1 熱中症対策は「予防」が肝心!
最近はテレワークをする企業も減ってきましたが、真夏のオフィスでは個人に合わせて細かな室温調整をすることが難しい場合もあります。また、今年も猛暑になる可能性が高く、営業や屋外での作業などに従事する社員には、常に熱中症のリスクが付き纏います。
なお、2025年6月1日から労働安全衛生規則が改正され、会社に対し、
- 作業者に熱中症の自覚症状があるときや、作業者が熱中症の疑いがある同僚などを発見したときは、会社にその旨を報告させるよう体制を整え、周知すること
- 熱中症のリスクがある作業を行う場合、あらかじめ作業場ごとに、症状の悪化を防ぐための措置やその手順を定め、周知すること(体を冷やす、医師の診察を受けさせるなど)
が義務付けられます。違反した場合、労働安全衛生法により、
6カ月以下の拘禁刑または50万円以下の罰金
の対象になります。今年からは例年以上に熱中症対策を徹底して、夏場の業務に取り掛かりましょう!
この記事では、職場で使用できる熱中症対策グッズについて、最新の動向を交えて紹介します。具体的な分類は、以下の図の通りです。
熱中症対策グッズは、水分や塩分を補給するもの、冷感を与えるものなどさまざまです。会社で支給したり購入費用を補助したりして、熱中症になりにくい環境を整えるように社員に指示しましょう。
2 水分や塩分を補給するグッズ
熱中症対策の基本は、こまめな水分補給です。ただし、大量に汗をかいたときは体内の塩分やミネラルも失われるため、水分と併せて塩分の補給も必要です。そこで、次のようなグッズを用意しておくとよいでしょう。
1)目盛り付きのタンブラー・ウォーターボトル
一般的に、夏場の水分の摂取目安は1.2リットル/1日程度とされていますが、仕事中に自分で摂った水分を細かく把握していることは稀でしょう。
最近は自分がどれくらい水分を摂っているのか一目でわかる、目盛り付きのタンブラーやウォーターボトルなどが販売されています。容量は1リットル以上のものが多いので、
デスクの上に置くようにすれば、あまり水分を摂っていなさそうな社員に水分補給を促すことも出来る
でしょう。
2)塩分を含む食品
汗をかく状況で水分を補給する際には、一緒に塩分も補給するように指導しましょう。水分だけを摂取すると体内のミネラルのバランスが崩れるため、熱中症になるおそれがあります。
例えば、塩分は、塩あめ、塩分タブレット、梅干しなどで補給できます。また、スポーツドリンクは水分と塩分を同時に補給できるので便利ですが、糖分が多量に含まれているケースもあるので、飲み過ぎには注意です。最近は糖分が控えめなものも販売されていますので、恒常的にスポーツドリンクで水分を摂取する場合は、そちらの導入も検討しましょう。
3 風を送るグッズ
風通しが悪い場所では汗が蒸発しにくく、体温の調節に無効な発汗が増えて脱水状態に陥りやすくなります。そこで、空調設備の整っていない場所で社員が作業するときには、次のようなグッズを用意しておくとよいでしょう。
1)空調服
腰や脇に小型のファンが付いた服です。長袖のジャケットから袖のないベストまで、さまざまな製品があります。専用のウエア、ファン、バッテリーをそろえる必要がありますが、空調服を着ることで、エアコンの使えない場所でも涼しく過ごせます。
空調服の中に着るインナーは、できるだけ吸汗性、透湿性、速乾性の高いものを選ぶことが重要です。綿などの汗が乾きにくい素材のインナーを着ていると、体が冷えすぎてしまい、逆に体調が悪くなる場合もあるので注意しましょう。
2)扇風機
首に掛けたり、手に持ち歩いたりして使える小型の扇風機は、通勤中やオフィスでの細かな体感温度の調整方法として主流になってきました。
ただし、
気温が高く乾燥した環境で扇風機を使うと、汗が体から熱を奪う前に乾いてしまい、体温が上がり続ける恐れがある
