書いてあること

  • 主な読者:チーム力を高めて結果を出したい管理職
  • 課題:結果ばかりが気になってしまい、チーム全体の雰囲気づくりが疎かになっている
  • 解決策:管理職が率先して動き、良いノリをつくってチームを勢いづける

1 雰囲気を悪くしているのは誰だ?

季節外れの人事異動を命じられた中堅社員のAさん。営業部から企画開発部への異動です。企画開発部でAさんが担当するのは新規事業の開拓です。とても楽しそうな仕事に、Aさんはワクワク感を抑え切れません。

しかし、企画開発部に配属されて数日勤務してみると、異動前に抱いていたイメージと現実が全く違うことを知ります。一言で言うと、企画開発部は“ノリ”が悪いのです。そして、その原因は企画開発部のB部長にあります。

B部長は後ろ向きの性格なうえ、機嫌が悪くなるとすぐに態度に出します。また、オンライン飲み会などのイベントにもほとんど参加しません。こうしたB部長が発する良くない雰囲気がメンバーにも波及し、企画開発部全体をどんより暗いものにしています。

企画開発部は、今年度末に新規事業の計画を社長にプレゼンテーションします。今のタイミングは、新年に向けてメンバーを勢いづける大事な時期です。本来ならばB部長がスピーチし、力強い言葉でメンバーを鼓舞するべきです。しかし、B部長にそうした考えはないようで、いつもどおり振舞っています。「こんな環境で仕事をしても楽しくない……」。Aさんは、ビジネスにおけるノリの大切さを実感し始めていました。

2 ビジネスにおけるノリの効果

一般的にノリというのは、そのときの雰囲気や流れに乗って勢いをつけることを意味します。調子づいて羽目を外すなど、「悪ノリ」の意味でも用いられます。

悪ノリは、ビジネスでも発生します。調子に乗って、言わなくてもいいことを言ってしまったという経験は誰にもあるでしょう。また、相手のペースにまんまと乗せられて、不利な条件を受け入れてしまうことがあるかもしれません。こうしたことは、特に権限のある管理職は、避けなければなりません。

逆に、管理職は、「良いノリ」を率先してつくるべきです。例えるなら、波に乗って組織に勢いを与えるイメージです。例えば、新しいチャレンジなど会社やチームの状況、新年度、年末年始などの時期などを踏まえつつ、「ここだ!」というときに自らの言葉で波を起こし、チームを乗せるのです。

うまく波に乗ることができれば、チームは明るい雰囲気で満たされ、活力も生まれます。メンバーは仕事を楽しむことができるので、パフォーマンスも高まります。マネジメントに優れた管理職は、こうしたビジネスにおけるノリの大切さを理解しており、良いノリをつくる努力を惜しみません。

3 率先垂範で明るい組織をつくる

ノリの悪い管理職が自分を変えようとする際に確認したいのは、「管理職はチームを任された『公人』であり、常に周囲から見られている」という認識です。

一つの例を挙げてみます。近年は社員満足度を高めるための仕掛けをする会社が増えています。まだリアルで集まれたころの例ですが、ある会社がこうしたイベントを開催し、余興でダンスをすることになりました。ここで役員や管理職のノリが分かれました。「よし、やろう!」と積極的に参加するグループと、「こういうの苦手で……」とダンスの輪から遠ざかるグループが出てきたのです。

イベントの参加者は、役員や管理職がどのように行動するかを観察しています。ダンスが下手でも関係ありません。社長以下、管理職は全員参加で、楽しくダンスをするのが好ましい姿です。そうした姿を見たイベントの参加者は、「明るくて一体感のある会社」だと感じるからです。これは会社全体のイベントの例でしたが、部門単位でも本質は同じです。

4 会議のノリを悪くする管理職

管理職が積極的なのは好ましいですが、注意しないと意図せず周囲を畏縮させてしまうことがあります。ありがちなのは会議です。会議で管理職が発言するのは良いことですが、誰も発言を制しないのをよいことに “独演会”になっていないでしょうか。また、管理職は“少しだけ”厳しく言ったつもりが、周囲が過剰に反応してしまい、恫喝(どうかつ)と受け取られてはいないでしょうか。

周囲がどう受け取るかは、普段の管理職のノリで違ってきます。日ごろから明るく前向きな姿勢を保ち、部下に意見を出させ、真剣に議論することが大切です。このような管理職の言葉なら部下も耳を傾けるでしょうし、少々厳しくされたくらいで、恫喝されているとは感じないでしょう。

5 ノリが仕事を楽しくする

「孫子」の中に「激水のはやくして石を漂わすに至るは、勢なり(兵勢篇)」という一節があります。管理職なら、大きな岩をも押し流すほどの勢いを自分のチームに取り入れたいと考えるはずです。特に、既存のビジネスが絶好調なとき、新規事業など新しいことにチャレンジするとき、逆境を克服するときなどの「勝負どころ」ではそうでしょう。

そして、勝負どころでチームが“戦う態勢”になれるか否かを決める要素に、管理職のノリがあります。そのため、管理職は良いノリをつくらなければならないのです。とはいえ、良いノリが突然生まれ、チームに定着するわけではありません。管理職が日ごろから努力を重ねる必要があるのです。

以上(2021年8月)

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画像:milanmarkovic78-Adobe Stock

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