書いてあること

  • 主な読者:「苦手」なことがなかなか克服できず、悩んでいる中堅社員
  • 課題:苦手なことは克服できないことだと思いんでいる
  • 解決策:できる人の話しを聞く。明確な評価基準を設けて克服していく

1 取引先の担当者との関係

課長との昼食を終えてオフィスに戻る途中、中堅社員のAさんは、偶然、取引先の担当者のBさんを見かけました。すると、課長は「こんにちは。Bさん!」と元気よく声をかけました。その後、雑談を交えながら、最近の業況や、自社製品に対する評価などについて話をし、笑顔で挨拶を交わしてBさんと別れました。

Bさんをはじめ、どの取引先の担当者とも、真剣な仕事の話だけではなく、ときには友人のような親しい雰囲気をつくりながら話をしている課長の様子を思い浮かべて、Aさんは課長に話かけました。

「課長は、お客様との関係づくりが上手ですよね。私は、何度もお会いしているお客様でも、固い雰囲気が抜けないんですよね。課長のようになりたいと思っているのですが……。性格的な問題もあるのか、なかなかうまくいかないんですよね…」

「私だって、Aさんとそれほど変わらないよ。率直にいうと、今でも人付き合いは得意だとは思っていないよ。でも、それは、努力次第でなんとかなるものだよ」。そういって、課長はAさんの様子をうかがっています。

Aさんは思いました。努力次第か…。でも、まずは、自分の性格を直さなきゃダメなのかな……。

2 得意・不得意は性格の問題?

さまざまな仕事をこなしていくと、自分にとって得意な仕事、苦手な仕事というのは、どうしても出てきます。苦手なことは克服していくように努力しなければなりませんが、その際に問題となるのが、自身の「性格」や「資質」です。

「この仕事は自分の性格には合わない」と考え、それを克服することを半ばあきらめてしまうことはないでしょうか。しかし、そのほとんどは、実は、単なる「苦手意識」の問題にすぎません。代表的な例は人付き合いです。人付き合いというと「社交的な性格か否か」など、性格や資質などによって得意な人、苦手な人が決まるように思われがちです。

しかし、場の雰囲気をつくるのが上手な人など、一見、人付き合いが得意そうな人でも、課長のように「今は違うが、以前は人付き合いは苦手だった」「今でも、人と話すのは得意ではない」という人は少なくありません。こうした人たちは、努力を重ねて人付き合いという苦手な課題を克服しているのです。

そこで、以下では、人付き合いを例に、苦手な課題を克服するためのヒントを紹介します。

3 得意な人に話を聞いてみる

一番の近道は、得意な人、特に「以前は、苦手だった」という人に、直接話を聞くことです。そうした人は、課題克服のため、試行錯誤を繰り返しながら、効果的な改善方法などを把握しているものです。

人付き合いであれば、「営業の際に、同行した上司が話をした順番、内容、話題などをメモしてまねするようにしていた」「営業訪問先を想定したロールプレイングを同期の仲間と毎日、行った」「話し方教室に通ってみた」「趣味のサークルに入会するなどして、人と話す機会を意識的に増やした」など、実際に取り組んだことや、効果の有無など、具体的な話を聞くことができます。そうした経験談は、自分がすべきことを考える際に参考になるはずです。

4 得意な人の行動を見て盗む

得意な人の行動を、継続して観察してみましょう。教えてくれたことを当の本人が実践している姿などを見ることで、自分がすべきことを、具体的にイメージしやすくなります。

また、得意な人は、すべてを言葉で教えてくれるわけではありません。無意識に行っていることなど、言葉では伝えきれないことはたくさんあります。こうした点は、数回見ただけでは分かりませんが、継続して見ていくと、その人の特長や行動パターン、うまくいっている秘訣など、多くの気付きを得ることができるはずです。

得意な人に聞いたことや、観察して気が付いたことをまねしてみるのも大切です。中には、「自分にはできない」と思うようなこともあるかもしれません。しかし、それらは、得意な人が実践していることなのですから、「できる・できない」などと思いを巡らすのではなく、「とにかくまねしてみよう」というスタンスで臨むことがポイントです。

5 明確な評価基準を設ける

自分が実践できているか否かを、簡単、かつ明確に判断できる基準を2つ、3つ設定します。苦手なことを克服するためには、少なからず、今までの自分の行動パターンを変える必要があります。そのためには、常に自分の行動をチェックしながら、新しい行動パターンを自分の中に定着させていかなければなりません。

例えば、人付き合いであれば「お客様と話す機会を増やす」といった曖昧な基準ではなく、「毎月1度はお客様を訪問する」「常に、相手より先に挨拶をする」といったように、「できた」か「できなかった」が一目で判断できる基準を設けるとよいでしょう。

自分で自分の行動を常にチェックできるようになると、できなかったときには「次は頑張るぞ」というモチベーションの源泉になりますし、できたときにはそれが少しずつ自信へとつながっていくものです。

そして、自分で決めたことができるようになったら、新たな基準を設けるようにします。そうすることで、次第に、課題を克服できるようになっていくでしょう。

6 苦手意識は早めに克服しよう

人付き合いに限ったことではありませんが、苦手意識を感じている課題は、早いうちに克服しなければなりません。先延ばしにしては、「お客様を前にすると過度に緊張してしまう→うまく話せない→ますます苦手意識が強くなる」といったような悪循環に陥って、克服することが一層難しくなってきます。もし、苦手意識を感じている課題があれば、積極的に克服していきましょう。

以上(2021年10月)

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画像:emma-Adobe Stock

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