書いてあること
- 主な読者:いざというときに自分の代行ができる「頼れる部下」を持ちたい人
- 課題:部下に関心を持てないし、自分の分身になるような教育をしてしまう
- 解決策:衝突をいとわずに、思いやビジョンを共有する。進むべき道が共有できたら、部下を信じて任せる
1 頼れる部下の育て方?
「本当に助かったよ。ありがとう!」。そう言って中堅社員のAさんに「肘タッチ」を求めたのは、Aさんの上司であるB部長です。あまり人を褒めないB部長ですが、今回ばかりはAさんに感謝しています。
B部長の家族が病気になり、B部長は看病のために2週間も休まなければならなかったのですが、その間、中堅社員のAさんがB部長の代行を立派に務めたのです。Aさん自身も多忙でしたが、ここが正念場と踏ん張ってB部長を助けたのでした。
そんなAさんの活躍はすぐに社内に知れ渡り、頼れる部下を持つことを羨む他の部長たちがB部長のところに話を聞きに来ました。「どうやったら、Aさんみたいな部下が育つの?」。するとB部長は、次のように返しました。
「根本的な思いを共有する努力が必要だね。『今、私たちはなぜこの仕事をしていて、将来、どこを目指すのか?』。みんなのビジョンは明確になっているか? そして、それを部下に繰り返し伝えているか?」
2 関心を持てないことは“罪”である?
上司に求められる根本的な要件は、「人(相手)に関心を持つこと」です。企業規模や業種によって異なりますが、課長クラスになれば一定数の部下がいるでしょう。しかし、人(相手)に関心を持たないまま役職が上がると、「部下の様子や業務の進捗状況をきちんと把握できない」という、いわゆる問題上司になってしまいます。顧客などに対しても同様で、相手の立場で考えて、行動することができません。
周囲に関心を持つことは上司の最低限の条件ですが、さらに求められるのは、部下と思いやビジョンを積極的に共有することです。考え方は人それぞれで、部下と衝突することもあるでしょうが、それでも問題ありません。むしろ、衝突できるくらいの関係になったほうがよいのです。
思いやビジョンが共有できれば、途中で意見の食い違うところがあっても、向かうべき先が同じなので安心して部下に任せることができますし、“箸の上げ下ろし”のような細かな話をしなくても済みます。
3 型にはめずに“共育”する
自分の分身のようになることを部下に求める上司が少なくありません。しかしこれは、「上司のやり方」に部下をはめ込んでいるだけであり、その部下は、上司の以上に育つことはないでしょう。また、考え方も似てくるので多様性もありません。
ピンチのときに頼れる部下とは、
基本は押さえながらも、自分で判断し、行動できる存在
です。事あるごとに行動パターンを詰め込んでいく上司のもとでは、こうした部下は育ちません。全ての部下がそうであるとは言えませんが、上司の目には、「この部下は他とは違う」という輝く存在がいるはずです。そうした部下とは、ディスカッションを繰り返しながら、共に学び合う“共育”の関係を築くことが大事です。こうすることで互いのことを深く理解することができ、理解しているからこそ、ピンチのときに「任せた!」と言うことができます。
「この部下は他とは違う」と気づくには、繰り返しになりますが、まず人(相手)に関心を持てなければなりません。
以上(2021年8月)
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