QUESTION
定期昇給の廃止など、賃金体系を変更する際に従業員との話し合いは必要ですか。
ANSWER
合理性があれば、個々の労働者の同意は不要です。ただし、実際には労使で時間をかけて話し合うべきであり、慎重な取り扱いが求められます。
解説
賃金額は労働条件のひとつであり、これを引き下げるには、原則として、個々の労働者の同意が必要です。
個々の労働者の同意を得ないで定期昇給の廃止などを行うには、合理性の認められる範囲で就業規則の不利益変更をすることになります。
就業規則の不利益変更で労働条件を引き下げようとするときは、次のことが必要です。
1.その変更が、以下の事情などに照らして合理的であること。
・労働者の受ける不利益の程度
・労働条件の変更の必要性
・変更後の就業規則の内容の相当性
・労働組合等との交渉の状況
2.労働者に変更後の就業規則を周知させること。
定期昇給を廃止することは、労働上の不利益変更を伴うため、合理性の認められる範囲であったとしても、従来の人事・賃金制度全体の抜本的な見直しを前提にして、労使で時間をかけて話し合うべきです。経営環境や新人事制度の基本的な考え方を労使で共有し、賃金体系や賃金水準について順次検討して合意を得ていくべきです。
性急な定昇廃止措置は、社員や労働組合の反発を買い、会社を内紛状態に陥れかねません。まして、長期にわたる裁判を経て仮に合理性を認められたとしても、経営的には大きなマイナスであり賢明な労務管理とはいえません。
※本内容は2024年2月29日時点での内容です。
<監修>
社会保険労務士法人中企団総研
No.92130
画像:Mariko Mitsuda