近年、職場の上司や先輩(いわゆるオトナ世代)は、若手社員の言動を理解できないイライラ、腑に落ちないモヤモヤを抱えつつも、指導の際は「パワハラ」と感じさせないように、気遣いや遠慮が求められるようになりました。
そもそもオトナ世代が若手にストレスを感じる原因は、オトナの考えと、若手の行動とのすれ違いによるものがほとんどです。しかし、若手に対して「けしからん!」と怒ったり、「理解できない!」と嘆いたりしていたことを、冷静に分析するだけでスッキリすることもあります。

本連載は、拙著「イライラ・モヤモヤする 今どきの若手社員のトリセツ」を一部抜粋し再構成してお届けします。

  • オトナ世代が違和感をもつ若手社員の言動を具体的にピックアップ
  • ギャップやストレスの正体を分析
  • 円滑なコミュニケーションや適切な指導法を考察

という3ステップで、指導の妨げとなるストレス解消のヒントを探っていきます。

1 まずは1回、自分で考えてみてほしいんだけどなぁ……

オトナのイライラ・モヤモヤ
ある案件でデータ収集の仕事を頼んだら、「初めてなんですけど、どういうデータを調べたらいいんですか?」と返ってきた。こっちとしては、この案件を進めるのに必要そうなデータが何か、ってとこから考えてみてほしいわけで。最近の若いヤツって、とにかく答えを知りたがる。まずは1回、自分で考えてみてほしいのだが。

若者のホンネ
なんでもかんでも自分で考えるのって無駄じゃないすか? 答えがあるなら、それ先に教えてもらったほうが、シンプルに考えて絶対的に効率いいっすよね。

「フォークボールの握りは教えないよ。必要なら見て盗めばいいんだよ」

その昔、往年のプロ野球選手が新聞のインタビュー記事で、自分の決め球について、こう語っていた記憶があります。これは極端な例かもしれませんが、確かに、ひと昔前は、丁寧に仕事を教えてもらえることは少なかったかもしれません。

上司や先輩から仕事を振られるときも、「とりあえずやってみてよ」といった雑なオーダーがまかり通っていました。若手は先輩のやり方を見よう見まねでやって覚えていくのが、ある意味当然でした。

2 悩みの時間が成長につながる

もうちょっと考える習慣を身に付けてほしいんだけど……。すぐ答えを知りたがる今どきの若手社員への違和感。この原因は2つ考えられます。まずは、自分の仕事がはかどらないという、極めてシンプルなストレス。
一から十まで説明するのはめんどくさいし、言われたこと以上までちょっと気を回してほしい。ある程度雑な仕事の振り出しであっても、自分でなんとか対処してほしい。なんでもかんでも、やり方まで細かく教えていたらこちらの時間がもったいないし、なんなら自分がやったほうがよっぽど早い。そういったイライラ・モヤモヤです。

そしてもう1つは、「仕事とはそうして覚えていくものだ」という自分たちの仕事習慣からくるストレス。その仕事のゴールに対する想像力、言われたこと以上のアウトプット、あえての試行錯誤。こうした仕事の進め方が重要だと思うのは、自分たちが、そうやって成長してきたという経験則があるからです。若手に育ってほしい。そう感じるからこそ余計にイライラ・モヤモヤしてしまうんですよね。

若者の成長のためによかれと思って、あえて情報を与えることなく仕事を振り出す。悩みの時間や立ち止まって考えることが、成長につながる。だから、すぐに答えをほしがるな。まずは1回、自分で考えてみてほしい。こんな気持ちを抱きながら……。しかし、こうした気持ちは残念なくらい一方通行です。

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3 任されたいのに指示待ちって、どっちなんだ?

オトナのイライラ・モヤモヤ
単純作業をお願いしたときは、だいたいヤル気がなさそうな顔してる。だからって、ちょっとプランを考えるような仕事を任せてみると、やり方を細かく教えてほしいとか、マニュアルとかテンプレートってありますか、だって。「任されたいのか指示してほしいのか、どっちなんだよ?」と言いたくもなるよ……。

若者のホンネ
全部、手順が決まってるとヤル気が出ない。マニュアル通りの作業しかないと、自分じゃなくてもいいって思っちゃう。だってマニュアル読めば誰だってできるし。だけど、それとテンプレを使わないことは違う話じゃない? 考えなくていいところは省いて、考えるべきところに時間を割くべきだと思う。

任されたいのに指示待ち。言われた通りの作業はやりがいがないとか言うくせに、考えてみてと言ったらマニュアルやテンプレが欲しいと言う。オトナから見たら矛盾に満ちています。
しかし若者にも言い分があります。往々にしてあるのが、オトナ世代のマイクロマネジメント。仕事を任せたと言うわりには、若手を信頼しきれないオトナも多く、細かい進捗管理に走ったり、たくさんの手直しを入れたり、といったケースが少なくありません。みなさん、思い当たること、ありませんか。筆者にも、経験あります。

4 マニュアルは高速道路

「考えてみてって言われたから、自分なりに一から考えて企画を出したこともあるけど、いろいろ直されて、結局ほとんど上司の考えになった……」。オトナのマイクロマネジメントによって、多くの若者がこういう経験をしているわけです。
オトナには、マイクロマネジメントによる過干渉の意識はありません。自分たちだって、知恵を絞って考えた企画やアイデアが散々卓袱台返しされてきた。そんな中で育ってきたからです。むしろ、こうしたマネジメントを乗り越えてきたからこそ成長できたのだという自負さえあります。

しかし、合理的な若者は違います。せっかく考えたのに、結局、上司の考えた答えに行きつくのなら、考えるだけ無駄。「手直しされた内容を考えるのに費やした時間と手間ってなんだったの?」と思うのです。
自分の考えた結果が成果物にちゃんとつながることだけに集中したい。だから考えなくていいところや、考えても無駄なところは省いて、考えるべきところに時間を割くべきだ。これが今どきの若者の仕事観なのです。
マニュアルやテンプレートは、彼らにとって考えなくていいところをショートカットできる高速道路のようなものなのです。高速道路があるのに乗らないなんて非合理的。このように例えると、ちょっと理解できませんか。

5 イライラ・モヤモヤ解消法

極端なくらい時間の無駄を排除しようとする合理主義者に、立ち止まって考えることのメリットを感じてもらうのは、なかなかハードルが高いと言わざるを得ません。なぜなら、そのメリットは少しずつ蓄積されていく経験値であるため、若者が実感するのはかなり先のことだからです。いつの話してるんですか? となってしまいます。

ケースバイケースで、ある程度の情報やヒントを提示しながら、考えてもらうべきところに注力してもらう。こうした仕事の振り方も令和流なのではないでしょうか。結論から言うと、「8割テンプレ・2割余白」で仕事を任せるくらいがベストです。これだと、すぐにマニュアルやテンプレを欲しがる若者の価値観にも合致しています。

まず型を教えてあげることは不可欠。書類のテンプレやひな形のようなものを渡してあげましょう。そして、ちょっと自分なりに工夫しても大外れにはならないよ、と示してあげます。無駄なやり直しが大嫌いな若者に、答えを示しつつ工夫する余地も与えるという作戦です。
要するに、彼らが欲しがっている答えというのは、ベースの「型」なのです。言う通りにしろと命令されたいわけではありません。難しく考える前に「8割テンプレ」は提供してしまいましょう。2割の余白が、若者にとっては貴重なアイデンティティの発露。どう使って型を破るかは若者次第です。

以上

※上記内容は、本文中に特別な断りがない限り、2022年10月5日時点のものであり、将来変更される可能性があります。

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