「頑張り屋」で有名な中堅社員のAさん。「働き方改革」が進む昨今ですが、残業や休日出勤をいとわずに働いています。今日は土曜日ですが、Aさんはいつものように休日出勤してきました。
Aさんがオフィスに着くと、課長も休日出勤していました。Aさんを見るなり、課長が声をかけてきました。
「お疲れさま。休日なのに悪いね。ここのところ残業や休日出勤が続いているようだけど、会社としては残業は削減、休日出勤は原則禁止だから、少し見直してほしいな。私も相談に乗るし」
すると、やや怒った様子のAさんが言いました。
「仕事が終わらないので、残業や休日出勤は仕方のないことです。とにかく私は頑張ります!」
それを聞いた課長は、少し困った表情で言いました。
「う~ん……。他の社員、特に部下への影響も考えてほしいな。Aさんは周囲から見られる立場になったんだよ」
組織人である以上、ルールは守る
働き方は人それぞれです。冒頭のAさんのように、「仕事第一」で残業や休日出勤を全く苦にしない人がいる一方で、仕事よりもプライベートを充実させたい人もいます。
働き方は個人の意思に基づいて自由に選択されることが理想ですが、会社に所属している以上、そのルールを守らなければなりません。会社が「残業は削減、休日出勤は原則禁止」といった方針を打ち出しているのであれば、それを守ることが基本となります。
もう1つ、役職が上がるほど意識しなければならないことがあります。それは「周囲への配慮」です。自分の言動が周囲にどのような影響を与えているのかを、考えなければなりません。
中堅社員に求められる周囲への配慮
1)良きロールモデルになる
部下に「自分も上司(中堅社員)のようになりたい」と思ってもらえたら、とてもうれしいものです。では、Aさんのような働き方を見た部下がそのように思ってくれるでしょうか?
- 「Aさんのような働き方は無理……」
多くはこのように敬遠するはずです。それに、Aさんの働き方を受け入れられない部下は、Aさんが自発的に働き、実は楽しんでいることを知らないまま、
- 「自分の会社は、残業や休日出勤が慢性化している社員がいるブラックな職場である」
とSNSに書き込むかもしれません。誤解なのに、こうした書き込みがされると会社のブランドが毀損されることがあります。
2)部下に任せる
「頑張り屋」が陥りやすい問題の1つが、「どんな仕事でも引き受けて、自分で抱え込んでしまうこと」です。ただでさえ忙しいのに、さらに仕事を引き受けてしまうのです。
その結果、どんどん仕事がたまっていき、残業や休日出勤をしなければ終わらなくなってしまいます。そのような状況で、Aさんが体調を崩しでもしたら、関係者に大きな迷惑をかけることになります。
加えて、簡単な仕事もAさんがやってしまうと、部下の成長の機会は奪われてしまいます。中堅社員は、部下の育成も重要な仕事であることを認識しなければなりません。
仕事の振り先はある
- 「そう言われても、仕事の振り先がない……」
こんな反論が聞こえてきそうですが、本当にそうでしょうか?
忙しいように見えて、実はかなり余裕を持って仕事をしている人はいないでしょうか。そうした人こそ、仕事の振り先となります。
「教える時間がとれない。自分でやったほうが速い」と考えがちですが、それでも誰かに仕事を振らなければ、仕事は終わらず、部下も仕事を覚える機会がありません。仕事を振ることが、中堅社員の仕事です。
“本当の忙しさ”を見える化する
1)仕事の見える化で情報共有
人に仕事を振るために、まずは仕事の状況を正しく把握しましょう。具体的には、中堅社員とその部下が担当している仕事をスケジューラーに登録します。その際、仕事ごとの所要時間も登録することで、各人の“本当の忙しさ”が見えてきます。
中には、わざと長い時間を登録して忙しさを演出する部下が出てくるかもしれないので、中堅社員が適正な所要時間を示し、部下をマネジメントします。
2)朝一のメールを禁止する
少々細かなマネジメントになりますが、午前中の部下の仕事を15~30分単位で把握してみてください。メールや資料作成など、仕事の種類ごとに色分けすると、多くの部下が、朝の集中できる大切な時間をメールに費やしているという実態が浮き彫りになるはずです。
朝の時間を有効に活用して生産性を向上させるために、“メールからの解放”は有効です。そうした意味では、上司の「ちょっといい?」と言って、部下の時間を少しずつ奪うコミュニケーションもやめるようにしましょう。
Point
- 中堅社員は、部下から見られる存在である。
- 安易に残業や休日出勤をする前に、チームの生産性を向上させることを考えよう!
以上(2019年8月)
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画像:Eriko Nonaka