書いてあること
- 主な読者:社員のプレゼン力や売る力に物足りなさを感じている経営者
- 課題:資料が美しくないなどの問題もあるが、そもそも「熱量」が感じられない
- 解決策:経営者が考える良いプレゼンを「要件定義」する。その上で経営者に近い視点を持てる社員を選抜して教育する
1 社員の「プレゼン力」に不満を覚えたら
社員の「プレゼン」が全然ダメ……
この記事は、こんな不満を持つ経営者の参考になるように、
組織のプレゼン力を高める方法
をご提案するものです。ここでいうプレゼン力は、「売る力」や「伝える力」と読み替えていただいても大丈夫です。
プレゼンについて解説した書籍やネット記事は数多く、セミナーも頻繁に開催されています。それに、中小企業では営業同行などで経営者と社員が一緒に行動することが多いので、社員は経営者の振る舞いを見られる機会が多いです。
にもかかわらず、社員のプレゼン力が高まらないのはなぜなのでしょうか?
2 良いプレゼンを「要件定義」する
もっともありがちな問題は、
一般的に社員のプレゼンは合格点なのに、経営者は物足りなさを感じている。ただ、物足りないポイントが曖昧で、何をすれば合格するのか誰も分からない状況
です。
かつて、筆者は知り合いの経営者Aから「社員の資料が分かりにくいので、資料作りの勉強会をしてほしい」と相談されたことがあります。経営者Aは「資料の作り方がバラバラで読む気になれない」ことを強調していました。そこで、「資料の構成、色使い、フォントの種類、文字数の配慮」などのルールを決めて徹底し、一般的に見て分かりやすい資料作りができるようにしました。
その結果、経営者Aも資料が改善されたと感じてくれましたが、不満は解消されませんでした。というのも、問題は資料の見やすさではなく、「社員の伝え方や伝える内容」であったと気付いたからです。そこで、次は「話し方や情報の整理術」についての勉強会もすることになりました。
この事例のようなケースは珍しくありません。ですから、経営者の皆さんは、
合格ラインとなる良いプレゼンの「要件定義」
をして、社員に伝えなければなりません。ゴールが曖昧なままでは、いつまでたっても組織のプレゼン力は向上しません。
3 熱量のある社員を選抜する
早速「要件定義」をしていきたいところですが、ここで課題になるのが「人」です。プレゼンを極端に分けると、
- 綺麗な資料で、トークもスムーズ。だけど、表面的で冷たいプレゼン
- 武骨な資料で、トークも“噛(か)み噛み”。だけど、すごい熱量が伝わるプレゼン
といったようになります。ケースバイケースとはいえ、筆者の経験上、
リアルのビジネスで通用するのは後者のプレゼン
です。すごいテクニックがあっても熱意が伝わらなければ、相手の心の琴線に触れることはできないということです。
そして、テクニックについて学ぶ機会はいくらでもありますし、要件定義も簡単です。しかし、プレゼンに熱量を込められるかどうかは社員次第となります。そのため、経営者は、
プレゼンを担当する社員を選抜
しなければなりません。
4 深掘りする力を養う
熱量のある社員を選抜したら、次は物事を深掘りする習慣を身につけましょう。熱量があっても、話していることが独りよがりだったり、視点が低かったりすると、聞いているほうはきついです。聞き手に配慮できない社員はこのようになりがちです。
改めて定義すると、プレゼンにおいて深掘りする力とは、
どうすればこちらの意図が相手に伝わりやすいか
を考えることです。未来も見据えて、こちらの形と相手の形を合わせるために、双方の利益を深く考えなければなりません。
深掘りする力を鍛える方法として、
文章の報告書を作る
方法があります。世間的には「効率化」が重視され、必要な情報が箇条書きにされた資料が歓迎されています。しかし、箇条書きだと、なぜ、社員がその項目を選んだのか、社員の思考が明らかになりません。それに、書く側の社員としても、深く考えずに何となくポイントを箇条書きにすることで形にできてしまいます。
これが文章の場合はそうはいかず、自分の書いていることに矛盾がないかを確認したり、本当にそれが伝えたいことなのかを確認したりして、物事を深く考えます。このため、文章の報告書で深掘りする力を鍛えることができ、実際、これを取り入れている会社もあります。
5 実践しながら擦り合わせる
あとはプレゼンを実践しながら、経営者の理想と社員の実態とのギャップを埋めていきましょう。経営者と全く同じ考え方をする必要はありませんが、
経営者と同じ問題に反応できるようになる。つまり、経営者に近い視点の高さと視野の広さを持つための感度を高める
ことが大切です。そのためには、経営者がクライアントなどと食事をする席に参加させ、そのような場でどのような話をしているかを聞かせることも重要です。
また、経営者が何を考えているのかを知ってもらうために、社内SNSに「社長チャンネル」(仮称)を開設し、そこに経営者の考えを投稿するのも一策です。
以上(2023年2月)
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画像:Chaay_Tee-shutterstock