書いてあること
- 主な読者:入社3〜5年目でさらに成長したい中堅社員
- 課題:「基本」の大切さは分かっているが、忙しいと疎かになってしまうことがある
- 解決策:忙しいからこそ、難しいからこそ「基本」を判断のよりどころにする
1 ルールを守らなかったら……
「リモートワーク中なのだから、いつも以上に確認しないと駄目じゃないか。もう一度、確認して!」
現金出納帳と実際の現金残が一致していないことを報告した経理課の中堅社員Aさんは、課長に大目玉を食らいました。Aさんの会社では、毎日、17時に現金出納帳への記載や帳簿と実際の現金残の確認をする決まりです。最近は、リモートワークが導入されて環境が変わったので、2人で確認することがルール化されたのですが、Aさんはそれを守らなかったのです。
「失敗したな……」としょんぼりとしながら、改めて現金残などの確認をするAさんでした。
2 基本を徹底することの難しさ
中堅社員になると業務は多様になり、難しい決断も迫られます。業務量も増えるので、慌ただしい中で多くの仕事をこなさなければなりません。そんな中堅社員だからこそ、大切にしなければならないのが「基本」です。基本とは、「ルールや手順を守る」「時間を守る」「お客様を優先する」といったもので、中堅社員にとっては「今さら何を……」と思うようなことです。
しかし、業務上のミス、お客様からのクレームなど、身近な問題だけでなく、マスコミで報じられるような世間を騒がす大きな不祥事も、その原因を探ると、「基本をおろそかにしている」という点にあることが少なくありません。
成長が期待され、また、日々、より難易度の高い業務への対応が求められる中堅社員の目は、より高い方に向けられがちです。しかし、そうしたときだからこそ、謙虚な姿勢で、いま一度、基本を重視することの大切さを認識することが大切なのです。
3 今、基本を再認識することの3つの意義
1)難易度の高い業務に向かう基礎作り
中堅社員に求められる難易度の高い業務の多くは、非定型的な意思決定を伴うものです。端的な例を挙げると「決まった手順を覚えて、特定の業務をこなせるようになる」といったことから、
その特定の業務を、より効率的に進めるためには、どのように改善すべきか。また、その改善案の実現は、どのように進めていくか
といったイメージです。
非定型的な意思決定を行う際は、さまざまな状況を考慮しますが、基本に従うことは最低条件です。例えば、コスト削減を進めていても、サービスの質の低下などお客様に悪い影響が及ぶ恐れがあれば、そのまま採用することはできないはずです。このように、基本は、意思決定の大切なよりどころであり、それをないがしろにしては、質の高い意思決定はできません。
2)部下への指示・指導
部下への指示・指導という点では、基本にのっとった指示・指導は、部下の納得性を高めるために不可欠です。
部下も人間です。上司の指示・指導だといっても、自身が理解・納得できないことに対しては、反発心を覚えます。また、実践しようとしても、上司の意図通りのパフォーマンスを発揮することはできません。
しかし、基本にのっとった指示・指導であれば、部下は理解・納得できるものです。仮に、理解・納得できなくとも、基本にのっとったものであることを説明すれば、指示・指導の意図を納得させる際の一助となります。
3)周囲からの信頼の獲得
基本にのっとった仕事に対する姿勢や、部下に対する指示・指導を続けることは、周囲からの信頼を獲得する上でも効果的です。常に基本を意識して業務に当たることで、自身の言動にブレがなくなり、一貫性が生まれます。そうした姿は、周囲から信頼を得るためには大切になります。
4 「基本に忠実に」の難しさ
「基本に忠実に」と言うと、「何をいまさら」と言う人もいるでしょう。しかし、こうしたことが言われるのには、それなりの意味があります。それは、「当たり前のことだが、実践し続けることが難しい」ということです。
そうした意味では、これからさらなる飛躍が期待される中堅社員だからこそ、いま一度、その大切さをかみしめることが必要なのです。
以上(2021年8月)
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