書いてあること

  • 主な読者:社員の「熱中症」対策を進めたい経営者
  • 課題:水分補給をして冷房もきかせているのに熱中症になってしまう?
  • 解決策:体を暑さに慣れさせる「暑熱順化」に取り組んでみよう!

1 今夏の熱中症対策は暑さに慣れる「暑熱順化」から

2023年に「熱中症」で救急搬送された人数は9万1467人(消防庁「令和5年(5月から9月)の熱中症による救急搬送状況」)にのぼり、2024年も要注意です。熱中症のピークは7月下旬~8月上旬ごろですが、体が暑さに慣れるには数日~2週間程度が必要なので(個人差あり)、急に水分・塩分の補給などをしても対策として不十分なところがあります。

そこでご提案するのが、

暑熱順化:時間をかけながら暑さへの耐性を身に付けていくアプローチ

です。暑熱順化は、ジョギングやウォーキングなどによって汗をかき、体を暑さに慣れさせていくというもので、厚生労働省や環境省からも推奨されています。今夏の熱中症対策として取り入れてみてはいかがでしょうか。暑熱順化のスタートは6月ごろが最適です。早速、ポイントを確認していきましょう!

2 なぜ、暑熱順化が推奨されるのか?

熱中症を引き起こす要素は、環境・体・行動の3つに分類できます。ここで注目したいのが「体」の「暑さに慣れていない」状態です。

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体温が上がると、ヒトは次のように体温を調節します。

  • 皮膚への血流を増やして体の表面から熱を逃がす(熱放散)
  • 汗が蒸発することで熱を逃がす(気化熱)

しかし、体が暑さに慣れていない状態で気温が上昇すると、この体温調節がうまくできなくなることがあるのです。最初は、体内の熱を逃がそうとして皮膚の血流量が増えます。ところが暑熱順化できていないと、この熱放散が機能しにくくなります。気化熱による体温調節で汗をたくさんかきますが、今度は水分・塩分が多く失われて血液の流れが悪くなります。その結果、体内に熱がどんどんたまり、熱中症になってしまいます。

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一方、早いうちから暑熱順化に取り組んでいると、皮膚の血流量が増加しやすくなり、汗に含まれる塩分量も減るので、血液の流れが悪くなるリスクを低減できます。つまり、

夏本番を迎えて気温が上昇しても、熱を逃がしやすくなり、体温調節がうまく機能する

のです。

3 暑熱順化を始めよう!

暑熱順化のポイントは、脳を「もう夏か! いつでも熱を逃がせるように準備しておこう!」と勘違いさせて、体を夏モードに切り替えさせることです。暑さに備えた体をつくるためには、夏の暑さを再現して汗をかくことが重要です。環境省による熱中症対策では、

「やや暑い環境」で「ややきついと感じるくらいの運動」をすること

を推奨しています。

厚生労働省「働く人の今すぐ使える熱中症ガイド」では、暑熱順化に有効な対策として次の4つの取り組みが紹介されています。なお、時間や頻度は全て目安なので、自身の年齢や体力、気温や室内の環境を考慮しながら取り組んでみましょう。

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1.歩く・走る

ウォーキングであれば30分、ジョギングであれば15分の運動を、週5回行うことを目安として推奨されています。移動の際にできるだけ階段を利用するのも、汗をかくのに効果的です。

2.自転車

サイクリングであれば、30分の運動を週3回行うことを目安として推奨されています。時速20キロメートルで走れば10キロメートルの距離です。

3.適度な運動

(筋トレ・ストレッチなど適度に汗をかくもの)室内でできる取り組みとしては、筋トレやストレッチなどがあります。この場合、30分の運動を週5回~毎日実施することが推奨されています。

4.入浴・サウナ(お風呂はシャワーだけでなく、湯船につかる)

入浴であれば、2日に1回以上はしっかりと湯船に入ることが推奨されています。なお、サウナが暑熱順化に有効という意見もありますが、水分補給の状況によっては脱水症状を引き起こす恐れもあるので注意が必要です。

4 暑熱順化の効果を高める3つのポイント

暑熱順化の効果を高めるポイントは、

  • 本格的に暑くなりそうな時期の2週間前から始める
  • トレーニングを持続する
  • 無理はしない

の3つです。

前述した通り、体が暑さに慣れるまでには数日~2週間程度の時間がかかります。そこで、気象庁の「2週間気温予報」などを確認しながら本格的に暑くなりそうな時期の2週間前からトレーニングを開始しましょう。

残念なのは、暑熱順化の効果はあまり続かないこと。個人差はありますが、トレーニングを中断すると数日で元の状態に戻るといわれます。梅雨寒の日が続いたり、夏休み中に涼しいところで過ごしたりした後は暑さへの耐性が弱まりますが、そんなタイミングで一気に気温が上昇すると、熱中症になるリスクが高まります。

暑熱順化の基本は「やや暑い環境」で「ややきついと感じるくらいの運動」をすることです。あくまで暑さに慣れることが目的ですから、無理をしすぎて熱中症になっては本末転倒なのでご用心。

以上(2024年6月作成)

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画像:Something in my head-Adobe Stock

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