総務部に所属する中堅社員のAさん。会社は「働き方改革」として残業削減を進めているのに、Aさんの残業時間は増えています。不思議なのは、総務部全体の残業時間は減少していることです。

仕事量の偏りをなくしたい課長が、Aさんに声をかけました。

「お疲れさま。最近忙しいみたいだけど、一人で仕事を抱え込んだらダメだよ。今、どんな仕事をしているの?」

するとAさんは次のように答えました。

「リスク管理の取りまとめと周年記念事業の準備、社内運動会の会場手配と、それからいろいろ……。とにかく同時並行で進めています。全体を少しずつ進めて、一気に終わらせます」

それを聞いた課長はびっくりした様子で言いました。

「いやいや。リスク管理は今すぐに関係者に依頼しないと間に合わないよ。それに、相手の立場になれば分かると思うけど、まとめて仕事を依頼されたら困るでしょ?」

ストライプ型とソリッド型の仕事術

入社3年程度の中堅社員は、質の違う複数の仕事を同時並行で進めるようになります。仕事の進め方としては、「力を分散し、並行して進めていく方法」と、「力を一点に集中し、順番に1つずつ終わらせる方法」とがあります。仕事に色をつけたとすると、この2つの仕事の進め方は、ストライプ型とソリッド型のイメージになります。

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ストライプ型は、多くのことに気を使いつつ、正しい優先順位づけと丁寧にスケジュール管理をしながら進めないとうまくいきません。また、いくら類似した仕事であっても、具体的にやることは異なるため、体の動きだけでなく、考え方も仕事に合わせて切り替える必要があります。

一方、ソリッド型は1つのことに集中しやすいため、経験があまりない社員に向いています。

目玉焼き、半熟のはずが固焼きに……

ここまでの話は、料理と後片付けを同時に進めることに似ています。料理と後片付けは一連の取り組みですが、やることは全く違います。慣れない人が、ストライプ型のイメージで料理と後片付けを同時に進めると、食器を洗っているときに火加減の確認がおろそかになり、半熟の目玉焼きを作るつもりが、固焼きになってしまうかもしれません。

逆に、火加減に気をとられ過ぎると食器洗いに集中できず、洗っている皿を落とし、割ってしまうかもしれません。

また、意外と忘れがちなのは、「食事で使う皿は、食後でなければ洗えない」ことです。つまり、最後には必ず皿洗いが必要です。それであれば、火加減に注意して目玉焼きを固焼きにしてしまうリスクを回避しつつ、後でまとめて皿洗いをしたほうが効率的ともいえます。ソリッド型のほうが安全であるということです。

ただし、リアルのビジネスで、1つの仕事に集中できる時間は限られます。では、どうすればよいでしょうか?

ストライプをソリッドにする

ストライプ型をうまくこなせられれば、効率的に多くの仕事を進めることができます。そのために重要になる考え方が、「ストライプの中でソリッドを作ること」です。複数の仕事の中でも、できるだけ類似するものを集めて“仕事の固まり”を作るのです。

例えば、本稿では皿洗いを1つの仕事として捉えてきましたが、さらに分解することができます。具体的には、料理の合間に洗う皿(料理をする際に使った皿)と、食後に洗う皿(食事で使う皿)とに分けて考えることができます。

仮に、全部で10枚の皿を洗うとして、料理の合間に洗う皿が5枚、食後に洗う皿が5枚だったとします。ソリッド型では食後に10枚の皿を洗いますが、ストライプ型では料理の合間に5枚、食後に5枚の皿を洗うことになります。うまくいけば、全体でかかる時間が短縮されるのです。

期日の集中は避けるべし

ストライプ型では、仕事を分解したパーツが計画的に配置されています。どこかでつまずくと、“音ゲー(音楽のリズムなどに合わせてボタンを押すゲーム)”で一度失敗してパニックに陥るように、それ以降がハチャメチャになって立て直しができません。

こうした事態を引き起こす原因の1つが「期日の集中」です。どんな仕事でも、最後の仕上げは思ったよりも時間がかかります。複数の仕事を一気に仕上げようとすると、まず計画通りには完了できません。

そのため、ストライプ型で仕事をするときは、できるだけ期日を分散させておくことが重要なポイントです。万一、態勢を崩しても、1つの期日をクリアするごとに正常化していきます。

Point

  • 仕事の進め方は、「ストライプ型」と「ソリッド型」がある。
  • 中堅社員は、ストライプをソリッドにする!

以上(2019年8月)

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画像:Eriko Nonaka

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