QUESTION

年次有給休暇を取得中の労働者がいましたが、午後、緊急やむを得ない理由が発生し、本人の同意のうえ急遽出勤(業務終了後、即時帰宅)してもらいました。この場合、有給休暇は使用されたこととなるのでしょうか。また、急遽出勤していただいた時間は時間外労働として残業代を支払う必要があるのでしょうか。

ANSWER

年次有給休暇中に同意のうえ出勤してもらった場合には、年次有給休暇の使用は取り消されることとなります。このため、通常の出勤日と同様に賃金の計算をすることとなりますが、実際の労働時間が所定労働時間に満たない場合には、その満たない時間部分の賃金については、少なくとも会社都合による休業として休業手当を支払うべきです。
また、年次有給休暇中に出勤するといった事態が発生しないよう再発防止策を講じることが急務です。

解説

年次有給休暇取得中は、その労働者の労働義務が免除されている状態にあるため、業務上やむを得ない理由があっても、一方的に使用者側が出勤を命ずることはできず、その労働者の同意のもと出勤してもらうこととなります。この場合、年次有給休暇の使用が取り消されることとなりますので、通常の出勤日として勤怠管理や賃金計算を行う必要があります。

そうすると、実際の労働時間が所定労働時間に満たない場合には、その満たない時間分についてはノーワーク・ノーペイの原則により賃金が発生しないこととなりますが、その原因は会社側にあるため、少なくともその時間分について休業手当を支払うべきと考えられます。
また、時間単位年休の制度を導入している場合には、本人の希望を前提に、所定労働時間に満たない時間分について時間単位年休を取得してもらうという対応方法も考えられます。

いずれにしても、年次有給休暇中に出勤しなければならないといった事態は、勤怠管理上の問題だけでなく労働者のモチベーション低下にもつながりかねないので、同様の事態が発生しないよう業務体制や人員配置の見直しなどの再発防止策を講じることが急務です。

※本内容は2024年2月29日時点での内容です。
 <監修>
   社会保険労務士法人中企団総研

No.92190

画像:Mariko Mitsuda

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