ことには留意が必要です。そのため、扇風機を使用する際は、水を霧状に噴射するスプレー、濡れたタオルなどを併せて用意するようにしましょう。
4 冷感を与えるグッズ
首元、わきの下、足の付け根など、太い血管が体の表面近くを通るところを冷やすと、効率良く体温を下げることができ、熱中症の予防に繋がります。そこで、次のようなグッズを用意しておくとよいでしょう。
1)ネッククーラー
首元を冷やし、体温の上昇を抑えるネッククーラーは熱中症対策にも役立ちます。中に保冷剤や冷却ジェルを入れて使うスカーフのようなタイプや、USB端子につないで動く電動のタイプなどさまざまなものがあるので、テレワークや通勤などのシーンに合わせて使いやすいものを選ぶとよいでしょう。
2)ミスト冷房
水を細かい霧状にして噴出する装置です。周辺を水で濡らすことなく身体を冷やすことができます。屋外や工場で使用する大型のものに限らず、USB端子につないでデスク周りで使える小型の製品もあります。
3)アイスパック(氷のう)
アイスパック(氷のう)は、休憩時などに額や首筋に当てて体のクールダウンを図ることができるほか、熱中症の症状が出た社員への緊急対処としても使用できます。
最近は魔法瓶構造になっているアイスパックも発売されており、従来のものより長時間、冷たさを維持することが出来るので、職場に多めに常備しておくと、いざというときに安心です。
4)接触冷感マスク
業務中にマスクを着ける場合、接触冷感の糸を使用したり、ミントやメントールなどの爽やかさを感じる成分を生地に配合したりしたものを使うとよいでしょう。
なお、高温多湿の状況でマスクを着けていると、皮膚からの熱が逃げにくくなったり、喉が渇いていることに気付かなかったりすることから、体温調節がしづらく、熱中症になるリスクが高まります。屋外で人と2メートル以上の十分な距離が確保できる場合や、会話を行わない場合は、マスクを外して休みましょう。
5 危険時に警告して知らせるグッズ
熱中症の初期症状は目まいやふらつきなど、「単に疲れているだけ」と誤解しやすいものが多く、対処が遅れてしまうことがあります。管理者がこまめに社員の体調をチェックすることが一番ですが、見た目に表れなかったり、業務が忙しかったりするときには、社員の体調不良に気が付けないケースもあるでしょう。
そこで、熱中症の危険が高まったことを、客観的に把握できる状況をつくり出すことが必要です。次のようなグッズを用意しておくと、熱中症が重症化する前に対処できます。
1)ウエアラブル端末
ウエアラブル端末は、リストバンドや腕時計などの機器を体に取り付けて脈拍を測り、熱中症の危険がある場合にアラームやバイブレーションなどで通知することが可能です。利用者本人だけでなく、管理者側(社内の健康管理の担当者など)で異常を検知できる製品もあるため、異常を確認した管理者が利用者と連絡を取れば、重症化する前に健康への影響を防ぐことができます。
2)温湿度計・センサー
カバンなどに取り付けたり、屋内に据え置いたりして使用します。屋外で使用する場合、熱中症の危険性はWBGT値(暑さ指数。気温と湿度に加えて、日射や地面からの照り返しによる熱を含めた数値)で測ることができますので、リスクの高い環境を早めに察知し、対策を打つことができます。
3)スマートフォンアプリ
その日の気温、湿度、気象条件などを基に熱中症の危険を通知します。アプリによっては時間単位や地域を指定して熱中症の危険を確認でき、また無料で提供されているものもあります。
始業前や休憩ごとなどにチェックし、その日のリスクに合わせた熱中症対策を講じるとよいでしょう。
以上(2025年6月更新)
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画像:KUSAMURA Aki-Adobe Stock