価は高いが、上司として若手・中堅社員に慕われているのだろうか?」
経営者の皆さんは、こんなことを考えたことがあるかもしれません。一社員として優秀なことと、上司として優秀なことは別の話ともいえます。
そこで、20代、30代の社員551人に「最も上司にしたい戦国武将」「最も上司にしたくない戦国武将」をアンケートで聞いてみました(2022年6月実施)。以降で戦国武将のランキングと、社員がその武将を選んだ理由を紹介しますので、上司に部下指導のアドバイスをする際や、ご自身が若手・中堅社員と接する際の参考にしてください。
なお、アンケートは2022年6月に、インターネットを通じて行いました。
2 最も上司にしたい戦国武将は、僅差で織田信長
1位 織田信長(71人、12.9%) 6位 黒田官兵衛(21人、3.8%)
2位 徳川家康(70人、12.7%) 7位 明智光秀(18人、3.3%)
3位 豊臣秀吉(50人、9.1%) 8位 伊達政宗(17人、3.1%)
4位 上杉謙信(30人、5.4%) 9位 毛利元就(14人、2.5%)
5位 武田信玄(27人、4.9%) 10位 北条氏政(9人、1.6%)
1)上司にはリーダーシップを発揮してほしい(織田信長、伊達政宗)
最も上司にしたい戦国武将で1位となったのは、織田信長です。信長のリーダーシップを評価する声が多く聞かれました。
織田信長を最も上司にしたい理由
- 「リーダーシップがありそう」(30代女性、30代男性)
- 「指導力がありそう」(20代女性)、「カリスマ性がある」(30代男性、20代男性)
- 「決断力がある」(30代男性)、「アクティブ」(20代女性)
- 「頼りになる」(30代男性)、「一番凛々(りり)しくて、強そう」(20代女性)
- 「革新的」(30代女性)、「チャレンジャーそうだから」(20代男性)
8位の伊達政宗についても、上司にしたい理由にリーダーシップを挙げる人が多く見られました。
伊達政宗を最も上司にしたい理由
- 「リーダーシップに憧れる」(30代男性)
- 「ついて行きたいと思った」(30代女性)
- 「率先して物事に取り組んでくれそう」(30代男性)
- 「威厳がある」(20代男性)
2)安心感のある環境で気持ちよく働きたい(徳川家康)
織田信長にわずか1票差で2位となった徳川家康を支持した人からは、その我慢強さからくる温厚なイメージや安心感を評価する声が多く聞かれました。
徳川家康を最も上司にしたい理由
- 「穏やかな感じがする」(30代男性、30代女性)、「大人(おとな)しそう」(30代男性)
- 「一番温厚そうで賢い印象がある」(30代女性)
- 「失敗しても許してくれそう」(30代男性)
- 「優しそう」(30代女性、20代女性、20代男性、30代男性)
- 「忍耐の心情が自分に合っている気がする」(20代女性)
- 「安定感がある」(30代男性)、「心に余裕がありそう」(20代男性)
- 「落ち着きがあってじっくりと評価してもらえそう」(30代男性)
- 「何でも要望を聞いてくれそう」(20代男性)
3)賢い上司からの良きアドバイスが欲しい(豊臣秀吉、黒田官兵衛)
3位の豊臣秀吉や6位黒田官兵衛を支持する人からは、その賢さを評価する声が多く聞かれました。特に秀吉は、良いアドバイスをしてくれることへの期待が寄せられました。
豊臣秀吉を最も上司にしたい理由
- 「賢そう。自分では出せない発想でアドバイスをくれそう」(30代男性)
- 「何かあったら自分で解決策を考えてくれそう」(30代女性)
- 「アイデアがある」(30代男性)
- 「頭がどれだけ良いのか見てみたい」(30代男性)
黒田官兵衛を最も上司にしたい理由
- 「戦略的に物事を考えそう」(30代女性)、「策士だから」(30代男性)
- 「頭を使い適材適所に配置する」(30代男性)
- 「知的で納得がいく」(20代男性)、「穏やかそうで頭が切れそう」(30代女性)
- 「時代の流れを読むのがうまく、感情的にならず虎視眈々(たんたん)と目標を狙えるところ」(30代女性)
4)誠実で信じられる上司がいい(上杉謙信)
戦国時代の3英傑に続く4位には、上杉謙信がランクインしました。謙信の誠実で廉直な人間性が評価されています。
上杉謙信を最も上司にしたい理由
- 「信頼できそう」(30代男性)
- 「誠実」(20代女性)、「義の人だから」(30代女性)
- 「嫌なイメージがない」(30代女性)
5)頼れる上司の下で働きたい(武田信玄、毛利元就)
5位の武田信玄、9位の毛利元就に対しては、人望があって頼りになることを理由に挙げる声が多く聞かれました。
武田信玄を最も上司にしたい理由
- 「内政に強く人望も厚い」(30代男性)、「情にあふれていそう」(30代男性)
- 「威厳があって頼りになりそう」(30代女性)、「守ってくれそう」(20代女性)
- 「部下を大切にしそう。包容力がありそう」(20代女性)
- 「なんとなく強そうだし頭が良さそう」(30代女性)
毛利元就を最も上司にしたい理由
- 「人望がありそう」(30代男性)、「貫禄」(30代男性)
- 「臨機応変に対応してくれる」(30代男性)
- 「どんな困難にも立ち向かっていきそうだから」(30代男性)
6)勝ち馬に乗っかりたい(家康、秀吉、謙信)
最も上司にしたい戦国武将を挙げたその他の理由として、「結果的に勝者であること」という回答も見られました。出世する上司に引き上げてもらいたい、というのが会社員の心情というものでしょうか。
徳川家康を最も上司にしたい理由
- 「天下を統一したから」(30代男性)、「天下人だから」(30代男性)
