書いてあること

  • 主な読者:入社3〜5年目でさらに成長したい中堅社員と、それを見守る経営者
  • 課題:ビジネスの状況を一面的にしか見ることできない
  • 解決策:自分の立ち位置や感情にこだわりすぎず、高所から目的を確認する

1 競合他社と業務提携。その理由は?

中堅社員のAさんは、上司であるB部長の営業方針が理解できません。最近、Aさんの会社は競合C社の参入で浮足立っているのですが、B部長はそのC社と業務提携しようと画策しているのです。

確かにC社と業務提携をすれば、正面から争うことはなくなるかもしれません。しかし、先日、Aさんは自身が担当する顧客をC社に奪われたばかりで、心情的にC社を受け入れられません。たまりかねたAさんは、B部長に直談判しました。「B部長、C社の件ですが、本当に業務提携が最善策なのでしょうか? 正面から戦いましょう!」。するとB部長は次のように返しました。

「Aさんの気持ちは分かる。誤解しないでもらいたいのは、私を含め、当社が戦う姿勢を失ったわけではないよ。より大きな市場をつくり、当社がさらに成長するためにC社と提携するほうがよいと判断したんだよ」

2 一見矛盾する相手との付き合い方

上司も部下に限らず、当事者には意見があり、衝突することもあるでしょう。人と人が密接に関わるシーンにおいて一方の主張が100%通ることはほぼなく、分かり合える領域、分かり合えない領域、その中間にある調整が可能な領域が混在しています。

競合先であっても、100%利害が不一致であるとは限りません。実際、ビジネスでは「先行企業がいたほうが、新規参入が楽である」「後続企業がいたほうが、市場が広がりやすい」といったことがあります。戦うことで一緒に市場を広げるイメージです。

こうした状況を、「片手で殴り合いながら、片手で握手をするようなもの」と表現することがあります。自分の立ち位置や感情にこだわりすぎず、高所から目的を再確認できれば、一見矛盾する相手との付き合い方が見えてきます。

3 交渉や議論からは結果が得られない

競合先と業務提携を判断する一つの基準は、競争領域と協調領域が明確に線引きでき、なおかつその業務提携によって自社に利益がもたらされるか否かです。このイメージがないと、交渉や議論を重ねても活路が見いだせないことがよくあります。かといって、力押しをすれば関係は破綻するでしょう。

この状況を突破するには、ある程度こちらが折れて、相手が求めるものを差し出すことです。ただし、そうすることで自社が大きな損害を被るだけでは意味がありません。今は厳しくても、将来の可能性が広がるかを分析し、したたかに進める必要があります。

また、業務提携が成立した後も大変です。双方が勝手な解釈をして動き始めると、そもそもの協調領域が崩壊してしまいます。慎重に相手との距離感を測りながら、粛々と目的を達成するための活動を続ける忍耐力が求められます。

4 使えるものは何でも使う

ビジネスは関係者に動いてもらうことで成立します。管理職など、組織の中での立場が上になればなおさらで、社内外の多くの人を巻き込んでいく必要があります。相手が競合先であっても例外ではありません。

仕事に対する情熱があり、理想があるからこそ競合であっても業務提携を進めることができます。そして、相手に合わせつつも、一つ一つの言動を数字に裏付けられたものとして行います。これは、なかなか高度なテクニックだといえるでしょう。

立場が上になれば、難しい局面を乗り越えなければならないことも増えます。“使えるものは何でも使う”という感覚を持ち、自分が動かすことのできる関係者を増やしていくことが、ビジネスの可能性を広げることにつながります。

以上(2021年8月)

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画像:rodjulian-Adobe Stock

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