QUESTION

成果型賃金制度を導入して賃金が下がる従業員がいてもいいですか。

ANSWER

受忍限度内の不利益であり、構いません。

解説

成果型賃金制度を導入すると、成果や能力次第では賃金が上昇する場合と逆に不利益になる場合があります。賃金の不安定性を生ずることそれ自体が不利益変更であるとみて、判例の合理的変更法理が該当すると一般には考えられています。
そのために判例理論上は、賃金についての変更は高度な必要性を求めています。
「全国信用不動産事件」では、倒産の危機に瀕しているという状況にはなかったことを高度の必要性を否定する根拠としています。高度の必要性の要件を厳格にとらえると、就業規則の変更では成果主義型の賃金体系を導入することが困難となります。
一方、「ハクスイテック事件」は、成果主義型賃金体系を導入した給与規程変更の事案について、賃金の不利益変更であると認めたうえで、その変更に合理性があると判断しています。
一般的に、労働生産性と直接結びつかない形の年功型賃金体系は合理性を失いつつあり、労働生産性を重視し、能力・成果主義に基づく賃金制度を導入することが求められており、高度の必要性の要件を緩やかに解しています。個別労働者において賃金が下がることがあっても、受忍限度内の不利益であるとしています。
労務の観点からは、変更を必要とした経営事情よりも、変更後の労働条件の内容的合理性を重視して判断すべきです。
成果型賃金制度の合理性を支えるためには、目標管理制度における目標の設定とその方法・手続、仕事の成果の評価とその方法・手続、賃金額決定の方法・手続、苦情処理制度の整備が必要であると考えられます。

※本内容は2024年2月29日時点での内容です。
 <監修>
   社会保険労務士法人中企団総研

No.92140

画像:Mariko Mitsuda

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