書いてあること
- 主な読者:ジョブ型雇用の導入を検討している経営者
- 課題:職務記述書(ジョブディスクリプション)の内容や作成プロセスが分からない
- 解決策:当該職務を担当する社員にヒアリングし、難易度、必要なスキルなどをまとめる。そこに経営者のメッセージも込めて職務記述書に落とし込む
1 職務記述書とは
社員を採用する際の方針は、
- ジョブ型雇用:あらかじめ特定の職務をこなせる社員を採用
- メンバーシップ型雇用:自社の理念に共感をしている社員を採用
に分けられます。専門職採用や中途採用の場合、一般的にはジョブ型雇用が向いています。そこで使われるのが「職務記述書(ジョブディスクリプション)」という、
職務内容(担当業務の内容、難易度、必要なスキルなど)をまとめた書類
です。この職務記述書は募集要項と似ていますが、募集要項は待遇面の説明が中心で、担当業務の内容は簡単に紹介する程度です。ジョブ型雇用では、職務記述書に記載された職務をこなせるかどうかが、採用の可否や待遇を決定する判断基準になります。ですから、職務記述書をうまく活用すれば、
- 「採用してみたらスキルなどが期待外れだった」などの採用ミスマッチを解消する
- 「やる気がある」などの曖昧な基準での人事評価をやめ、賃金や人員配置を適正化する
といったこともできます。この記事では、職務記述書の作成プロセスとサンプルを紹介します。
2 職務記述書の作成プロセス
1)知る:募集ポジションの職務内容や就業環境についてヒアリングする
職務記述書は、募集ポジションの職務について、業務内容やその難易度、必要なスキルなどの詳細を1つずつ洗い出して作成します。経営者も社内の職務内容は把握していますが、もっと細かいレベルまで落とし込む必要があるので、現場の声を聞きます。
まずは、対象の職務を行っている社員やその上司にヒアリングを行い、募集ポジションの職務内容や就業環境について、経営者自身が誤った認識をしていないか確認します。例えば、次のような質問例が考えられます。
【現職の社員への質問例】
- 定期業務
・重要度の高い業務の内容
・発生頻度(1カ月にどのくらい行うか、という表現でOK)
- 人間関係
・リポートライン(タスクの遂行や進捗報告などのコミュニケーションのフロー)
・意思決定プロセス(意思決定者は誰か、自分の裁量範囲はどのくらいか)
- 求められる行動、果たすべき役割
- 必要だと思われるスキル・知識・資格・経験
- 業務で難しいこと・厳しいこと(具体的な内容、乗り越えるための技術やコツ)
【上司への質問例】
- 責任の範囲(どのくらい裁量があるか)
- 求められる行動、果たすべき役割
- 必要だと思われるスキル・知識・資格・経験
- 入社後に苦戦しそうだと予想されること
2)分析する:職務をこなすために必要なスキルなどを掘り下げる
ヒアリングの結果、経営者と現場の認識にズレがなければ、職務をこなすために必要なスキルなど(技能、知識、資格、経験など)を列挙します。会社の求めるスキルなどを全て兼ね備えた求職者にはなかなか出会えないので、次のように優先順位を決めます。
- スキルなどがない場合、職務を一切行えないのか、一部なら遂行可能なのか
- 研修で習得させることが可能か、その場合の期間やコストはどの程度か
3 職務記述書のサンプル
次の職務記述書は、アプリ開発を行う会社がシステムエンジニアを募集する場合の例です。
「職務内容」「必要な知識」などは、現職の社員や上司へのヒアリングの結果などを基に、できるだけ詳細に書き出します。「目標(ノルマなど)」も記載すると、求職者に対してより鮮明に仕事のイメージが伝わります(目標設定が複雑になる場合は、別紙などで提示)。「期待される特性」は、会社のミッションやビジョンにも関係する重要な項目ですので、会社として何を大切にしているかが求職者に伝わるよう、メッセージを工夫しましょう。
また、職務記述書を作成する際は、厚生労働省の「職業能力評価基準」も参考になります。職業能力評価基準とは、
仕事をこなすために必要な「知識」「技術・技能」「成果につながる職務行動例(職務遂行能力)」を、業種別、職種・職務別に整理したもの
です。
■厚生労働省「職業能力評価基準の策定業種一覧」■
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_04653.html
以上(2024年1月更新)
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