書いてあること
- 主な読者:朝礼でのスピーチで、ネタ切れ感に困っている中堅社員
- 課題:ネットでスピーチのテーマ探しをするのはやめたい。もっと意味のある話をしたい
- 解決策:現場で起きていることや日ごろの自分の人となりをスピーチのテーマとする。特にオンラインでは、実感のこもった「自分事」の話が聞き手に伝わりやすい
1 「実感のこもった」テーマがおすすめ
朝礼は今も昔も、“思い”と情報を共有する貴重な機会です。ただし、今はデジタル化が進み、その形は変わってきています。経営者・役員239人を対象とした独自アンケート(日本情報マート、2021年2月調査)によると、「朝礼をしている」と回答した人は30.5%で、中には「オンラインでの朝礼が多くなっている」という人が12.3%います。
こうした中で、改めて考えたいのが「テーマ」です。ビデオオフでも可にしているオンライン朝礼の場合、参加者は「ながら聞き」しているかもしれません。ネットで探したありがちな話では、ちゃんと聞いてもらえないでしょう。何より、話し手の気分が乗りません。音声だけの場合、話し手の「乗らなさ」は聞き手にすぐバレてしまいます。
そこでおすすめなのが、「自分の言葉で話せる実感のこもった内容」です。聞き手に気持ちが伝わりますし、話し手も温度感、情熱を持って伝えられます。例えば入社3~5年目の中堅社員の場合、次のいずれかのテーマが良いでしょう。
- 現場で起きていることを話す(良い話も悪い話も)
- 日ごろの自分の人となりを話す
- 会社の方針や上司の話を「自分事」に落とし込んで話す
2 現場で起きていることを話す(良い話も悪い話も)
中堅社員には、現場での情報が集まってきます(集まってくるようにしなければなりません)。中堅社員の“感度”が高ければ、現場には「素晴らしい」と称賛できるナイスプレーや、「危ない」と肝を冷やすヒヤリ・ハットなど耳の痛い話があるはずです。
例えばこの1週間、現場で何が起きたのか、上司や部下は自分に何を話してくれたのかを思い出してみてください。皆に伝えたいと思う情報がたくさんありませんか。ナイスプレーや耳の痛い話など、スピーチで話すことが決まったら、ここに1つだけ中堅社員ならではのエッセンスを加えてください。それは「仕組みづくり」を進める提案です。
「あぁ、良かったね」あるいは「危なかった……」と思うだけで終わっていてはいけません。素晴らしいことは再現性を持たせる、問題になりそうなことは再発を防止するのが中堅社員に求められます。ここでは、ナイスプレーと耳の痛い話の例をそれぞれ紹介します。
【文例:素晴らしいことを共有し、仕組みをつくる(ナイスプレー)】
先日、私のチームに新しいメンバーが加わりました。その際、誰に頼まれたわけでもないのに、自然と皆でリモートでもコミュニケーションが取りやすいようチャットツールを整えたり、各自の名前や特徴をオンライン上の背景画像に載せたりといった準備をしました。我ながら、「いいチームだな」と誇らしく思います。
先日行ったチームビルディングに関するセミナーの参加者にこの話をしたら、その人は「自分たちもまねしたい」と言ってくれました。その人の会社はチームの連帯感が薄く、新人が定着しないという課題があり、その解決に役立てたいとのことでした。今回は、私が所属するチームについてお話ししましたが、他のチームはどうでしょうか。私は新しい仲間を温かく迎え入れる雰囲気にあふれた当社は、素晴らしい会社だと思っています。ぜひ、この雰囲気を大切にして、広めていきたいです!
【文例:メンバー全体への通知からの仕組みづくり(耳の痛い話)】
今日は、「伝言」について注意したいことを皆さんに共有します。このごろ、出社勤務の人と在宅勤務の人が両方いる状態に慣れてきて、各自が気を付けていたコミュニケーションの取り方も、「なあなあ」になってきているように思います。
特に感じたのは「電話の伝言」についてです。会社で電話を取った人が在宅勤務の人に伝言するときに、本人にだけ個別にチャットで伝言を送ると、他の人は「起きていること」が分かりません。特にトラブルなどは、全員に伝えるよう徹底していきましょう。
在宅でお客さまからの電話を個別に受けた人も同じです。トラブルでなくてもお客さまと話した内容は情報共有しましょう。忙しい中ですぐに情報共有するのが難しい場合は、この朝礼の場を使ってもいいと思います。今日から実践していきましょう!
