書いてあること

  • 主な読者:社員の「熱中症」対策を進めたい経営者
  • 課題:社員に何を指示すればよいのか分からない
  • 解決策:熱中症になりにくい体づくりと、外部環境の整備の両面からアプローチする

1 「熱中症」予防の基本は体づくりと外部環境の整備

熱中症になるのは高温多湿な場所に長時間いるケースに限りません。例えば、寝不足や食欲不振などで体調が優れない、下痢や二日酔いなどで脱水症状気味といった体調不良の場合も熱中症になるリスクがあります。

そのため、熱中症の予防は、

外部環境を整えるだけでなく、熱中症になりにくい体づくりをする

ことが必要です。例えば、次のような対策が挙げられます。

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この記事では、社員の具体的な熱中症の予防法について紹介していきます。

2 熱中症になりにくい体をつくる5つの工夫

1)水分・塩分をこまめに補給する

熱中症の予防や、熱中症の症状が疑われるときの最も基本的な対策は、水分・塩分の補給です。汗を大量にかくと、水分とともに塩分やミネラルも失われてしまうため、ただ水分を補給するのではなく、スポーツドリンクや食塩水などで塩分も一緒に補給することが重要です。

また、マスクをしていると喉の渇きを感じにくく、気付かないうちに脱水症状になる恐れがあります。そのため、こまめに水分・塩分を補給することが大切です。屋外でたくさんの汗をかく作業に従事する社員には、塩あめなどを携行させることを促してもよいでしょう。

2)体を上手に冷やす

顧客訪問でスーツの着用が必要なケースなどを除き、業務内容によっては暑さをしのぎやすい軽装での勤務を認めるとよいでしょう。扇子やうちわ、携帯型扇風機などで風を起こして体を冷やすのも効果的です。屋外での作業現場では、送風機を内蔵するヘルメットや作業着を導入するケースもあります。

3)栄養バランスの良い食生活を心掛ける

食生活にも配慮が必要です。夏場は食欲が落ちて冷たいものばかりを食べがちですが、食生活の乱れから体調を崩すと、熱中症になるリスクも高まってしまいます。栄養バランスの良い食生活を促しましょう。

4)健康状態をこまめに確認する

体調の悪そうな社員には積極的に声を掛けましょう。経営者や管理職は、元気がなかったり顔色が悪かったりする社員に対して、周囲が気遣う職場づくりを心掛ける必要があります。テレワーク中の社員には、ウェブ会議システムなどを使って積極的に声掛けすることが大切です。

5)暑さに体を慣らす

体を冷やして暑さを感じにくくするだけでなく、「暑熱順化(しょねつじゅんか)」によって暑さに体を慣らすことも、熱中症予防に効果があります。ジョギングなどの軽い運動や湯船に漬かる入浴などによって意識して汗をかくようにすると、本格的に暑くなる前から暑さに強い体づくりにつながります。朝礼などの機会に経営者が社員に勧めてもよいでしょう。

3 熱中症になりにくい環境を整える4つの工夫

1)日差しや熱が発生する場所を避ける

屋内では日差しをカーテンで遮ったり、背の高い観葉植物を窓際に置いたりして暑さをしのぐようにします。サーバールームなど、熱が発生する業務機器がある場所では、熱を遮る遮蔽物を設置するのも効果的です。日差しを避けられない屋外では、比較的涼しい午前中や夕方に作業を集中して行うことも検討しましょう。

2)エアコンと扇風機を併用する

エアコンだけだと冷気が特定の場所に滞留しがちなので、扇風機やサーキュレーター(空気を循環させるための機器)を活用して、冷気を循環させましょう。窓を開けて換気する際も、扇風機やサーキュレーターを外に向けて使えば効率良く換気できます。

なお、エアコンは夏になると購入や修理の依頼が混み合い、暑さが本格化する時期にエアコンが使えない場合があります。そのため、オフィスや自宅のエアコンは早めに試運転を行い、不具合がないか確認するようにしましょう。

3)温度や湿度を「見える化」する

温度計や湿度計、暑さの指数を調べる測定器などを用意し、熱中症の危険度を把握できるようにします。熱中症の危険度が高まるとブザーで通知する携帯型熱中症計や、発汗量から熱中症の予兆を検知するウエアラブル端末(身に着けられる端末)などもあります。熱中症対策として、こうした機器の導入を検討してもよいでしょう。

4)「テレワーク手当」で快適な労働環境を実現する

テレワークをする社員の中には、「エアコンを使うと電気代がかさむ」「部屋にエアコンがない」という人もいます。しかし、十分な空調設備のない中で作業を続けると、熱中症のリスクが高まります。そこで、「テレワーク手当」を支給して、「熱中症になりにくい環境」の実現を支援します。

4 熱中症になったときの対処法

社員が熱中症になったら、適切かつ迅速に対処しなければなりません。必要に応じて救急車の出動を要請、もしくは医療機関へ搬送します。

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熱中症が疑わしい場合、涼しい場所へ移動させて着衣を緩め、頸(けい)部、わきの下、足の付け根などを中心に体を冷やします。もし、「呼び掛けに答えない」「水分を自力で摂取できない」「症状が一向に改善しない」などの場合、すぐに救急車の出動を要請、もしくは医療機関に搬送します。

いざというときに迅速な対応が取れるよう、上記の対処の流れ、搬送先になる病院の所在地や連絡先をあらかじめ社内に周知しておきましょう。テレワークをする社員には、熱中症になった際に受診できる最寄りの病院を確認しておくように指示し、必要に応じて緊急連絡網(本人および家族の緊急連絡先)を整備しておくことも大切です。

参考:熱中症予防対策に役立つチェックリスト

以下は厚生労働省「職場の熱中症予防対策は万全ですか?」を基に、熱中症予防対策として確認しておきたい事項をまとめたものです。オフィスだけではなく、在宅勤務における熱中症対策としても有効です。

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以上(2024年6月更新)

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画像:photo-ac

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