QUESTION
採用内定取消しは採用前ならいつでも自由にできますか。
ANSWER
自由にはできません。解雇をする場合と同様の配慮が必要です。
解説
採用内定は、始期付きの、解約権留保付労働契約とされており、採用内定者の地位は、一定の試用期間を付して雇用関係に入った者の試用期間中の地位と基本的に異なるところはありません。
採用内定を取り消すことができる事由は、採用内定当時知ることができず、また知ることが期待できないような事実であって解約権留保の趣旨、目的に照らして客観的に合理的と認められ、社会通念上相当として是認することができるものに限られると解するのが相当とされており、これに該当しない場合には解雇権の濫用として判断される可能性があります。
例えば、提出書類への虚偽記載があったとしても、その虚偽記載により内定者の資質や能力への誤認したり、詐称が判明した経緯などから企業内に留めておくことができないほどの不信義性が認められる場合でなければ、内定取消しが無効とされるおそれがあります。
また、内定取消しの経緯や状況によっては、内定者から債務不履行(誠実義務違反)や不法行為(期待権侵害)に基づく損害賠償請求がなされ、裁判で認容される可能性もあります。
さらに、内定取消しがやむを得ないとされる場合でも、内定からその取消しに至る過程で信義則上必要な配慮に欠けていたことを理由に損害賠償責任が課せられた裁判例もあります(パソナ(ヨドバシカメラ)事件‐大阪地判平16・6・9)。
※本内容は2024年2月29日時点での内容です。
<監修>
社会保険労務士法人中企団総研
No.91020
画像:Mariko Mitsuda