書いてあること
- 主な読者:パートの採用を予定している企業の経営者、人事担当者
- 課題:これまでパートを採用したことがなく、採用活動を進めるポイントが分からない
- 解決策:パートが必要な理由や配置先、募集するターゲットなどを明らかにした上で、募集方法や面接時のポイントなどを押さえる
1 パートを採用する際の基本ポイント
1)パートが必要な理由と配置先を明らかにする
パートに限らず、企業が人材を採用するのには理由があります。パートを募集する際も、「新店舗の出店に伴ってホールスタッフが必要」など、パートが必要な理由と配置先を明らかにした上で、本当にパートが必要かを確認することが重要です。
パートであっても、採用活動やその後の教育に時間とコストが掛かります。そのため、採用活動は慎重に、無駄なく進めましょう。
2)配置時期と人数を明らかにする
パートの配置時期と人数を明らかにします。募集から採用までの期間は短くとも3カ月は掛かるでしょう。また、募集人数が多い場合は、求人誌や求人サイトヘの掲載、店頭チラシの掲示など複数の方法で募集しなければ、応募者の人数が集まりません。そのため、パートの募集は専任の採用担当者を配置して、計画的に実施することが重要です。
3)募集するターゲットを明らかにする
パートの中心は、近隣の主婦や通学の途中に立ち寄ることができる学生です。パートが担当する職務内容によっても異なりますが、オーソドックスなターゲットは主婦です。一般的に学生よりも社会経験が豊富だからです。
また、昨今は働き方改革の影響で、副業・兼業をすることが社会的に容認されてきており、会社員が本業と掛け持ちでパート勤務を希望するケースも珍しくありません。パートというと、正社員の補助的なイメージが強いかもしれませんが、こうした人材は即戦力として、正社員と同等以上の働きが期待できるケースもあります。
4)賃金を明らかにする
パートの賃金は時給制が一般的です。時給は近隣の相場などを参考に決定します。パートタイム労働法では、賃金は正社員などとの均衡待遇を図ることが労働条件に含まれており、「パートである」という理由だけで正社員よりも低い賃金を支払うことはできません。簡単に言うと、パートに支払う賃金のうち基本給や賞与、役職手当など職務に関連の深いものについては、その職務内容や成果、意欲などを勘案して均衡待遇を確保することが求められます。
パートの人件費を抑える場合は、パートが担当する職務を正社員とは明らかに異なる単純作業などの業務に限る必要があります(ただし、パートであるからといって、賃金を不当に低く設定してよいわけではありません)。
2 募集方法を検討する
1)求人誌への掲載
求人誌への掲載は最も一般的な募集方法であり、主婦や学生など幅広い属性の応募者に求人情報を伝えることができます。また、これまでは有料求人誌が中心でしたが、最近はフリーペーパーが求人媒体として定着してきています。
2)求人サイトへの掲載
フリーペーパーと並び、近年、大きな注目を集めている募集方法が求人サイトです。求人サイトにはパソコン用と携帯電話用があり、特に携帯電話用の求人サイトは、手軽に利用できることから広く普及しています。
3)店頭チラシの掲示
「パート募集」のチラシを内製して店頭などに掲示する方法です。これは、特別な費用が掛からない手軽な募集方法といえますが、求人誌や求人サイトに比べると求人情報の伝達先が制限される点に注意が必要です。
店頭チラシには、チラシを見つけた時点で応募できるという特徴があり、「いつからかは決めていないが、パートとして働こう」と考えている主婦などの応募者が就職を決意するきっかけとなります。そのため、店頭チラシは住宅地にある飲食店などがパートを募集する際に大きな効果を発揮することがあります。
4)パートからの紹介
求人誌や求人サイトへの掲載など、主なパートの募集方法と特徴について紹介してきましたが、この他の募集方法として「紹介」を検討するとよいでしょう。
これは、既に働いているパートから友人・知人を紹介してもらう方法です。企業から友人・知人の紹介をお願いされたパートの多くは、「真面目な人」を紹介してくるものです。また、紹介によりパートになった人は、既に働いているパートと知り合いであるため、採用後に職場でのコミュニケーション不和などの問題が起こりにくい点もメリットです。
3 面接時の基本ポイント
応募者が集まったらいよいよ面接です。面接では、企業が応募者の能力ややる気を見極めるのと同時に、応募者も職場の雰囲気を観察しています。明るく気持ちの良い態度で面接に臨みましょう。また、企業と応募者の条件のミスマッチがないかをしっかりと確認することも重要です。
1)歓待を心掛ける
応募者は、これから働くかもしれない企業がどのような所なのかについて敏感になっています。そのため、応募者からの問い合わせの電話を受ける際などは注意し、誰が電話に出ても気持ちよく対応し、「雰囲気の良い職場」であるという印象を持ってもらえるようにします。
2)応募者シートの用意
面接は、応募者と直接話をすることができる貴重な時間です。面接を効率的かつ効果的に行うために、履歴書や職務経歴書だけでなく、企業側が質問したい項目をまとめた「応募者シート」などを用意するとよいでしょう。その応募者シートに、応募者の発言などをメモしておけば選考時の貴重な資料となります。
3)面接時間に余裕を持つ
採用面接の段階で十分に時間を掛け、互いの希望をじっくりと話し合い、その後に調整することが重要です。
応募者の中には、「パートなので、いつ辞めても大きな問題ではない」と考える人もいます。しかし、たとえパートであっても、採用した人材が早期離職してしまうことは大きな損失です。企業は、面接の時間を有効に活用して、「応募者が本気で応募してきているのか」を見極めることが重要です。
以上(2019年4月)
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画像:photo-ac