Q.休業手当を支払うのはどのようなケースですか?
A.使用者の責に帰すべき事由により休業する場合、休業手当の支払いが必要です。一方、休業が不可抗力によるものと認められる場合、休業手当の支払いは不要です。
1 「使用者の責に帰すべき事由」の考え方
使用者の責に帰すべき事由により休業する場合、会社は休業期間中、社員に平均賃金の60%以上の休業手当を支払わなければなりません。使用者の責に帰すべき事由には、会社の故意・過失による場合はもちろん、不可抗力を主張し得ない全ての場合が含まれます。
休業が不可抗力によるものと認められれば、休業手当の支払いは不要ですが、そのためには次の2つの要件を満たす必要があります。
- 休業の原因が外部により発生した事故であること
- 事業主が通常の経営者として、最大の注意を尽くしてもなお避けることのできない事故であること
例えば、オフィスが損壊して事業を行えない、防災気象情報が出ていて、安全のために社員を自宅待機させる必要があるなどの理由で休業する場合、休業手当の支払いは不要となる可能性が高いです。
一方、オフィスに直接的な被害はないが、道路が損壊し資材が届かないなどの理由で操業できずに休業する場合、判断が分かれます。日ごろの備蓄管理の状況、他の調達手段の可能性、災害発生からの期間などによって、休業手当の支払いが必要になる可能性があります。
2 休業手当の負担軽減に役立つ助成金など
1.雇用調整助成金
事業を行えない状態で休業手当を支払うのは、会社にとって負担です。こうした場合、「雇用調整助成金」が役立ちます。
雇用調整助成金は、経済上の理由(停電の影響で営業ができない、新型ウイルスによる感染症の影響で客数が減ったなど)により休業する会社などが受給できます。また、大きな災害などの場合、助成率の引き上げなどの特例措置が実施されることがあります。
2.雇用保険の基本手当
不可抗力による休業の場合、休業手当の支払いは不要です。しかし、給与も休業手当も支払われない状態が続くと、今度は社員の生活が心配です。こうした場合、「雇用保険の基本手当」が役立ちます。
基本手当は会社を離職した社員が受給するものですが、大きな災害の場合、実際に離職していない社員も受給できる可能性があります。後に雇用する約束をして社員を一時離職させる場合も同様です。
雇用調整助成金や雇用保険の基本手当は、災害の状況などによって受給額や受給手続きが変更されることがあります。詳細については、最寄りの労働局やハローワークに確認してください。
以上(2020年4月)
(監修 社会保険労務士 志賀碧)
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