書いてあること
- 主な読者:会社経営者および役員、管理職、人事・労務担当の皆さん
- 課題:完全に防ぐことが難しい熱中症。作業者の中には「熱中症にかかりやすい人/かかりにくい人」が混在しており、人によって熱中症発症リスクが異なるため、一律な管理対策だけでは、熱中症にかかりやすい人(弱者)を救うことはできません。
- 解決策:まずは「熱中症にかかりやすい人」を把握して、早期に異変に気づくように日頃から目配りしておくことが重要です。また、人による管理の限界を補うための方策として、IoTデバイス活用による解決策のヒントをご紹介します。
1 一律な管理対策だけでは熱中症は防げない!
毎年、7月下旬の梅雨明けの時期から急増する熱中症。
その基本的な対策は、「定期的に水分を補給する」、「塩アメを各自の判断で舐める(塩分摂取)」、「定期的に休憩を促す」、「WBGT値(湿球黒球温度:熱ストレスを評価する指標)による温湿度確認」などと言われています。
しかし、このような一律な管理対策だけでは、熱中症を完全に防ぐことは難しいとされています。その理由としては、次のような点が挙げられます。
- 管理者として、多くの作業者の一人ひとりの体調変化を常に監視して把握することは難しい
- 作業者の体型や年齢、持病等によって熱中症へのなりやすさに個人差がある
- 同じ作業者でも、その日の体調によって熱中症へのなりやすさが大きく変わる
- 作業者本人が「少し、おかしいな」と思っても「まだまだ大丈夫!」と頑張りすぎてしまい、周りの人からみて明らかに「調子が悪そう」と気づいたときには手遅れとなっていることがある
作業者自身が早めに体調の変化に気づき、自発的に休憩して、水分・塩分を補給すれば、熱中症は防げるはずですが、本人が頑張りすぎてしまうと、管理者や同僚が気付かない限り、熱中症は防げないのです。また、定期的に休憩時間を設けても、人によって熱中症リスクに差があるため、熱中症になりやすい人にとっては十分な休憩とはならないことがあります。
このような課題を解決するためには、まずは、「熱中症になりやすい人」を知ることが必要です。
そこで、今回は、「熱中症になりやすい人」をご紹介するとともに、個人差のある作業者の体調変化を「早期に把握し、本人や管理者に伝える」ことができる管理ツールをご紹介します。
2 「熱中症になりやすい人」とは…
一般的に熱中症は暑くて湿度の高い日に起こりやすいのですが、誰もがそれほど暑いと思われないような気温の日にも実際には熱中症になる人がいます。その違いは、どこにあるのでしょう。
1)体型、年齢、持病による「熱中症へのなりやすさ」
1.体型
- 肥満者
皮下脂肪が厚いため、体内の熱が外に逃れにくいため、体温が上昇しやすい。また、体内の熱を放散するために汗をかきやすく、脱水にもなりやすい。
- 筋量の少ない人
筋量が少ない人は、循環血液量が少なく、大量に汗をかいたときに脱水になりやすい。
2.年齢
- 高齢者
加齢に伴い、体内の水分の割合や感覚機能が低下して、喉の渇きを感じにくくなるため、水分不足になりやすい。また、汗をかきにくいので、体内の熱を逃す機能が不十分となり、体温が高くなりやすい。
- 子ども
思春期前の子どもは、汗腺をはじめとした体温調節能力が十分に発達していないため、高齢者と同様に熱中症リスクが高くなる。
3.持病(基礎疾患)
- 糖尿病
血糖値が高いほど末梢の血管拡張が障害されやすいため、体表面からの熱の放散が不十分になりやすく、汗もかきにくくなることから、体温が高くなりやすい。
- 高血圧症、心臓病
水分・ナトリウム(塩分)を体外に強制的に排泄する利尿剤を内服している場合、脱水になりやすい。
- 腎臓病
塩分摂取を制限されている場合、塩分不足になりやすい。
- その他(皮膚疾患、精神・神経疾患)
広範囲の皮膚疾患があると、発汗が不十分となり、体温調節に支障を来すことがある。
自律神経に影響がある薬(パーキンソン病治療薬、抗てんかん薬、抗うつ薬、抗不安薬、睡眠薬等)を内服している場合、発汗や体温調整が阻害されやすい。
2)その日の体調による「熱中症へのなりやすさ」
- 風邪、下痢、嘔吐
風邪で発熱があると汗を余計にかくことで脱水になりやすい。下痢や嘔吐があると水分とともにナトリウム(塩分)も失われ、さらに脱水になりやすい。
- 二日酔い
アルコールはその分解に水分を使うことに加え、尿を多く出す作用があるため、脱水となりやすい。
- 朝食を抜く
起床時にはすでに脱水状態になっているので、水分を摂ることが大切。朝食を抜くと、水分・塩分が不足になりがちで熱中症リスクを高める。
- 寝不足
寝不足により注意力や集中力が低下するとともに、暑熱にさらされた身体の体温調節が難しくなり、熱中症に罹りやすくなる。
