QUESTION
携帯電話を持たせた営業社員に事業場外のみなし労働時間制を適用することができますか。
ANSWER
携帯電話を持たせ、随時管理職が業務の指示を与える場合、事業場外のみなし労働時間制は適用できません。
解説
労働基準法第38条の2第1項において、労働者が労働時間の全部または一部について事業場外で業務に従事した場合において、労働時間を算定しがたいときは、原則として所定労働時間労働したものとみなすこととされています。
しかし、事業場外で業務に従事する場合であっても、以下の場合のように使用者の具体的な指揮監督が及んでいる場合については、労働時間の算定が可能であるのでみなし労働時間制の適用はありません。
- 何人かのグループで事業場外労働する場合で、そのメンバーの中に労働時間を管理する者がいる場合
- 事業場外で業務に従事するが、無線や携帯電話などによって随時使用者の指示を受けながら労働している場合
- 事業場において、訪問先、帰社時刻など当日の業務の具体的指示を受けた後、事業場外で指示通りに業務に従事し、その後、事業場に戻る場合
なお、近年の司法判断では、事業場外のみなし労働時間制の適用を否定する判決が多い傾向にあるため、制度の適用については慎重に検討する必要があります。
《参考》令和4年11月22日付け東京高裁判決
外資系製薬会社で外勤の医療情報担当者(MR)として働いていた労働者について、訪問先医療機関との直行直帰が基本であり、具体的な訪問先やスケジュールも労働者に委ねられていたという状況下においても、勤怠管理システムの導入により貸与スマートフォンで出退勤の打刻が可能となり、始業・終業時刻の把握が可能であった状況においては、日報の提出を求めたり、週報の様式を変更すれば、業務内容や休憩時間を管理できた(仮に打刻した始業時刻や終業時刻の正確性に疑問があれば、貸与スマートフォンを使い、業務の遂行状況を随時報告させたり、指示するのも可能だった)とし、事業場外のみなし労働時間制の適用を否定した。
※本内容は2024年2月29日時点での内容です。
<監修>
社会保険労務士法人中企団総研
No.93090
画像:Mariko Mitsuda