現在の新卒採用市場において、インターンシップは「活動の起点」になりました。本連載では、はじめてインターンシップに着手しようという中小企業の視点に立って、“超現実的かつ効果的な”インターンシップの導入ノウハウについて解説しています。

いよいよ就活本番前。年明けの1月〜2月はもっともインターンシップが活況になる時期です。ここまでお伝えしてきたノウハウをベースに、超現実的インターンシップを実施するタイミングがやってきました。しかし、いくら省エネのインターンシップを実施できたとしても、それが採用につながらないのであれば、まるで意味がありません。
第5回の本稿では、インターンシップを実施した後、採用につなげていくノウハウについてお伝えしていきます。インターンシップに参加してくれた学生が、無事に採用選考ルートに乗る。さらには内定、内定受諾につながっていく。この成功プロセスについて、具体的にご紹介していきます。インターンシップにかけたこれまでの労力が、それこそ水の泡にならないためにも、ぜひご一読ください。

1 フォローというつなぎ止め策

7月~8月のサマーインターンシップは、選考開始まで約半年間あります。もちろん、できるだけ早く学生と接触するのに越したことはないのですが、時間の経過と共に、「選考を受けよう!」という熱も下がりやすくなります。

一方で、説明会や選考を間近に控えた1月〜2月の直前期のインターンシップは、熱が下がりきる前に選考に呼び込むことができます。半年間のつなぎ止めに労力をかける必要がありません。直前に接触し、一気に採用につなげていく。ここが「超現実的」たる所以です。

とはいえ、直前期インターン参加で興味関心を持ってくれた学生が、必ずしもその後の選考フローに乗ってくれるとは限りません。学生一人あたりのインターンシップ平均参加社数が5.79社という時代です(リクルートキャリア「就職白書2021‐」より)。
当然ながら、学生が持つ情報もどんどんアップデートされていきます。選考を受けたいと感じた企業の顔ぶれが移り変わっていくのは、むしろ自然の成り行きといえるでしょう。

そういった意味では、いかに直前期であっても、学生の気持ちをつなぎ止め、リテンションし、選考を受けるルートに乗ってもらう「フォロー施策」が必要となります。インターンシップから採用成果を上げている企業は、このフォロー=つなぎ止め施策をしっかりと設計しています。

2 1Day×Webインターンのあとは対面接触

本連載では、できるだけ労力をかけずにたくさんの学生と接触できるといった観点から1day×Web形式のインターンシップを推奨しました。いわばインターンシップは母集団形成の手段という割り切りです。
オンラインで会って採用選考に進んでほしいと思った学生に対してのフォローは、やはり対面が有効。学生の好意度を高めるためにも、熱量を伝える必要があるからです。
コロナの影響で、オンラインイベントが当たり前となる中、リアルイベントはプレミア化しており、学生にとっても特別な体験につながりやすくなっています。コロナの感染状況に左右されますが、オンラインから対面への流れ。ある意味で、これはワンセットとして捉えるべきかもしれません。

代表的なのは、

インターン生限定社員座談会、インターン生限定食事会(もしくは飲み会)、希望者全員にOB・OG訪問、個別フィードバック会など

です。インターンで伝えきれていない自社の魅力をコンテンツに落としこんでセミナーを実施する企業、インターンでの様子、もっと成長してほしい点などをフィードバックする個別面談を行う企業など、目的に応じて企画内容もさまざまです。

もっともダイレクトなフォローは「選考優待」。インターンシップに参加してくれた学生には、説明会、ES、適性検査、1次面接などを免除するといった特典をつけることです。ここ数年で、インターンシップを実施している企業様の多くが、選考優待やインターン生限定のイベントを企画しています。
また、ある人材サービス企業の23卒学生向けの調査では、インターンシップ先を選ぶ基準として、「インターン参加後に選考などで優遇されるかどうか」を重視している学生が56.8%に上るという結果も出ています。

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3 SNSを駆使したオンラインフォロー

インターネット上で継続的にコミュニケーションを図るフォローについても解説しましょう。コロナ禍の影響を受けて、オンラインで継続したコミュニケーションをとるフォローも増えています。

もっとも一般的なのはオンライン社員座談会です。オンラインが主流になっているからこそ、より社員の生の声を聞きたいという学生のニーズにもマッチします。物理的な距離の関係で対面座談会では参加が難しかったエース社員に参加してもらったり、チャットを通してより気軽に質問をしやすくしたり、オンラインならではの工夫を盛り込むことで、対面同様の満足度を提供できます。