- 「自力で幕府を開いたから」(20代女性)
豊臣秀吉を最も上司にしたい理由
- 「出世したから」(30代男性)
上杉謙信を最も上司にしたい理由
- 「負けないから」(30代男性)
7)その他:上司はかっこよさも大事(信長、謙信)
この他、織田信長と回答した6人と、上杉謙信と回答した3人の理由は「かっこいい」というものでした。中には「生き方がかっこいい」という回答もありましたが、20代、30代の人の中には、ゲームや漫画などを通じて戦国武将のビジュアルイメージを持っている人がいることも想定されます。上司たるもの、身だしなみにも注意して、部下に「かっこいい」と思われたいものです。
3 最も上司にしたくない戦国武将は、ダントツで織田信長
1位 織田信長(143人、26.0%) 6位 北条氏政(13人、2.4%)
2位 豊臣秀吉(41人、7.4%) 7位 上杉謙信(10人、1.8%)
3位 徳川家康(39人、7.1%) 7位 毛利元就(10人、1.8%)
4位 明智光秀(21人、3.8%) 9位 伊達政宗(8人、1.5%)
5位 武田信玄(17人、3.1%) 10位 黒田官兵衛、宇喜多直家(6人、1.1%)
1)怖い、理不尽、パワハラ上司は嫌だ(信長)
最も上司にしたい戦国武将は意見が分かれましたが、最も上司にしたくない戦国武将については、全体の4分の1以上の人が織田信長と回答しました。圧倒的な理由が、「怖い」というもので、「理不尽」「パワハラ」など、心理的安全性を感じられないことが低評価につながっています。最も上司にしたい戦国武将に徳川家康を選んだ70人のうち、4割近い27人が最も上司にしたくない戦国武将に信長を挙げているのは、それを裏付けているといえるでしょう。
ちなみに、最も上司にしたい戦国武将に明智光秀を選んだ18人も、うち10人が最も上司にしたくない戦国武将に信長を挙げています。ある意味、「歴史の必然」とでもいえるでしょうか。
織田信長を最も上司にしたくない理由
- 「ミスしたら厳しく罰せられそう」(30代男性)、「ミスするのが命懸け」(30代女性、20代男性)
- 「暴君」(30代男性)、「あまりに残虐」(30代男性)、「横暴そう」(30代女性)
- 「ワンマンな気がする」(30代男性)、「我が道を貫きそう」(30代男性)
- 「逆らうと殺されそう」(30代男性、20代女性)、「切り捨てタイプの上司は怖い」(20代女性、30代男性)、「信頼してもらえなさそう」(20代女性)
- 「ノルマがきつそう」(30代男性)、「無茶振りされそう」(30代男性、30代女性)
- 「個性が強すぎて、一度嫌われたら復活できなさそう」(30代女性)
- 「自分以外の人間を見下していそう。気分次第で部下を叱責したりして、近くにいて身が持ちそうにない」(30代女性)
2)感情的、気まぐれなど人間性に欠陥がある(信長)
信長を最も上司にしたくない理由には、上司としての資質だけでなく、人間性に関するものも多く挙がっています。
織田信長を最も上司にしたくない理由
- 「感情的なイメージだから」(20代女性)、「冷静さに欠ける」(30代男性)、「短気そう」(30代女性、30代男性、20代男性)、「キレそう」(30代女性)
- 「自分勝手」(30代女性)、「気まぐれそう」(30代女性)、「気分の浮き沈みが激しそう」(20代女性)
- 「弱い人の気持ちが分からなさそう」(20代女性)、「有能すぎるがゆえに人の感情や立場をかえりみないサイコパスのようなイメージがある」(20代男性)
- 「気が強そうで上司にすると苦労しそう」(30代女性)
- 「考えていることが分からない」(30代女性)
3)偉いのに“小物感”がある(秀吉)
2位の豊臣秀吉に対しては、“小物感”を嫌がる回答がありました。「人たらし」の能力で、日本史上、最大の出世を果たしたものの、それだけに上司に媚(こ)びたという印象もあるようです。上司には堂々としていてもらいたいということでしょうか。
豊臣秀吉を最も上司にしたくない理由
- 「媚びた人は嫌だ」(30代男性)、「ヘコヘコしている」(30代男性)
- 「ずる賢そう」(20代女性)、「ケチそう」(30代女性)
- 「わがままそう」(20代女性)、「自分のことしか考えてなさそう」(30代女性)
- 「せっかちで考え方が浅いイメージがある」(30代女性)
4)腹黒い上司は付き合いづらい(家康)
3位の徳川家康は、「狸親父(たぬきおやじ)」の異名の通り、腹黒いイメージから上司にしたくないと考える人もいました。
徳川家康を最も上司にしたくない理由
- 「腹黒い」(30代男性)
- 「ずる賢い」(30代男性)、「ずるいイメージ」(20代女性)
- 「仕事のできない人にも、うだうだ言いそう」(30代女性)
- 「臆病だから」(20代男性)
5)裏切る上司、卑怯な上司はNG(明智光秀)
4位に入った明智光秀には、どうしても「裏切り者」「謀反人」という経歴がついて回ってしまいます。光秀を最も上司にしたくない若手・中堅社員の心情は、「上司は信頼したい」「上司には自分を守ってほしい」という気持ちが強いということの裏返しでしょう。
明智光秀を最も上司にしたくない理由
- 「裏切られるかもしれない不安があるから」(20代女性、30代男性、20代男性)
- 「部下の失敗を助けてくれなさそう」(30代女性)
- 「やり方が姑息(こそく)だから」(30代女性)、「卑怯(ひきょう)者」(30代男性)
- 「時流が読めなさそう」(30代男性)
以上(2022年8月)
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画像:illustAC そげ