1 ビジョン語りで優秀な学生を採る

ゆとりさとり世代、ミレニアル世代、デジタルネイティブ、SNS社会の住人――。

どれも今どきの若者を形容するキーワードです。究極の売り手市場といわれる令和の時代、そんな彼らの価値観や行動原理を理解することなしに採用成功は望めません。本稿では、拙著『なぜ最近の若者は突然辞めるのか』に記した若者を理解するためのキーワードをもとに、いま若手採用において、何が重要かを解説していきます。

今どきの若者がよく言う口癖に「それって意味あるんですか?」というセリフがあります。とにかく論理的、合理的な納得感が彼らの行動原理。意味と目的を理解できないと動きません。逆にその意味と目的に共感したら、大まじめに取り組みます。

就職先を選ぶ上でも、この「意味付け」という価値観が大きく影響しています。ですから企業としては、ビジョナリーな採用コミュニケーション戦略がより重要度を増しています。特に知名度の低い中小企業においては、ビジョン語りによる「意味」の提供は生命線となってくるでしょう。逆に「意味」の提供ができれば、優秀な学生を大企業からリプレイスできるジャイアントキリングにも期待が持てます。

2 親や友達に説明しなきゃいけない

彼らが、これほど企業選択に対する「意味付け」にこだわるのには、納得感以外にも理由があります。他人に、“なぜこの会社を選ぼうとしているのか”という理由を説明するための意味を欲しているのです。その筆頭が親です。オヤカクという言葉があるように、新卒で就職するにせよ転職するにせよ、いまや就活に親が口を出す時代。いまの若者たちは、親に対しての説明を意識せざるをえません。

また、いまの若者には多くの友達がいます。育ってきた中で知り合ったリアル友達だけでなく、SNSでつながったオンライン友達が圧倒的に増えています。その友達にも“なぜこの会社を選ぼうとしているのか”を語りたい、あるいは語る必要に迫られているのです。SNS上での彼らは、炎上したり悪目立ちしたりするのは困るけど、充実した自分を見せたい!他人に認められる自分でありたい!という欲求が人一倍強い世代なのです。

3 その会社に決めて「いいね」と言われたい

だから「そういう理由で選んだのなら分かる。いいじゃん。頑張ってね」と言われたいのです。逆にいうと、自分の友達が認めてくれないような就職先を選ぶというのは、相当勇気のいる選択なのです。超合理的な価値観を持つ若者からすると、すごく説明コストがかかるのです。それこそコスパが悪いじゃんということになってしまいます。

終身雇用が崩壊し、将来不安を抱える若者の人気企業ランキングにおいて、相変わらず大企業が上位にズラリと並ぶのは、その企業の安定性を買っているのではありません。だって一生勤め上げるという感覚は皆無なのですから。あのランキングには、就職先を選んだ意味の語りやすさ、周囲への説明のしやすさが反映されているといっても過言ではありません。

4 テクノロジー積極活用のススメ

また超合理的で生産性を極限まで追求する彼らは、時間のムダが大嫌い。最短ルートでゴールしたいと考えています。当然ながらデジタルツールを使うことは大得意です。こういった採用ツール(最近ではHRテックといわれます)を駆使することは、若手採用を成功させるもうひとつのカギといえます。

そういった観点から、若者への親和性があって時短を実現してくれる採用ツールをふたつ紹介しましょう。

まずは、オンライン自動面接日程調整システム。急速に進歩を遂げた「チャットボット」という技術によって、面接日程調整を完全自動化するサービスが台頭してきています。「チャットボット(Chatbot)」とは、チャット(会話)とボット(ロボット)を組み合わせた言葉で、人工知能を活用した「自動会話プログラム」のことです。

いまの若い世代は、LINEなどチャットでのリアルタイムなやりとりが当たり前。応募したものの「どうして返事するのに1日もかかるのか」というようなストレスを感じる人は、少なくありません。

一方で、採用業務に携わる担当者のデジタルリテラシーが高くないと、この手のHRテックシステムを駆使するのは難しいというのも事実。しかし最近では、機能充実より機能を絞って操作性をシンプルにするというサービスが増えています。

従来型の採用管理システムを導入していたあるアパレルチェーン。月間300~1000名の応募者をさばくために、1日3時間を費やしていた本社の採用担当者は、前述の面接設定に特化したシステムに乗り換えたことによって採用業務時間が半減したとのこと。

「生産性を高めるシステムって導入してみても、使いこなせないって、あるあるですよね。でも新しいシステムは触っちゃえばまあまあ簡単だったっていう感触。私の仕事はなくなっちゃうんじゃないですか?って思わず言ってしまったほどです」。そう話す担当者もいました。

5 YouTube世代にささる動画面接

面接をオンラインでやってしまいましょうというテックサービスも増えています。この動画面接システムも、面接にこぎつけるスピード感という面で非常に有効です。採用担当者の面接時間確保、応募者との日程調整だけでも大変な中、当たり前ですがリアルな面接では面接会場の確保も必要になります。全てが空いているタイミングを探すのに労力がかかり、なかなか面接をセッティングできずに終わってしまうケースも実際に多々起きています。

しかも、ライブ面接だけでなく録画面接という機能もあります。この機能を使えば、応募者がスマホで録画しておいた面接動画を、採用担当者が空いている時間にチェックすることが可能です。観たい時に映画を観るオンデマンドな動画サービスと同じです。これも忙しい採用担当者にとっては、非常にありがたい機能でしょう。

また応募者が遠方に在住している場合、面接に来てもらうのには、移動時間や交通費の面で大きな負担となります。その点、オンラインでの動画面接は場所の制約を受けません。日本全国(あるいは世界中)どこに住んでいても、面接が可能です。いとも簡単に時空を超えて面接できるというのは、応募者と採用担当者の負担を大幅に軽減することにつながります。

さて、利便性は理解できたとしても動画面接に踏み切れない理由があるとすれば、「やっぱり実際に会って面接しないと、応募者の人となりは分からないでしょ」という見極め問題でしょう。しかし考えてみてください。緊張感いっぱいの面接で自分を出し切ることって、なかなか難しいものです。特に最近の若者はリアルコミュニケーションが苦手。むしろYouTubeやTikTokに投稿慣れしている世代にとっては、動画による自己表現のほうがよっぽどリラックスして「素」を出せそうです。そう考えると、ガチガチに緊張して盛り上がらないリアル面接よりも、実は応募者のキャラを見極めやすいのかもしれません。

6 SNS世代を理解したリクルーティング戦略

生まれた時からインターネットがあり、多感な思春期にSNSというバーチャルな社会にデビューしたいまの若者は、もはやオンラインコミュニケーションのほうが得意。SNSで個人と個人が直接つながり、仲間関係が横に広がっています。そこでは年上も年下もなく、経営者でも会社員でも、外国人であっても、個と個でつながっています。

若者はそういった「ヨコにつながる仲間コミュニティ」の中で「バリバリ目立つのは嫌だけど認められたい」という葛藤を抱えながら、一方で「意味や目的のないムダな仕事はしたくない」合理性と生産性への強いこだわりを持っています。

そんな彼らの傾向を理解した上での採用活動を心掛けていただきたい。キーワードはビジョナリーなコミュニケーション&テックでのスピーディな採用です。

以上(2019年8月)
(執筆 平賀充記)

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画像:NDABCREATIVITY-Adobe Stock

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