説明会やインターンシップでは伝えきれない情報をタイムリーに深く伝える手段として、「採用ブログ」を運用する企業も増えています。また、時期をみながら、学生のニーズに合った情報を「メルマガ」で配信するというのも手です。インターンシップ開催直後であれば、業界、会社、仕事をさらに知ってもらうような情報、就活本シーズンになったら、就活のアドバイスなどを送ります。

その際、学生にとって親和性の高いSNSを使ったフォローも有効です。例えば、Instagramなどを活用し、ブログより手軽に視覚的に伝える手法を取り入れている企業も多くあります。更新性のあるコンテンツをSNSでインターン参加学生に見てもらうことで、つながりを維持できるのも大きなメリット。 
中でも圧倒的に学生の利用率が高い、LINEでのコンタクトがおススメです。インターンシップを通して、自社のLINEグループに入ってもらい、LINEを通して情報を提供する。うまく活用している企業は、メッセージの伝達のみでなく、先輩情報にアクセスできたり、各種セミナー予約もLINEで完結できたりといった工夫もしています。
メルマガの配信もLINEを使えば一方通行にはなりません。学生からの反応をもらうコンテンツをLINEに入れることで、双方向のメルマガになります。

4 内定承諾を得るために

こうしてインターンシップから採用選考ルートに乗ってもらうことができて、無事、内定出しまで進んだとします。しかし、内定者からの承諾を獲得することが非常に難しい時代になってきました。
2021年の5月1日時点の内々定取得率は6割弱というデータがありました。二人に一人は内々定を取得しているという状況で、内定保有者の過半数は今後も就職活動を行うと回答していました。
このような状況で学生から内定承諾を引き出すためには、内定者に対するフォロー施策のアップデートが不可欠となってきます。

では、内定者フォローを行うのに適した時期はいつなのでしょうか。もちろん内定を出した後のフォローも重要ですが、内定を出した後から始まる内定者フォローでは学生の志望度を上げることは難しくもあります。学生がその企業に最初に入社したいと思ったタイミングは、実は選考期間中なのです。

この期間も、インターンシップから採用選考ルートに乗ってもらうために活用したSNSによる情報提供を継続しましょう。繰り返し接触することで好感度や印象が高まる単純接触効果(=ザイオンス効果。5回以上接触すると急激に好意度が高まるとされる)と呼ばれる心理的効果が働き、学生の志望度を上げることにつながります。

5 不安を払拭するフォロー

もし選考中に十分なフォロー施策を実施することができず内定を出してしまったという場合は、人事担当者によるフォロー面談も追加で行っていただくほうがいいかもしれません。
内定を出してから内定承諾に至る時期は、業務に対する不安を抱えている学生が多く、イベントやフォロー面談の際に、不安を払拭してあげることが効果的です。
特に「社員との交流会」や「他の内定者との交流会」を希望する学生が多いため、この機会に実施することをおススメします。

この機会には、

  • 他社の選考状況
  • 自社志望度の変化
  • 不安に感じるポイント

といった3点について、必ず確認してください。
このフォロー面談の際に、煮え切らない反応や明確な答えが返ってこないようでしたら、ここからの巻き返しはかなり厳しいといえるかもしれません。しかし、ここで諦めては元も子もありません。可能な限り、なぜ煮え切らないのか、なぜ志望度が低くなったのかを具体的に確認し、改善に向けて動いてみてください。

ここまで選考中・内定フォローの重要性と施策についてご紹介しましたが、最後にもう一点アドバイスがあります。それは、選考回数を増やすこと。採用の開始時期が早まり、選考から内定承託までの時期が遅くなる。こうした採用の長期化傾向においては、選考フローを増やすことが有効だという認識が広がりつつあります。実際に2022年卒から2023年卒にかけて導入する企業も多く、新卒採用のトレンドになりつつあります。
接触回数が増えることで好意度が増すことは、すでにお伝えしました。しかしそれ以上に選考回数を増やすことには効能があるのです。近年の学生は承認欲求が強いといわれます。数多くの選考を乗り越えて内定を勝ち取ったという中で、彼らの承認欲求がより満たされていく。この承認欲求の充足が自社への好意度に直結していくからです。

学生の活動時期が早期化し、採用活動のオンライン化が広がっていく中、学生に対するフォロー=つなぎ止め施策は不可欠になってきました。インターンシップから採用選考につなげるフォロー施策。内定出しから内定受諾につなげるフォロー施策。ここがインターンシップを起点としながら採用成功を勝ち取る上でのラストピースです。ぜひ、自社にあった取り組みを検討してみてください。

以上

※上記内容は、本文中に特別な断りがない限り、2022年1月26日時点のものであり、将来変更される可能性があります。

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