昨今、多くの企業が人材流出、人材不足に苦慮しており、少子高齢化と人口減少が顕著になった社会において、採用を含めた人材確保が難しい状況になっています。こうしたことから、「人材マネジメント」に特化した課題を克服するために、エンゲージメントへの関心が高まっています。
ここでの「エンゲージメント(engagement)」は、従業員の会社に対する愛着や思い入れの意味合いになります。従業員が仕事に没頭し、モチベーションを感じている「エンゲージメントが高い状態」は、企業の業績向上や従業員の定着に大きな効果があります。
本稿では、企業におけるエンゲージメントの実態を把握し、エンゲージメントを向上させるための主な施策をご紹介いたします。
1 エンゲージメントの現状
2022年度(2021年12月~2022年11月)に(株)ヒューマネージが実施したエンゲージメント・サーベイ(68,659名のデータ)の分析結果によると、若年層(20代)の社員のエンゲージメントが最も低く、年代が上がるほどエンゲージメントが高くなっています。
さらに、エンゲージメントの3つの状態(楽しみ/興味・関心/意義)について、年代別に見ると、特に20代、30代の若手従業員は、仕事に対して、「興味・関心」と「意義」は感じられているが、「楽しみ」は感じられていないという状態が読み取れます。
((株)ヒューマネージ「エンゲージメント・サーベイの分析結果」)
2 エンゲージメント向上の施策
企業が今以上に従業員のエンゲージメントを向上させるには、下記のような施策を講じることが、有効となります。
エンゲージメントの現状把握 |
従業員が仕事に対してどのような意識を持ち、会社にどのような印象を持っているのか、社内アンケートなどで現状把握する。 |
経営層からのメッセージ発信 |
社長や経営者から、企業理念や今後の展望についてメッセージを伝え、会社全体で統一されたビジョンを共有する。 |
相応しい人事評価制度の構築 |
従業員に不公平感を感じさせない納得感のある評価基準を設け、客観的で明確な人事評価制度を構築する。 |
コミュニケーションの活性化 |
従業員がオープンに意見を言い合える風通しの良い企業風土を形成し、心理的安全性を高め、会社への帰属意識の向上を図る。 |
快適に働ける職場環境の構築 |
従業員が各々に適した業務に就けるよう適材適所の配置を行い、全ての従業員が健全に働けるように労働環境を整備する。 |
ワークライフバランスの向上 |
家事や育児・介護との両立ができる働き方の改革や福利厚生の充実を図り、プライベートも大事にしながら働ける会社にする。 |
3 さいごに
2023年3月期決算以降、上場企業などを中心に人的資本情報の開示が義務化され、「エンゲージメント」は、開示が望ましい19項目のひとつにも挙げられました。このように「エンゲージメント」は、人材マネジメントにおける重要な概念としてその立ち位置を強めています。
人材の流動化や労働力人口の減少で人材の確保が難しくなっている現代において、企業と従業員の関係性を深め、生産性や定着率の向上を目指す取り組みは、企業が成長するための最優先課題の一つと言えるかも知れません。まずは自社で取り入れられる施策から着手してみてはいかがでしょうか。
※本内容は2023年4月13日時点での内容です
(監修 社会保険労務士法人 中企団総研)
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