QUESTION
事業主には、従業員のメンタルヘルス対策を講じる義務がありますか。
ANSWER
労働契約法(第5条)や労働安全衛生法、民法(信義則)上の義務を負います。
解説
労働契約法(第5条)や労働安全衛生法(第3条など)、民法(第1条2項など)の規定により、労働者の安全(メンタルを含む)につき、必要な配慮しなければならない義務を負います(安全配慮義務)。
必要な配慮については、平成12年に労働省(当時)が「事業場における労働者の心の健康づくりのための指針」を発表して、使用者に課されるメンタルヘルス上の安全配慮義務の程度を定めています。
この指針によると、メンタルヘルスケアには、1.セルフケア、2.ラインケア、3.スタッフケア、そして4.専門機関によるケアの4つの段階があるとされています。
1.セルフケア
労働者が自ら行うストレスへの気づきと対処。
セルフケアの段階で使用者に求められるのは、労働者自身にセルフケアの重要性を自覚させるために、教育研修や情報提供を行うことです。
ただし、この教育研修や情報提供が、使用者側の安全配慮義務の内容にまでは、まだなっていません。
2.ラインによるケア
管理監督者が行う職場環境等の改善と相談への対応。
管理職による、部下の労働時間、労働状況、健康状況を把握し、初期症状が出てきた場合には作業量を調整することなどです。
3.事業場内産業保健スタッフ等によるケア
産業医等による専門的ケア。
4.事業場外資源によるケア
事業場外の専門機関によるケア。
また、平成27年12月1日から、常時使用する労働者に対して毎年1回、心理的な負担を把握するための検査を行うこと(ストレスチェック制度)が義務化されました。
※従業員数50人未満の事業場は制度の施行後、当分の間努力義務
1.ストレスチェックの実施について
○ストレスチェックの実施者者は、医師、保健師等となります。
○ストレスチェックの調査票は、「仕事のストレス要因」、「心身のストレス反応」及び「周囲のサポート」の3領域が含まれています。
2.面接指導の実施
○ストレスチェックの結果の通知を受けた労働者のうち、高ストレス者として面接指導が必要と評価された労働者から申出があったときは、医師による面接指導を行うことが事業者の義務になります。
○事業者は、面接指導の結果に基づき、医師の意見を勘案し、必要があると認めるときは、就業上の措置を講じる必要があります。
3.集団分析の努力義務化
○職場の一定規模の集団(部、課など)ごとのストレス状況を分析し、その結果を踏まえて職場環境を改善する措置は努力義務になります。
4.労働者に対する不利益取扱いの防止について
○ストレスチェックを受けない者、事業者への結果提供に同意しない者、面接指導を申し出ない者に対する不利益取扱いや、面接指導の結果を理由とした解雇、雇止め、退職勧奨、不当な配転・職位変更等を禁止されています。
※本内容は2024年2月29日時点での内容です。
<監修>
社会保険労務士法人中企団総研
No.95010
画像:Mariko Mitsuda