書いてあること
- 主な読者:社員のモチベーションが上がる賞与制度を実施したい経営者
- 課題:業績と連動し、社員にも分かりやすい制度にしたい
- 解決策:「業績連動型」賞与を導入し、賞与原資の決定基準を社員に示す
1 なぜ、賞与のありがたみが社員に伝わらないのか?
業績連動型とは、
会社の業績や社員の勤務成績に応じて賞与を決定する仕組み
です。日本の会社の65.4%が「業績連動型」賞与を導入しています(厚生労働省「令和4年賃金引上げ等の実態に関する調査」)。一方、「支給額=基本給×○カ月分」といった単純な仕組みに比べると計算過程が不透明で、社員が「こんなに頑張っているのに賞与が下がった……」と不満を覚えることがあります。
賞与を支給するか否かは会社の自由です。それでも多くの経営者は「頑張った社員に報いて、今後もモチベーション高く仕事をしてほしい」と思うからこそ、賞与を支給します。社員が不満を覚えるようでは、「そもそも賞与を支給する意味があるのか」ということになってしまいます。賞与も含め、報酬に対する会社と社員のギャップを埋めることは難しいのですが、
できるだけ社員に分かりやすい制度にして不透明感をなくす
ことで、ある程度不満は和らぎます。この記事では、業績連動型に着目して、社員にとって分かりやすい賞与制度にするためのポイントを紹介します。
2 何を業績指標とするか?
業績連動型の手順をおおまかに言うと、
- 業績指標を基準に「営業利益×○%」などで賞与原資を決める
- 賞与原資の範囲内で各社員の勤務成績を基準に支給額を決める
という形になります。
業績指標には次のようなものがあります。
- 「売上高」基準(売上高、生産高など)
- 「利益」基準(営業利益、経常利益、当期純利益など)
- 「付加価値」基準(付加価値)
- 「キャッシュ・フロー」基準(営業CFなど)
- 「株主価値」基準(ROA、ROE、ROIなど)
ちなみに、日本経済団体連合会・東京経営者協会の調査によると、業績連動型を採用している社員数500人未満の会社では、
「営業利益」を基準とする会社(60.0%)が最も多く、次に多いのは「経常利益」を基準とする会社(38.2%)
となっています(日本経済団体連合会・東京経営者協会「2021年夏季・冬季賞与・一時金調査結果」、複数回答)。
こうして業績指標が決まったら、それを基準に賞与原資の額を計算します。どの程度を賞与原資にするかは会社次第ですが、
「営業利益×○%」だけだと、業績の好不調によって賞与原資が大きく変動し社員に不安を与えるので、最低保障額を設ける
ことも検討しましょう。
3 支給対象者をどうするか?
賞与原資が決まったら、次は支給対象者を明らかにします。一般的には、
考課の対象期間内に勤務実績があって、支給日に在籍している社員
を対象とします。また、賞与を支給してから一定期間内に退職することが決まっている社員などは、対象から除外します。なお、非正規社員(パート等)に賞与を支給しない会社も多いですが、こうした対応は同一労働同一賃金に違反する恐れがあります。業務内容や労働時間などについて、正社員と働き方が同じ非正規社員がいないかを確認した上で、慎重に判断しましょう。
支給対象者が決定したら、支給対象者ごとの配分を決めます。一般的には、次のような要素を複数組み合わせて配分率を計算します。
- 部門業績(所属部門の経常利益が○万円以上なら配分率○%など)
- 人事考課(A評価なら配分率○%など)
- 資格等級(○級なら配分率○%など)
- 出勤率(週○時間勤務なら配分率○%など)
参考までに、日本経済団体連合会・東京経営者協会の調査によると、賞与・一時金の1人当たり平均支給額を100とした場合、非管理職・管理職ともに「考課査定分(人事考課)」「定額分(最低保証額など)」の配分割合が高いようです(日本経済団体連合会・東京経営者協会「2021年夏季・冬季賞与・一時金調査結果」)。
- 非管理職:考課査定分39.4、定額分30.2、定率分27.7、その他2.7
- 管理職:考課査定分51.1、定額分28.2、定率分17.5、その他3.2
以上(2023年6月)
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