書いてあること
- 主な読者:議事録をうまく取ることができずに困っている新入社員
- 課題:会議などの内容についていけない。そもそも、どうまとめたらよいのか分からない
- 解決策:議事録は速記ではない。フォーマットを決めて、事前にポイントを絞ることが大切
新しい事業の検討が始まり、今日の会議はとても盛り上がっている。良いことだけど、議事録が問題なんだよな。みんな早口だし、初めて聞く言葉もあってメモすら追いつかない。「ちょっと待ってください!」と話を止める勇気もないし。あぁ~、こんなことならスマホで録音しておけばよかったかな……。
1 議事録は速記ではありません
皆さんは議事録と聞いて「速記」をイメージしていませんか。つまり、会議の進行と同時に会話をまとめていくイメージです。しかし、これは無理です。速記は、速記のプロが速記文字という特殊な記号を使ってまとめており、皆さんが普通に書いたり、入力したりしても議論のスピードに追いつけるわけがないのです。
発想を転換しましょう。議事録に必要なのは速記の技術ではありません。皆さんがすべきことは、
事前準備と速やかな確認
なのです。事前準備とは、
- フォーマットを決めておく
- アジェンダ(議事録のフォーマットを使う)を事前共有する
ことです。
また、会議中は議論が紛糾することがありますし、発言の意図が分からないこともあります。こうした点は、会議が終わった後に先輩に確認すればよいことです。会議中に全て理解できれば理想ですが、これはまだ先のことなので、焦らなくて大丈夫です。
2 これだけは覚えたい議事録の6つの作法
議事録に限ったことではなく、ビジネス文書にはセオリーがあります。まずは次の6つのセオリーを押さえてください。議事録に記載すべき情報の整理に迷ったら、この6つを参考にすれば大丈夫です!
- シンプルに、抜け漏れなくまとめる。大事なことは繰り返してよい
- 話題は大きいところから小さいところへ
- 過去・現在・未来を基本に、時系列を分かりやすく
- 事実と意見を分ける
- 決定事項と継続議論の事項を分ける
- 次の具体的なアクションを示す
3 フォーマットを決めておく
1)必ず記載する事項
議事録には必ず次の事項を記載するので、フォーマットの中に入れておきましょう。
- 日時:yyyymmdd 10:00~11:00
- 場所:A社の本社、オンライン
- 出席(欠席)者:A社課長○○さん、□□さん。B社部長△△さん、××さん
- テーマ:新しい展示会に関する業務提携について
- 資料(資料などのリンク):A社企画書(資料名)
- 次の開催日:yyyymmdd 10:00~11:00 ※以降、定例化を検討
2)議事録の形式
議事録には、ポイント形式と会話形式とがあります。一般的なのはポイント形式です。
1.ポイント形式
ポイント形式とは、会議で話し合ったポイントをまとめるものです。内容には次のようなものになります。
- 決定したこと:会議で決まったこと。「○○を共同制作する」
- 具体的なアクション:次にすべきこと。「A社は企画書を改訂、B社は基本契約を準備」
- 継続して議論すること:次回の会議に持ち越すこと。「A社とB社の費用の負担割合」
- 議論のポイント:決定や継続議論に至った経緯
具体的なアクションは文字通り、具体的であるほどよいです。大切なのは、日時を指定することと、A社ではなく「××さん」と具体的な人まで示したほうが望ましいです。また、議論のポイントでは、特に共有したいことを記載します。何を記載するかの判断は難しいと思いますので、最初のうちは先輩に確認しましょう。
2.会話形式
会話形式とは、発言の内容をそのままの流れでまとめるものです。
- A社 X課長「新しい企画があります。ぜひ、御社と提携して進めていきたいです」
- B社 Y部長「ありがとうございます。具体的にどのような企画ですか?」
- A社 X課長「これまでにない展示会の形式でして……」
先輩から「議事録を取って!」と言われたときに新入社員の皆さんが作りがちなのは、この会話形式です。ただ、会話形式は録音などを確認しながらでないと作れないので時間がかかります。それに、議事録が長くなり、ポイントが分かりにくくなるなどの問題があります。会社のフォーマットが会話形式でない限り、ポイント形式を採用したほうがよいです。
会話形式は、トラブル解消についての議論や何らかの謝罪など、「誰が、何と発言したか」を時系列でまとめることが必須の場合に採用します。
3)ファイル形式やファイル名のルール
会議の議事録は関係者にメールなどで共有します。その都度、ファイル形式やファイル名が違っていたら不便なのでルールを決めましょう。
ファイル形式は「.docx(Microsoft Word)」「.txt(テキスト)」などが一般的です。議事録はシンプルに情報がまとまっていることが理想なので、デザインなどにそれほどこだわらなくてよいでしょう。それよりも会議が終わってから議事録を展開するまでのスピードが大事です。
ファイル名は、例えば、
「展示会の企画-yyyymmdd.docx」「yyyymmdd-展示会の企画.docx」
などとします。テーマを優先したいのか、日付を優先したいのかによって工夫します。
議事録は、メールやクラウド上のドライブで共有します。もしメールで共有する場合は、ファイル名を件名にすると、後でメールが検索しやすくなります。例えば、
メールの件名:【議事録】展示会の企画-yyyymmdd
といった具合です。また、クラウド上のドライブで共有する場合は共有範囲に注意しましょう。間違えると、共有してはならないファイルまで共有されてしまいます。
4 アジェンダ(議事録のフォーマットを使う)の事前共有
会議の方向性をある程度コントロールするために、
アジェンダを事前共有
しましょう。アジェンダにポイントをまとめておき、それに沿って会議を進めていくと進行がスムーズで、議事録も取りやすくなります。
アジェンダは、そのテーマについて過去・現在・未来がある程度分かっていなければ作れません。きちんとアジェンダが作れるようになったら一人前です!
5 録音・録画の確認は最小限に
会議の内容を録音・録画していると、「後から確認できる」と安心してしまい、会議中に議事録の作成に集中できないことがあります。しかし、録音や録画の確認には思った以上に時間がかかります。仮に会議が60分とすると、録音や録画を確認しながら議事録を作るのに最低でも120分はかかると思っておいたほうがよいです。
ですので、スピーディーに議事録を作るには、
- アジェンダの事前共有
- 会議中にポイントを記載
- 会議後の確認(ここで録音や録画を確認する)
といったことを基本とします。録音や録画を確認しても分からないところは、先輩に確認するようにしましょう。
以上(2024年12月更新)
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画像:Mariko Mitsuda