管理者の方は、作業員の中で「熱中症になりやすい人」を予め把握しておき、その作業者の動きをよく観察し、少しでも、ふらつきなどの異変が現れた場合は、すぐに休憩を促し、水分・塩分を摂取してもらうことが大切です。
3 個人の体調を考慮して熱中症リスク(アラート)を管理者に通知するツール
熱中症は、自覚症状が生じてから重症化するとは限らず、作業に没頭していて、いつのまにか体温が上昇して、脳が正常な判断ができなくなって、突然、倒れるというケースがしばしば報告されています。
そのため、朝礼などで「今日は暑くなるので、体調が優れない時は無理をしないで休憩するように…」と伝えて、本人の自発的な予防を促しても、一緒に働く同僚への配慮などもあり、ついつい無理をしてしまいがちなため、十分な対策とは言えません。
そこで、今回は、このような課題を解決する熱中症管理対策に適した、低廉な管理ツールとして、「みまもりふくろう」をご紹介します。
【労務/熱中症管理サービス】みまもりふくろう
リストバンド型デバイスにより作業者の脈拍と位置情報をリアルタイムに計測し、企業の労務管理と熱中症対策をサポートするウェアラブルIoTサービスです。
1)個人差のある作業者の体調変化をAIが判断してアラート基準を自動設定
このサービスは、リストバンド型デバイスを着用した作業者の脈拍を、4秒に1回の高頻度で計測し、予め定められた心拍の上限・下限や熱ストレス度(熱中症リスク)、作業強度(肉体負荷の大きさ)の初期値を超えた場合にアラートを所定の携帯電話やパソコンにメール通知するものです。
前述のとおり、熱中症のかかりやすさは人によって異なるため、このサービスでは、厚生労働省の熱中症対策への考え方を基本として、作業者個人に最適なアラート基準に自動修正するアラートロジックを備えています。
リストバンド型デバイスによる熱中症管理サービス商品は、世の中に数多く販売されていますが、個人差を考慮してアラート基準(初期値)をAIで自動修正する仕組みを備えたサービスは他には見当たりません。
2)アラート通知は本人だけでなく、管理者にも通知
リストバンド型デバイスによる熱中症管理サービスに関して、企業の皆さんから「本人に危険を通知することができるか?」といった問い合わせが多く寄せられます。もちろん、このサービスでは、本人が携帯電話等を所持していれば、メールでアラートを通知することができます。しかし、先にお伝えしたとおり、本人に通知しても、「異変は感じていないので、まだ、大丈夫だよ。」として、このアラート通知を無視してしまうことがよくあることが大きな問題なのです。このサービスのアラート通知機能は複数の人にメール通知することができるため、現場の管理者や一緒に働いている同僚にも通知することができます。熱中症予防で大事なことは、周囲の人から休憩を促すことや場合によっては、管理者から強制的な指示として休憩や水分・塩分補給を促すことだと考えられます。
また、このサービスのアラートは正常(緑色)、注意(黄色)、危険(赤色:この段階でアラート通知)の3段階のレベルで身体状態を捉えることができるので、休憩中に危険(赤色)から正常(緑色)に変わった段階で管理者の方から本人に「仕事に復帰してもよい」との指示を与えることもできます。
3)その他、GPSによる位置情報の把握や多彩なダッシュボード機能を備えているうえ、導入しやすい安価なサービス料金
GPS機能により位置情報を把握することが可能なため、夜間や一人作業中の異変時においても遠隔地から早期に異状を発見し、救急車の要請を連絡することや現場に近ければ、即座に応援に駆け付けることもできます。
また、取得したデータを見える化したダッシュボード機能を備えているため、作業者の1日のルートを振り返って確認することや過去の心拍データ履歴の確認や分析等ができます。
また、このサービスは、初期費用が不要なため、低価格でのサービス提供を実現しているほか、夏場の3か月間だけの期間利用も可能なため、導入しやすいサービスとなっています。
作業者の個人差を踏まえて熱中症管理ができる他にない機能を有した管理ツールですので、是非、ご検討してみてはいかがでしょうか。
詳細なサービス内容や料金等は上記に記載のWebサイトにアクセスして、ご確認ください。
【参考文献】
- 厚生労働省「職場における熱中症予防対策マニュアル」
- 環境省「熱中症環境保健マニュアル」(2018年3月)
- 中央労働災害防止協会「製造業向け熱中症予防対策のためのリスクアセスメントマニュアル」(平成27年3月)
- 研究代表者 堀江正知「熱中症予防等に資する一般健康診断を通じた効果的な健康管理に関する研究」(平成29年3月)
以上(2021年7月)
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画像:anypix-shutterstock