書いてあること
- 主な読者:10~20代の新入社員とのコミュニケーションに悩む、30代以上の先輩社員
- 課題:Z世代特有の行動や態度が受け入れられないときがある。ただ、どこまで注意していいのか、どう注意すれば新入社員に響くのかが分からない
- 解決策:他の同年代の社員などに聞いて、自分の注意の仕方に足りていない部分を補う
1 Z世代の新入社員とのコミュニケーションに悩む人たちへ
現在、10~20代の新入社員は、いわゆる「Z世代」(1990年代半ば~2010年代初頭生まれ)と呼ばれる人たちです。先輩社員は「せっかくわが社を選んで入社してくれたのだから、しっかり育てよう」とはりきりますが、ジェネレーションギャップは世の常。Z世代特有の行動や態度に悩まされることも多いのではないでしょうか。
例えば、SNSなど特定のコミュニティ内での会話やスマホなどの扱いに慣れているために、
- 対面でのコミュニケーションが苦手で、挨拶がちゃんとできない
- 友達感覚の話し方が抜けきらず、敬語が正しく使えない
- 大学の講義の黒板も写メで撮るのが当たり前だったので、メモを取る習慣がない
といった話などはよく聞きます。「ビジネスパーソンとして非常識だし、ちゃんと注意したほうがいいのかな……」「それとも、これも時代だと思って、新入社員に合わせたほうがいいのかな……」と、先輩社員の心境は複雑です。
そこで、この記事では
直近3年間で10~20代の新入社員を採用した会社に勤める「30代以上の先輩社員310人」に「新入社員の気になった行動・態度」や「新入社員への注意の仕方」をアンケート
した結果をまとめました(実施期間:2024年5月15日~5月16日)。ぜひ、自分と同年代の社員がどう考えているのかをご確認ください。最近話題の「ゆるブラック企業」や「退職代行」についてどう考えているのかも質問していますので、併せてご一読ください。
2 新入社員の行動や態度について、思うところがあるか
まずは、新入社員の行動や態度に、困惑したり違和感を覚えたりしたことはあるかを聞きました。先輩社員の回答は次の通りでした。
先輩社員の47.4%は、新入社員の行動や態度について、思うところがあるようです。
3 具体的にどのような行動や態度が気になったか
新入社員の行動や態度について、困惑したり違和感を覚えたりしたことが「ある」と回答した先輩社員に、具体的にどのような行動や態度が気になったかを聞きました。
「挨拶をしない」という回答が43.5%と最も多く、次いで「言葉遣い(独特の表現、敬語が使えない、タメ口)」の37.4%が続きます。
4 実際に新入社員を注意したことがあるか
同じく、新入社員の行動や態度について、困惑したり違和感を覚えたりしたことがある先輩社員に、実際に新入社員を注意したことがあるかを聞きました。
「たくさん注意した」「まあまあ注意した」が合計61.2%、「あまり注意しなかった」「一度も注意したことがない」が合計38.8%となりました。問題があったら注意するスタンスの先輩社員が多い一方で、それを苦手としている人も4割弱いるようです。
5 注意した/しなかった理由は何か
前章で新入社員を「たくさん注意した」「まあまあ注意した」と回答した先輩社員に「注意した理由」を、「あまり注意しなかった」「一度も注意したことがない」と回答した先輩社員に「注意しなかった理由」を聞きました。
「注意した理由」は、「仕事に支障を来すから」が42.2%と最も多く、次いで「新入社員に成長してほしいから」の34.4%が続きます。「仕事を進める上で必要だと思ったら注意する」というスタンスの先輩社員が多いようです。
「注意しなかった理由」は、「下手に注意してハラスメントと言われたくないから」が35.1%と最も多く、次いで「仕事に支障を来すほどのことではないから」の24.6%が続きます。社会におけるコンプライアンス意識が高まる中で、ハラスメントになるのを恐れて新入社員を注意できない先輩社員が多いようです。また、「仕事をちゃんとやってくれるなら、あとは本人に任せよう」というスタンスの人も一定数いるようです。
6 具体的に何を注意したか
新入社員を注意したことがある(図表3で「一度も注意したことがない」以外の回答をした)先輩社員に、具体的に何を注意したのかを聞きました。
「挨拶をしない」という回答が27.2%と最も多く、次いで「メモを取らない」の24.8%が続きます。このあたりの傾向は第3章(具体的にどのような行動や態度が気になったか)と大体同じです。また、第5章(注意した理由)を踏まえて見てみると、挨拶やメモの取り方について注意することで「仕事が円滑に進む」「新入社員の成長につながる」と考えている先輩社員が多いといえます。
7 新入社員の行動や態度は改善したか
同じく、新入社員を注意したことがある先輩社員に、注意した結果、新入社員の行動や態度が改善したかを聞きました。複数の新入社員を注意した経験がある先輩社員には、1人でも改善した新入社員がいるかを回答してもらいました。
50.4%の先輩社員が「改善した」と回答しています。
8 改善につながった/つながらなかった理由は何か
新入社員の行動や態度が「改善した」「改善しなかった」と回答した先輩社員に、それぞれそう思う理由を聞きました。
注目したいのは赤字の部分です。「改善につながらなかった理由」の1位「分からない(28.6%)」を除くと、「改善につながった理由」「改善につながらなかった理由」の上位5つは同じ内容になっています。これはもしかしたら「注意の仕方」の問題かもしれません。
例えば、「『それは間違っている』など、ストレートな言い方をした」は、「改善につながった理由」の1位(28.6%)、「改善につながらなかった理由」の3位(17.1%)になっていますが、改善につながらなかったという先輩社員は、ただストレートに注意するだけで、
- 「何が間違っているか」「なぜ間違っているのか」などを説明する
- 優しめのトーンで叱る
といった、他の要素をおろそかにしている可能性があります。図表7は複数回答ですが、実際「ストレートな言い方をして、改善につながった」という先輩社員の中には、上記のような他の要素も併せて選択している人が少なからずいました。
ちゃんと注意しているつもりなのに、いまいち新入社員に響かないと悩んでいる先輩社員は、
自分が新入社員だった頃を思い出しつつ、複数の要素を織り交ぜて注意する
ということを意識してみるとよいかもしれません。
9 いわゆる「ゆるブラック企業」についてどう思うか
労働環境はしっかりしているが、優しすぎて社員が仕事にやりがいを感じられない「ゆるブラック企業」が最近話題になっています。先輩社員全員に、ゆるブラック企業についてどう思うかを聞いてみました。
先輩社員の45.2%は自社もゆるブラック企業かもしれないと思っている一方、41.6%はやりがいをちゃんと伝えられている自信があるようです。
10 いわゆる「退職代行」についてどう思うか
退職代行とは、会社に直接「退職したい」と言えない社員が、他者に依頼して、退職手続きなどを代行してもらうことです。最近は民間の退職代行サービスが急増し、入社したばかりの新入社員がこうしたサービスを利用して早期退職してしまうニュースが世間をにぎわせています。先輩社員全員に、退職代行についてどう思うかを聞いてみました。
先輩社員の38.7%は、歓迎はできないまでも、ある程度は理解できると考えているようです。
以上(2024年6月作成)
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