QUESTION
懲戒解雇された者に対する退職金を減額・不支給としていいですか。
ANSWER
退職金規程に不支給規定があれば、重大な非違行為がある場合に限り、就業規則に基づく退職金の減額又は不支給は認められます。
解説
退職金に関する規程が労働契約・就業規則にない場合は、使用者は当然に退職金の支払義務を負うわけではありません。この場合の退職金は、労働基準法上の賃金ではなく単なる恩恵的給付であり、減額・不支給も自由にできます。
一方、退職金に関する規程が労働契約・就業規則にある場合は、労働基準法上の賃金となります。
労働基準法上の賃金としての退職金は、功労褒賞的性格と賃金の後払い的性格を持ちます。したがって、懲戒解雇に関する規定に退職金の減額および不支給の規定があるだけでは、当然には退職金を不支給とすることはできませんが、重大な非違行為がある場合に限り、就業規則に基づく退職金の減額又は不支給は認められます。
懲戒解雇事由があっても退職金減額又は不支給の規定がなければ減額・不支給とすることはできませんので、トラブルを予防するためには、退職金規程に、「円満退職でない場合」「懲戒解雇相当事由が判明した場合」には退職金を支給しない(もしくは減額する)と明記しておくべきです。
《参考》トヨタ工業事件(東京地裁平成6年6月28日判決)
退職金を全額不支給とすることができるのは、それまでの功労を抹消してしまうほどの重大な行為、たとえば多額の横領といったことがあった場合に限られるとしました。
※本内容は2024年2月29日時点での内容です。
<監修>
社会保険労務士法人中企団総研
No.97070
画像:Mariko Mitsuda