人手不足の問題は、年々深刻化しています。株式会社帝国データバンクの「人手不足に対する企業の動向調査(2023年10月)」によると、正社員の人手不足を感じている企業の割合は52.1%となっており、コロナ禍以前の高水準に戻っています。
今後も労働力人口の減少が見込まれる中でいかに優秀な人材を確保するかは、企業にとって大きな課題と言えます。
本稿では、会社を存続させていく上で、とても重要な「優秀な人材の確保」について、その具体策の一つである「リファラル採用」についてご紹介してまいります。
1 リファラル採用のメリット
リファラル採用とは、従業員から知人や友人の求職者を紹介してもらう採用手法のことで、多くのメリットがあります。
【リファラル採用の主なメリット】
求人広告の掲載費や転職エージェントへの報酬は社外に出ていくコストとなりますが、従業員(紹介者)にリファラル採用によるインセンティブを与える仕組みを構築すれば、そのコストが、従業員の会社への忠誠心や帰属意識の向上を生む効果をもたらします。
2 リファラル採用の実施状況と注意点
「就職白書2023」(株式会社リクルートの研究機関・就職みらい研究所)によると、2024年卒の採用方法・形態において、全体の18%の企業がリファラル採用を実施しており、前年より3.0%伸びています。
また、従業員規模別では、次の通りの結果となっています。
【2024年卒の採用方法・形態の予定~リファラル採用~】
((株)リクルート:就職みらい研究所「就職白書2023」)
上記のように採用手法として浸透しつつあるリファラル採用ですが、「紹介料(報酬)」を従業員に支払う場合には、注意が必要です。
法律では、報酬に関するルールが決められています。職業安定法30条では「有料での職業紹介」が規制されており、この法律に抵触しないようにしなければなりません。
法律に抵触しないためには、リファラル採用を社内制度として確立し、その報酬が、職業紹介における報酬とみなされないように「賃金・給与」として支払う仕組みを構築する必要があります。
賃金・給与として支払う場合は、労働基準法の定めに基づいて、就業規則にリファラル採用を業務として記載することも忘れてはいけません。
また、報酬額をあまりに高く設定してしまうと「職業紹介の報酬」とみなされるリスクが生じますので、適切な金額に設定することもポイントとなります。
3 さいごに
今後も労働力人口が減少していくことにより、企業の人材獲得競争はより激しさを増します。近年はさまざまな新しい採用手法が登場し、会社の規模を問わず各社がその新しい採用手法を検討・導入しています。その一つであるリファラル採用は、高効率、低コスト、ミスマッチの回避等のメリットがある一方で、留意しなければならない点も多くあります。
曖昧なルールのもとで行うのではなく、法律違反等のリスクを回避し、従業員の会社への帰属意識が向上するような制度を構築することで、優秀な人材が確保でき、また定着へとつなげていけるのではないでしょうか。
※本内容は2024年1月16日時点での内容です。
(監修 社会保険労務士法人 中企団総研)
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