書いてあること

  • 主な読者:「Z世代」の部下とのコミュニケーションに悩んでいる「昭和世代」の上司
  • 課題:Z世代はタイパ(タイムパフォーマンス)が大事らしいが、自分にはいまいちピンと来ない。本当に分かり合うことができるのか?
  • 解決策:実は今も昔も、大事なことに時間を割きたいことは変わらない。「今、この仕事に時間を使う理由」を伝え合い、考え方をすり合わせる

1 「昭和世代」も「Z世代」も、実はそんなに違わない?

ジェネレーションギャップは世の常……。今どきであれば、部下を持つ「昭和世代」の上司が、若手の部下である「Z世代(1990年代半ば~2010年代初頭生まれを中心とした世代)」との価値観のギャップに戸惑うケースが多いかもしれません。例えば、「タイパ」がそうです。

タイパ(タイムパフォーマンス)とは、「かけた時間に対してどれくらいの効果を得られるか」という尺度のことで、Z世代が重要視する言葉の1つ

として知られています。例えば、食材の値段がほんの少し安いからと、長時間をかけて遠くのスーパーまで買いに行くことを、「タイパが悪い」などと言ったりします。

さて、仮に昭和世代の皆さんが、Z世代の部下を連れて遠方の取引先を訪問するとします。もしも部下から、「オンラインでできるのに、タイパ悪くないですか?」と言われたら、どうしますか? 「イライラする」とかそういった感情はいったん抜きにして、まず押さえてほしいのは、

昭和世代もZ世代も「根本の部分で大事にしている価値観は基本的に同じ」で、実は両者が思っているほど大きなギャップはない

ということです。以降で、「出張とタイパ」をテーマに、昭和世代のAさんとZ世代のBさんの“すれ違い会話”を紹介します。両者のすれ違いを解消するためのポイントを見ていきましょう。

2 出張は「タイパ」が悪い?

東京の会社で営業職として働いているAさん(昭和世代)とBさん(Z世代)。定期的にミーティングを行っている大阪の取引先を、久しぶりに訪問することになったようです。

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Bくん! 来週の水曜日に、一緒に大阪のお得意先のところに訪問することになったからね、よろしく。

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分かりました……。ただ、Aさん。今月に入ってから、もう2回目の大阪出張ですよね。「タイパ」、悪くないですか? オンラインに切り替えるなどして、出張の回数を減らすのはどうでしょうか?

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え? タイパ? タイパって何?

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タイムパフォーマンス、時間対効果のことです。……今回の出張って、要はごあいさつですよね? 初対面なら分かりますが、今回はそうじゃないので、わざわざ時間をかけて足を運ぶ必要があるのかなと思ってしまって……。

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何を言っているんだ、必要に決まってるだろう! タイパだか何だか知らんが、何でもかんでも効率良くやればいいってわけじゃないぞ!

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東京から大阪まで、往復の移動時間だけで6時間はかかっています。Web会議なら移動時間を、もっと違う仕事に費やせるのに。現に、出張の翌日は大きなプロジェクトの会議があって……直前で資料の訂正などもあるので、万全な状態で望みたいんです。

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だから、直接会ってごあいさつするのも同じくらい大事な仕事じゃないか!

AさんとBさんは、日ごろから何かと意見の衝突が多いのですが、今日は「タイパ」で意見が対立してしまいました……。この2人のすれ違い、解決する手段はあるのでしょうか?

3 大事にしたいものは今も昔も同じ

Bさん(Z世代)の発言は、昭和世代からすれば「今どきの若いモンは……」と言いたくなる内容かもしれませんし、逆にAさん(昭和世代)の発言は、Z世代からすれば「今どき時代遅れ なんだよ……」と言いたくなる内容かもしれません。ただ、はたして昭和世代とZ世代、そこまで相いれないものでしょうか? もしかしたら、根本的に考え方がずれているわけではなく、

単に

昭和世代は「タイパ」、Z世代は「訪問」というワードに引っ張られすぎているだけ

なのかもしれません。

そもそも、AさんとBさんはそれぞれ、なぜ先ほどのような主張をしたのでしょう? 2人の心の声を聞いてみましょう。

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(お客さまのところに出向いて直接ごあいさつするのは「大事な仕事」だから、そこに時間を割いてほしいのに……)

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(年に何回もあいさつに行くとなると、取られる時間が多すぎる……その時間をもっと「大事な仕事」に使いたいのに……)

赤字の部分がキーポイントです。そう、それぞれ主張していることは違いますが、

AさんもBさんも「大事な仕事」に時間を費やしたいと考えている点は同じ

なのです。相いれないのかと思いきや、実は同じ価値観に基づいて仕事をしているわけです。

では、なぜ先ほどのようにすれ違ってしまうのか。それは、

「大事な仕事とは何か」が、AさんとBさんの間で共有されていないから

です。どのように話をすれば、2人のすれ違いが解消されるのか、引き続き2人の会話を見ていきましょう。

4 どう話をすれば伝わる?

Aさんは、もう少し落ち着いてBさんと話してみることにしました。赤字の部分に注目してください。

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Bくん、君は基本的に「出張よりもオンラインのほうがいい」という考えなのかい?

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Aさん、僕は「全ての出張に行きたくない!」と言っているわけではないんです。きちんと理由があるのであれば、喜んでついていきますよ。お客さまにもお会いしたいですし。

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そうだな……例えば、今回の訪問の理由は「あいさつ」だ。でも、ただのあいさつじゃない。わが社がとてもお世話になったCさんが、異動になったから行くんだ。君が入社する前のことだったけれど、本当に助けていただいたからね。顔を合わせてお礼を言いたいんだよ。

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……そうだったんですね。

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こちらの感謝を伝える上で、今回の訪問はとても「大事な仕事」なんだ。改めて、君はどう思う? お世話になった方に、直接お礼を言いに行くのは「タイパが悪い」かな?

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いいえ、お世話になった方であれば、直接会って気持ちを伝えるべきだと思います。オンラインだと伝わらないことがあるのも、普段の仕事で実感しています。すみませんでした、何も知らずに勝手なことを言ってしまって……。

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いや、私も理由をきちんと伝えていなかったし、過去を振り返ってみると、正直あまり意味のない訪問をしていたこともあったかもしれない……。その辺は君の言う通り、他に大事なことがあるならオンラインに切り替えるのもありかもしれないよね。

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経費削減にもなりますしね。……でも、直接ごあいさつに伺うことも大事ですね。来週の出張で、Cさんにお会いできるのが楽しみになってきました。

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なんだか、大事なことに時間を割きたい、という気持ちは、私も君も同じみたいだね。

AさんとBさんが「大事な仕事」について、お互いに自分の考えを吐き出したことで、2人のすれ違いは解消されたようです。

今回はタイパがテーマでしたが、他のテーマであっても、昭和世代とZ世代のすれ違いを解消するポイントは同じ。

「あの人は昭和世代だから(Z世代だから)」という色眼鏡を取り外して、お互いの考えを聞きながら、「実は相いれる部分があるんじゃないか」と探っていくこと

です。お互い、頭ごなしに否定したりせずにきちんと理由を言語化して、まずは相手の考えを知ってみることが、すれ違い解消の道へとつながっていくでしょう。

以上(2024年12月作成)

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画像:ChatGPT