企画を担当する中堅社員のAさんは、自分の主張を述べますが、自分の意見に固執することが問題です。今日の会議でも、Aさんは自分の考えを一気にまくし立てた後、「ふぅ~」と一息ついて椅子に深々と座り込んでしまいました。

それでも、参加者のうちの何人かはAさんの意見に興味を持ったようで、Aさんとディスカッションしようとしました。しかし、Aさんはうまく意見をやりとりすることができません。そればかりか、何だかんだと言いながら、結局、最後は自分の意見を押し通そうとしてしまいます。

深まらない議論に業を煮やした参加者は、Aさんとのディスカッションを諦めてしまいました。Aさんと一緒に会議に参加し、一連の動きを見ていた課長がAさんに言いました。

「Aさんのアイデアは、他の人の意見を取り入れたらもっとよくなるよ。そのチャンスがたくさんあったことに気付いてた?」

「1×1」は幾つになりますか?

人とディスカッションして知恵を出し合うと、新たな発見があります。そのまま意気投合して新しいビジネスが始まることもあります。「1×1」の結果が10にも100にもなるという、“プラスサムゲーム”のイメージでアイデアが広がる感覚です。

しかし、ディスカッションが苦手な人は“ゼロサムゲーム”のイメージで捉えています。議論をしているだけなのに、「相手に“マウント”をとられないようにしたい」「言い負かされないようにしたい」と、勝負のように考えてしまうのです。

“ゼロサムゲーム”のディスカッションから、ビジネスの可能性が広がることはほとんどありません。また、ディスカッションを、正しいか間違っているかの証明、あるいは勝負と捉えている参加者がいると、その時点で議論が停滞して前に進みません。

こうした失敗をしないように、中堅社員は“ディスカッション上手”にならなければなりません。以降で、そのために重要となるポイントを紹介していきます。

ディスカッション上手になるために

1)まずは、己を知る

自分と相手の意見がかみ合わない主な理由は次の通りです。

  • 向かっている方向が違う
  • 向かっている方向は同じでも、持っている情報が違う
  • 最初からディスカッションするつもりがない

ビジネスでは、まれに3.のケースに出くわします。その場合は“ツイてなかった”と諦め、早々にディスカッションを打ち切るしかありません。“損切り”の感覚です。

大切なのは、1.と2.の場合です。これらは、正しいか間違っているかを証明するという“戦闘モード”でいると、なかなか見えてこないので、まずは冷静になって、ディスカッションの場を俯瞰(ふかん)してみましょう。その際、「自分の主張は何だっけ?」と再確認してみると、相手との違いが分かってきます。

もし、1.の問題でそもそもの方向性が違う場合、「右か左か」の打ち合いをするのは時間のムダなので、双方で歩み寄れる余地があるのかを確認するようにします。

2)相手の発言を自分に「入力」する

ディスカッションが苦手な人の特徴は、相手の発言を「うんうん」といかにも聞いているふうを装い、頭の中では次に何を言うか考えていることです。つまり、最初から相手の言葉など耳に入っていないわけなので、よい結果など出ないのです。

こういう人は、前述した2.のケースに当てはまり、損をします。向かっている方向が同じで、ビジネスの広がりが期待できる絶好の機会なのに、相手が持っている情報と自分が持っている情報とを擦り合わせることができないため、物別れに終わってしまうのです。

実際のビジネスでは、一方が正しくて、もう一方が間違っているということはほぼありません。大切なのは、自分の価値観を相手に伝えつつ、相手の発言からその価値観を探ることなのです。

「正解」のバージョンアップ

多くの会社では、「上司が言うことが正解」という感覚が根付いているかもしれません。権限や役職が正解と密接に関係している状況です。そうした環境に慣れている社員は、ディスカッションにおいて、発言の内容よりも、“マウント”をとって自分の立場を上にすることで自分の正当性を確保しようとしがちです。

しかし、技術も考え方も目まぐるしく進化する昨今、経験がちょっと長いだけで、その人の発言が常に正解であるはずがありません。その気になれば、360度、至る所から正解を導き出せる時代になったのです。

今、中堅社員に求められるのは、次の2つのことです。

  • 慣習にとらわれない柔軟性
  • 具体的に変革を進める勇気と行動

これができる中堅社員は、さまざまな知恵を取り入れ、具体的なビジネスに結びつけていくことができるはずです。「ディスカッションを、正しいか間違っているかの証明、あるいは勝負」などと小さく考えてはいけません。部下の“異見”を自分への反乱と捉えるのも問題外です。

視野を広く持ってください。会社の未来を切り開くのは中堅社員の皆さんです。

  • 中堅社員の皆さんにとって、自身の、そして会社の「あるべき理想の姿」とはどのようなものでしょうか?

その理想の姿を実現するために活動していきましょう!

Point

  • 中堅社員は、視野を広く持つ。「あるべき理想の姿」を考え、それを実現するために活動すべし。
  • 会社の未来は中堅社員にかかっている!

以上(2019年8月)

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画像:Eriko Nonaka

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