3 日ごろの自分の人となりを話す
同じ会社で働いている仲間でも、実は互いのことをあまりよく分かっていなかったりしませんか。せっかく一緒に働いているのに、年齢、名前、所属などの互いを認識する最低限のことしか知らないとしたら、それは少し残念です。
せっかく皆に話をするなら、「この朝礼に出て良かった。この話は他では聞けない」と思ってもらえるスピーチをしたいものです。といっても難しく考える必要はなく、参加したオンラインセミナーの話、読んだ本の話、趣味の話など、とりとめのない話でいいのです。
これらの話は、あなたの人となりを表すものであり、メンバーにあなたのことを知ってもらう良い機会となります。また、自己紹介のスピーチは、新入社員がスピーチをする際にも参考にしやすいテーマです。新入社員の見本となるような自己紹介スピーチをしてみましょう。
【文例:自分のことを知ってもらう】
皆さん、おはようございます! 私はYouTube動画にハマっています。特に、日本の歴史を分かりやすく、しかも短時間で説明するシリーズが面白く、ついつい何本も見てしまいます。
あまり公にはしていないのですが、昔、私は映画を作る仕事をしたいと思っていて、実際に何本か簡単な脚本を書いたこともあります。ですので、映像全般についてとても興味があります。
YouTubeを見過ぎると家族に怒られるのですが、今の映像技術はものすごく進化していますし、YouTuberの演出もレベルが高いものが多く、かなり面白いです。YouTuberの考え抜かれた伝え方を、実はプレゼンにも役立てています。
ということで、私は自称“映像オタク”です。うちの会社の動画コンテンツは、私もお手伝いできます! それから、私は今、バーチャルのキャラクターを使った「VTuber(ブイチューバー)」にも興味があって色々見ています。YouTuberやVTuberの可能性を探って皆さんにまたレポートしますので、期待してお待ちください!
4 会社の方針や上司の話を「自分事」に落とし込んで話す
中堅社員がサンドイッチの具に例えられた時代があります。これは上司(パン)と部下(パン)に挟まれて、両者の間をうまく取り持つということです。一方の考えを通訳して、もう一方に伝える立場ともいえます。この点を意識し過ぎる中堅社員は、「自分のスピーチは上司に厳しく評価されている」と考え、上司の考えを忖度(そんたく)したスピーチをしがちです。
しかし、それは間違いです。上司は中堅社員のスピーチに注目しますが、採点しているわけではありません。ましてや、自分と同じ考えを持ってほしいなどとは思いません。上司は、中堅社員のスピーチから、現場で起きていることや人となりを聞いているだけです。
以上から、中堅社員は自由にスピーチをしてよいのですが、会社の方針や上司の話を伝える際は、通訳ではなく、エバンジェリストであることを意識してみましょう。エバンジェリストとは、「伝道師」のことで、ある事柄の価値を相手に正しく伝え、広める役割を担います。
広める対象が会社や部門の方針だとしたら、まさに中堅社員に求められるのはエバンジェリストの役割だと分かるでしょう。そして、朝礼のスピーチはそのための絶好の機会になるわけで、中堅社員にとっては腕の見せどころです。聞き手に伝えるポイントは、「自分事」として話せるかどうかです。
【文例:会社の方針を伝える】
先日の全社会議の中で、社長は「我が社のあるべき理想の姿」をお話しされ、「社員一人ひとりも『あるべき理想の姿』を改めて考えなければならない」とおっしゃっていました。早速私なりに考えてみたので、今朝はその話をします。
私が仕事を通じて成し遂げたい、「あるべき理想の姿」だと思うのは、「頑張る経営者をサポートする」ことです。それによって日本経済に貢献できれば、私たちの子供や孫の世代に良い日本を残すことになると思うからです。
自分でも壮大なことを言っているなと思います。しかし、これが仕事を通じて成し遂げたいことであると自信を持って言えます。そして、この理想に向かって、皆さんと楽しく仕事をしていきたいと心から思っています。
「あるべき理想の姿」は人それぞれであり、それが自然です。ただ、ともすれば漫然と目先の仕事に追われてしまう中で、一度立ち止まり、自分が成し遂げたいことを考えてみるのは、とても有意義だと感じました。
皆さんは、「あるべき理想の姿」について考えてみたでしょうか。ぜひ、皆でこのテーマをディスカッションしましょう! そうしたことの積み重ねが、チームの結束力を高めるだけでなく、多様性を生むのだと思います。
以上(2022年9月)
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画像:pixta