厚生労働省が公表した「令和3年度 労働者派遣事業報告書」によると、派遣労働者数は約209万人(前年度比8.6%増)となっており、派遣労働者の需要はますます増えているように見えます。
昭和60年に法制化された「派遣」という働き方は、現在では、企業、派遣労働者のそれぞれから広く認知され、世間に十分に浸透しました。
本稿では、厚生労働省が令和5年11月24日に発表した「令和4年 派遣労働者実態調査」の結果を紹介しながら、労働者派遣の現状や今後の見通しについて考察してまいります。
1 派遣労働者の就業情報
令和4年10月1日現在、派遣労働者が就業している割合は12.3%となっています。また、就業している派遣労働者数は「1~4人」(68.1%)、「5~9人」(16.8%)、「10~19人」(7.3%)といった分布となっており、全労働者数に対する派遣労働者の割合は4.0%となっています。
産業別にみると、「サービス業(他に分類されないもの)」が11.5%と最も高く、次いで「情報通信業」9.5%、「製造業」7.8%となっています。
また、派遣労働者を就業させている主な理由は、「欠員補充等必要な人員を迅速に確保できるため」が最も高くなっています。
(厚生労働省「令和4年派遣労働者実態調査」)
2 派遣労働者として働いている理由
派遣労働者について、派遣労働者として働いている理由(複数回答)をみると、「自分の都合のよい時間に働きたいから」が30.8%、「正規の職員・従業員の仕事がないから」30.4%の割合が高くなっています。
これを性別にみると上位2つは、女性は全体と同様となっているが、男性は「正規の職員・従業員の仕事がないから」31.0%、「専門的な技能等をいかせるから」23.3%となっています。
(厚生労働省「令和4年派遣労働者実態調査」)
3 さいごに
労働者派遣という形態は、企業、派遣労働者ともに労働のタイミングをコントロールできるという面で、評価されていることが見て取れます。
いわゆる同一労働同一賃金の改正法により、派遣社員についても正規社員との間の「不合理な待遇差」の是正が進められました。このように派遣労働者を保護し、制度を健全に進展させる動きも断続的に進められています。
少子高齢化が加速している中、多くの企業が直面する深刻な人手不足の解消策の一つである労働者派遣。この制度がさらに発展していくには、派遣労働者でも業務に応じて納得できる賃金や待遇が得られ、業務に対して必要なスキルアップの機会が与えられることが、重要だと言えるでしょう。
※本内容は2023年12月14日時点での内容です。
(監修 社会保険労務士法人 中企団総研)
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